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【霞ヶ関の人の生態❺】官僚たるもの出世は本懐なの?ほんとに終身雇用なの?

みなさん、公務員は安定の終身雇用だと思ってませんか?
トントン拍子に年を取っていくほど出世していくと思ってませんか?

公務員は安定してるし、楽そうで、定時で帰れるしいいよな~ということを言われる人は結構いますが、たぶんそれは身近に接している公務員、つまり市役所の窓口だったり、公共施設で見かける公務員、つまり地方公務員の仕事の一部だけを見てそう思うのだと思います。

霞ヶ関の公務員は、住民への対面サービスの仕事をすることはまずないので、どういう働き方だったり、どういう人生のキャリアパスを歩んでいるのか知る機会はほとんどないと思います。

一言でいうと、定年まで霞ヶ関の中で働いている人はほぼいません。。。

細かく言うと、総合職、一般職、技官でキャリアパスは違うのですが、総合職、技官は全員定年までに霞ヶ関から去っていきます。

ここで、ざくっとした印象も含みますが、階級の名称をお伝えします。
若手から・・
係員
係長、主査
課長補佐、参事官補佐、室長補佐、専門官、企画官
課長、参事官、室長(←ここから管理職)
局長、部長、
審議官、官房長
事務次官(トップのポスト、1名)

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これが、どれくらいのエラさなのかというと、同僚曰く                            「課長は中小企業の社長くらい、局長は大企業の取締役ぐらい」                 だそうです。これは扱える案件のデカさという意味だと思います。給料は残念ながら。。。(以下自粛)
霞ヶ関で若手の課長かもうすぐ課長の課長補佐をやっている人が、地方自治体に出向すると、だいたい「部長」という役職、知事、副知事の次に偉い人になります。40代前半の人が地方で地方公務員のたたき上げの人の上に立つので、地方公務員だった私から見ると、なんだかモヤモヤするなあと思うところですが。。。

一般職の人は、最大の出世ポストでも課長、しかもそのポストは数少なく、ほとんどの人が最終ポストは課長補佐です。だいたいの印象ですが、係員(20代)、係長(30代)課長補佐(40代後半~去るまで)です。この階級の上がるスピードは省庁で違うようです。60歳まで課長補佐として、霞が関にいるかというとそういう人はあまり見かけません…

総合職の人と技官(厚生労働省は医系技官という医師の資格を持つ行政職がいます)のキャリアパスは、係員時代はほとんどなく、20代半ばから係長、主査、30代前半から課長補佐、40代半ばから後半で課長、室長という管理職、50代ごろから局長級、となっていきます。

課長補佐まではポストも多いので、本省と言われる霞ヶ関内にいることも多いですが、管理職ポストになってくると、座れる座席が減ってくるので、椅子取りゲームの様相がでてきます。さらに局長級以上のポストはほとんどありません。そして上り詰めたトップのポストである事務次官、このポストになる年齢は50代半ばです。ただ、霞が関の人事異動は2年に1回が基本なので、事務次官ポストも2年しかいることが出来ません。後輩に席を譲らないといけないからです。ところてん方式ですね。そうすると、定年まであと2~3年を残したところで霞が関を去っていきます。

 この壮大な椅子取りゲームは、課長くらいからだんだんと霞が関にいる人が減っていき、国が持っている国立の機関や、地方自治体などのポストにつきます。退職しているわけではないし、人事異動で出向しているので悪名高い「天下り」ではありません。
そうして霞が関と地方を行ったり来たりしながら、次第に霞が関で出世していく人、霞が関の外局をぐるぐる回って霞が関の中には二度と帰ってくることがない「衛星」と呼ばれる人達がでてきます。

この「衛星」という言葉を初めて聞いた時に、本省に努めているのは真のエリート、外局は敗れた人、というイメージで話していて、強烈だな~と思いました。
「あの課長は衛星から久しぶりに帰ってきた」
「あの人はパワハラがひどくて衛星(外回り、という人も)になったらしいよ。しばらく帰ってこない(良かった)」みたいな会話が人事異動の時になされたりします。

