オタク第4世代と第5世代の微妙な対立(?)

 世代論。みんな大好き世代論。

 誰でも語れる世代論。

 教育論と同じで、誰かが話していたら持論を展開したくなるのが世代論。

 そんなわけで僕も世代論をしようと思う。

 読んでるうちにむずむずしてなんか言いたくなるでしょうが、そういうものが世代論。

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 オタク世代論は第1世代から第3世代までは、よく知られている。

 しかしもはや第4世代(1990年代生まれ)どころか第5世代(2000年代生まれ)が目立つようになってきているから、素描してみたい。

 もっとも僕は当事者ではなく取材で得た情報をもとに人物像を構成しているだけなので、その点、多めに見ていただければ幸いである。

 もう一点。

 第4世代以降、とくに第5世代は「オタク」という単語自体がふるくさいもの、自分たちの言葉じゃない感を抱いていることも多く、アニメやニコ動を観ているくらいではオタクだと思っていないこともざらだが、ちょうどいい言葉がないのでアニメやラノベ、ゲームといったサブカルが好きなひとたちを総称して便宜的にオタクと呼ぶことにする。

 オタク世代論を象徴的な作品やジャンルで切ると、

特撮・SFが第1世代(1950~60年代生まれ/昭和30年代生まれ ※だいたいです)

『ガンダム』が第2世代(1970年代生まれ/昭和40年代生まれ)

『エヴァ』が第3世代(1980年代生まれ/昭和50年代生まれ)

『ハルヒ』が第4世代(1990年代生まれ/昭和60年代・平成初年代生まれ)

カゲプロが第5世代(2000年代生まれ/平成10年代以降生まれ)

 だろう。この時点でツッコミが発生することは間違いないが、それは今回の本題じゃないのでね……。

 もちろん、「象徴的」なだけで、その世代のみんなが好きとはかぎらないわけです。

 ただみんな「知ってる」「いちおう観ている」くらいのものではあるだろう。

 TVアニメ版が残念な内容だったカゲプロを第5世代の代表的な作品として挙げるのはなかなか切ないものがあるが、アニメ放映以前の2014年6月までの盛り上がりは本物だったことも忘れてはならない。


 第4世代の典型的な人はこうだろう。

 2006年にアニメ放映した『涼宮ハルヒの憂鬱』が世代共通のラノベ/アニメ体験。

 2007年に登場したsupercellの「メルト」「ブラックロック★シューター」にハマり、女子は悪ノPの「悪ノ娘」など鏡音リン廃、レン廃になり、2010年から刊行されたノベライズを買っている。

 カゲプロのことは「あざとい」と感じて否定的だった。

 ゲーム実況/フリゲではホラーものにハマった過去がある、『青鬼』や『魔女の家』直撃世代。

 主ではボルゾイ企画とかが好きだった(遠い目)。

 男子は『ポケモン』縛りプレイに熱狂していた(主ではレオモンあたりが好きだった)。

 ニコ動はもはや「昔はよかった」的に語る人が多く、

「運営とうp主の戦いみたいなカオスな状態が好きだったが、今は整理されちゃってつまらない」とか、

 Pや歌い手が続々メジャーデビューしたことに対しては

「ニコ動がメジャーへの通路みたいになって残念」

 と好ましく思っていない人も少なくない。

「昔は歌い手さんは顔出ししてなくて、だから『ひょっとしたら街ですれ違っているかも』みたいに身近に思えたのがよかった」

 と語り、有名な歌い手のニコニコ生放送も昔は熱心に観ていたが

「最近は人が増え過ぎちゃってコメントが荒れるから観ない」

 と言い、顔出ししない歌の投稿サイト「こえぶ」(こえであそぶ)など別のSNSに移行したりした。

 この世代にとってはニコ動やyoutubeのような動画サービスは基本的に「PCで観るもの」だった。

 もう社会人になっており、学生時代の友だちと会うと「最近のジャンプはクソ。2000年代はおもしろかったのに」とか「アニメは『あの花』とかやってたころがいちばんよかったよね」とか快調にノスタルジックな思い出語りをしはじめている。


 対して第5世代はこうだろう。

 誰でも知っている世代の共通体験的な作品はカゲロウプロジェクトの一連の作品。

 もっとも、いちばん流行っていた時代のガンダム好きやエヴァ好きがアニメファンとイコールではなかったように(距離を置いていたり、別の作品を「いちばん好きな作品」に挙げるひとも多かったように)、全員がハマっているわけではない。

 むしろいろいろな作品に詳しい人間ほど、ガチな信者のことを冷ややかに見ていたりする。これは世代を問わず見られる普遍的な現象だろう。

 ラノベでは『とある魔術の禁書目録』(アニメは2008年に第1期放映、『超電磁砲』は1期が2009年放映)か『ソードアート・オンライン』(アニメは2012年放映)あたりからハマった。中学生や高校生には『デート・アライブ』も人気だった。

 ボカロについては、小学生はミクやリン・レンが好きだが、中学生以上ではIAやGUMIが好きなことが多い(2013年まではそうだった。2015年にはまたバラけている気がする)。物語性がある曲、かわいい曲が好き、というかそういうものが当たり前だと思っている。

 歌い手にはイケボさだけでなくイケメンぶりも求め、ニコ動は最初から「有名になるためのツール」だと思っている。

 ゲーム実況/フリゲはおばかで笑える軽いものが好みで、主ではM.S.S.P.や最俺などが好き(とくに女子)。猫も杓子もマイクラである。

 スマホファーストの世代であり、「パソコンを持っているのはオタク(または大人)」という印象。

 ニコ動はスマホで観る。というかPCで観た記憶は親のPCでしかなかったりする。


 そんなわけで、第4と第5では趣味が違う。

 多くのことで、話が合わない。


 ただ現段階では第4世代と第5世代の好みの違いは、あくまでデバイスとネット環境の違いから来るものであって、個々人の心性やコミュニケーションスタイルがそこまで違うという印象はない。

 第5世代が好きなものの方がより「ライト」で「せわしない」(展開が速い)ように思われるが、これはTVやPCの前に座っての消費スタイルではなく、スマホで短時間に細切れでも愉しめるものを求めた結果、圧縮されたものが好まれているのだろう。

 2010年代も後半戦に入っていけば、両者の決定的な違いも見えてくるはずだ。

 90年代生まれが「最近の若いやつは……」語りをする時代は、もう始まっている。

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