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メディアミートアップvol.7「個人の情報発信の形はどう変わるのか?」

米国でのフェイクニュース騒動や日本のWELQ騒動を起点に、情報発信することの責任やリスクなどに対する姿勢を議論してきたメディアミートアップ。

第7回を迎えた今回のテーマは、「個人の情報発信の形はどう変わるのか?」。

ゲストは、講談社からスマートニュースのメディア研究所所長に転身された瀬尾傑さんと、cakesやnoteなど個人のクリエイターの情報発信を支援しているピースオブケイクCEOの加藤貞顕さん。

個人の情報発信は難しくなるのか?」や「今後、個人としてどんな風に情報発信に関わっていくのが良いのか?」といった切り口でトークが繰り広げられました。

【目次】
1. ニュースは本当に社会を良くしているか?
2. クリエイターのホームグラウンドをつくる
3. Webメディアにいきる「書籍編集者の視点」
4. 今の時代、個人の情報発信はどうする?
5. これから情報発信を始める人へ


1. ニュースは本当に社会を良くしているか?

イベントは、ゲストのお二人の自己紹介スライドからスタート。まずは、瀬尾さんの紹介です。

『月刊現代』、『FRIDAY』、『週刊現代』各編集部を歴任し、『現代ビジネス』 で創刊編集長を務めていた瀬尾さん。2018年にスマートニュースに入社し、現在は『スマートニュース メディア研究所』の所長に就任しています。

そこでの大きなテーマは、「ニュースは本当に社会を良くしているか?」。

民主主義のインフラとしてのジャーナリズムを追求しながら、ニュースを社会にとっていいものにするためにするための仕組みづくりをしていくそう。

「良いジャーナリズムが生まれるようなプラットフォーム、エコシステムをつくりたい。」

と思いを語られていました。


2. クリエイターのホームグラウンドをつくる

続いての自己紹介は、アスキー、ダイヤモンド社で編集者を務め、現在ピースオブケイク代表取締役CEOを務める加藤さん。

「編集の仕事の半分は作るで、残りの半分は売るなんですよ」

と言う言葉が印象的でした。

大ヒットした『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』では、電子書籍も含めたマルチメディア展開を考えていたとのこと。実際、『もしドラ』はamazon総合1位とApple Store総合1位の両方を獲得しました。

そんな書籍編集者時代に感じたのが、既存のプラットフォームのなかで売り続けることの大変さだったそう。

そこで「新しい流通やプラットフォームを作りたい」という思いから、ピースオブケイクが始まります。

会社のミッションは、「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」。

「ブログサイトやSNSの本拠地として、クリエイターのホームグラウンドを作りたいと思っています。」

クリエイティブを続けるには、誰かに見てもらい認めてもらうことや、お金が入ることが必要。会社のミッションには、そんな場所を作ろうという思いがこめられているといいます。


3. Webメディアにいきる「書籍編集者の視点」

加藤さんの自己紹介の後、議題は雑誌編集者と書籍編集者についてのトピックに。書籍は編集者がそれぞれの本で「編集長」のような役割を持つのに対し、雑誌は編集長が進行方向を決めて記者が指示に従うようなイメージだそう。

瀬尾さん(以下、瀬尾):
僕は、雑誌の記者よりも書籍編集者の方がデジタルメディアに向いてると思うんですよね。

というのも、週刊誌の記者はスクープをとるには命がけなんですが、入稿したらそれで終わりなんです。その先の売り上げを考えるのは、編集長や営業部なんですよね。

徳力さん(以下、徳力):
なるほど。

加藤さん(以下、加藤):
書籍の編集者は本を作るだけじゃなくて、どうやって売るかというマーケティングまで考えますね。ターゲットを決めるし、紙も選ぶし、デザイナーも選びます。

瀬尾:
デジタルメディアと一緒で、コンテンツを載せるだけじゃ読まれないから、どこに載せるかを考えたり、誰にどのくらい読まれるかまで追いかけるんですよ。

徳力:
面白い視点ですね!