もちろん、外局で修業して、帰ってきたときは偉いポストという意図の人事の時もあります。

また、誰もが霞が関の中で出世したいと思っているわけではありません。
毎日の激務、国会対応など、といった霞が関にいると逃れられない仕事が嫌で仕方ない、という人もいて、そういう人は自ら外局で自分のペースで働きたいという人もいます。

いつの間にか出向した先の自治体が気に行って、自治体に転職する人もいます。
そもそも、最近、転職する人たちも増えているそうなので、いつの間にか消えていく人たちが、どうしていなくなったのかわからないことが多いです。

ということで、定年までのキャリアパスを見通すことはほぼ不可能です。

そして、驚いたことの一つなんですが、局長、事務次官といったポストはあっても2~3ポストなので、自分の同期がそのポストについたら自分にはそのチャンスはもうないということ、を意味するだけではなく、なぜか霞が関の本省を去らねばなりません。。。
自分の後輩が追い越して出世しても関係ないや~というわけにはいかないようです。

出世する人はどんな人か、それは観察していてもよくわかりません。人間的にも能力的にも素晴らしい人もいますが、細かすぎて部下を潰してしまう人もいますし、パワハラもセクハラの人も…。
一つ言えることは、不祥事や炎上案件に運よく当たらなかったラッキーな人、といえるかもしれません。2010年ころから管理職の人事は政治家が権限を持つようになったそうで、政治家に嫌われていない人、というのも条件に入るのかもしれません。

みんな、何を目的にして、どうしたくて霞が関の人になったのか。
おそらく、それは一人一人がそれぞれ違った理由とモチベーションがあって、この過酷な労働条件の中一生懸命働いているのだと思います。ただ出世だけ目指して働くにしては、この仕事は見返りが少なすぎる気がします。

そして、地方公務員も霞が関の人もそうですが、緊急事態の時には必ずやるべき仕事が山ほどあります。誰も逃げることはできません。

東日本大震災の時も、今の感染症の事態でも、普段のんびり働いている役所の人も不眠不休で働かないといけなくなります。それは、公務員の公務員である理由なんだと思います。そしてそれが公務員の本懐なのだと私は思います。
緊急事態には、自分の会社の利益目的で動くのではなく、利他的な行動をすることができる組織が必要で、そういう時に、地方公務員ならその地方のため、国家公務員なら国のため、フラットに働けるのは、なんやかんやいっても雇用形態からして公務員なんだと思います。

 ただ、緊急事態の仕事は、長期化すると、人の心も精神もむしばんでいきます。

 今は自分の健康もかなぐり捨ててひたすら働いている人たちがいます。このまま働き続けたら、出世どころか、定年まで生きられないんじゃないかという働き方をしている人もいます。

 霞が関の人は得体が知れなくて、天下りとか聞くと、出世ばかり気にして老獪に生きている人たち、というイメージもあるかと思いますが、私が日常で触れる霞が関の人は、朴訥で苦しい業務も(文句を言いながらも)ちゃんとこなす、緊急時には淡々と役割を果たそうとする人たちだと思います。地方公務員も、日ごろは暇そうにしていることもあるけれど、緊急時には人が変わったように働く人たちだと思います。
その時には、個人的な出世とかそういうことは、あまり念頭にない、というかそれどころじゃないと思います。

 このいつ終わるともわからない緊急事態に、これからどんどん霞が関の人達は摩耗していきます。
 今の最前線にいる人が、疲弊し切ってしまったら、今は緊急事態対応をしていない人が駆り出され、また疲弊するまで働きます。それを繰り返すのだと思います。

 霞が関の出世の話からそれていってしまいましたが、出世とか平和な事が考えられるような平和な日常が早く戻ってほしいです。