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チェリー ボブソン 2019.5

そう、彼はいつも春にやってくる。
というか彼がやってくるので、春がやってくる。彼は春の風物詩なのだ。

日本国民は、彼に熱狂する。
いつ彼が自分の街にやってくるか、ソワソワする。
ソワソワしすぎて、この時期は日本全国ほぼいろいろなものが機能していない。
この時期に起きる大きな事件も小さな事件も彼が原因だといっても過言ではない。

日本国民は、彼の到来を確認し、しっかり目に焼き付け、
彼を肴にお酒をたのしむ。

そんな国民性のせいか、彼の最新情報がニュースでも報じられ、
彼の到来の時期に天気が悪くなると、彼に影響を及ぼすのではないかと、
我が事のように心を痛めるのだ。

彼の到来を唄った歌も数しれず、古くは和歌にも詠まれたりもした。
そう、彼を愛でる文化は、古の時から始まったのである。

彼が我が町に留まる期間は短い。待ち焦がれて、
ついに来たと思ったら、もういない。
刹那、そんな言葉が彼にはぴったりである。

彼は、チェリーという言葉を体現するかのような
何ともいえない淡いピンク色のタンクトップを着ている。
その淡いピンクとはかけ離れた、いわば強面。
その顔に、大きなサングラス。
体格も良く、迫力もある。

そんなチェリーボブソンだが、意外に小心者で、そのギャップにも好感がもてる。ホラー映画は、一人では見れないし、猫舌で辛いものは食べられない。
お寿司はもちろんサビ抜き。チェリーというだけあって、甘いものが大好きで、
パフェの上のチェリーは最後にとっておく。
そんな怖かわいいチェリーボブソンがみんな大好きなのだ。

最近では、日本だけでなく海外にもボブソンのことが伝わり、
ボブソン目当てに来日する旅行客もいるほどだ。
留まることを知らないボブソン人気。

ボブソンは、春の訪れを待つみんなのために、南から北へ駆け抜ける。
寒さの残る気候の中、タンクトップを着て。
卒業式、入学式、出会いと別れという人生の節目にボブソンが彩りを添える。
我々の時はチェリーボブソンと共に刻まれていく。

※これは、母かチェリーブロッサムをチェリーボブソンと
   いいまつがえたことから、着想を得ました。

いつもぶっとんだ母。これからもぶっとんでいてください。

母の日に。

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