瀬尾:
関連する話でいうと、ネットニュースの価値について、週刊誌的な「早さ」は不毛な競争だと思っています。例えば、何かの事件について書くにしても、現場に居合わせた人がすぐにTwitterで写真をあげることもできる。つまり、素人に負けることもあるんです。

だけど、作り込んだコンテンツというのは競争力もあって、価値があるんですよね。そういう意味で、書籍編集者のようなセンスは必要だと思います。


4. 今の時代、個人の情報発信はどうする?

こちらのツイートについて、徳力さんは「メディアに寄稿はしなくてもいいと思います」とコメント。そのうえで、個人の情報発信の話題になりました。

徳力:
インターネット以前は、個人によるコミュニケーションとメディアにおける情報発信は別で、個人が突然メディアに出るということはありませんでした。一方で、今はブログを目にしたメディアの人から声をかけてもらうこともある時代ですよね。

僕の友人は、上海の決算事情について書いたいくつかのブログ記事がきっかけで、メディアに寄稿することになったんです。

加藤:
noteでも、渾身の1記事を書く人がいます。例えば、「わざわざ」の平田さん。この1記事が猛烈に読まれて。昔だったら継続してブログを書いていないと見つけてもらえなかったのが、今は1記事でもいけるんですよ。

徳力:
ここからちょっとネガティブな話になりますが、最近は炎上のスピードが早くて、ミスをしたら一発で終わりというか、個人が自由に情報発信をするのが難しい時代が見えてきているように感じています。お二人から見てどうですか?

瀬尾:
大人の情報発信については、面と向かって言えるかどうかを考えるような判断力があれば、そんなに怖れる必要はないのでは、と思います。

加藤:
インターネットに悪口とかフェイクニュースが多い理由はいろいろ考えられるけれど、解決可能だと考えているのは「アーキテクチャー」です。

ネットバナーやアドといった広告ビジネスモデルをみると、PVがKPIになっている。それだと、悪口やフェイクニュースで簡単に人を集められて、人間の残念な面が強調されるんですよ。

徳力:
なるほど。

加藤:
書かないと生きていられない人が作家だから、noteではそういう人のために安全な場所を提供したいと思っています。

だからSNSに似たフォロー機能でファンをためやすい仕組みがあったり、いいねが「スキ」だったり。アーキテクチャー上、人間のいいところを引き出すように工夫しています。それが長く続けば文化になるんじゃないかなって。

瀬尾:
「表現する」ってことについて言えば、何らかの表現って人を傷つける可能性は絶対あると思うんですよ。極端な例で言えば、家族団欒の写真ですら、「他人が幸せそうなのを見て傷つく」という人もいるかもしれません。それが怖いなら、表現なんてしない方がいいです。

誰かを傷つけたり、あるいは自分も傷つくことがあるかもしれない」というイマジネーションを持つのが大事だと思うんですよね。

徳力:
ただ、ブログを覚悟を持ってやれと言われると、難しくも感じるんですよね。ジャーナリズム出身の方の話などを聞くと、素人にとっては知っておくべきことが多すぎると感じていて。それはジレンマです。

そういう個人も炎上したり叩かれたり、オープンインターネットで情報発信が難しくなっているのかなと思うんですが、いかがでしょうか。

加藤:
noteを始める以前は問題意識もありましたが、今はむしろチャンスが増えていると思っています。noteをきっかけに本が出たり、ドラマになったり映画化されたり。1、2記事でそういうことも起こるから、むしろ加速しているように思うんです。

徳力:
メディアの人の目に触れるような場所にちゃんと書けば、繋がる時代になっているんですね。


5. これから情報発信を始める人へ

徳力:
今から情報発信をする人にアドバイスやヒントをいただければと思います。

瀬尾:
専門性が高いことをやるっていうのは、やっぱり難しいですよね。ネットでは良くも悪くもいろいろな反響がありますし、その中で書いていくのは難しいと思うんです。

だから、どんな反応があるのかを知るためにも、TwitterでもFacebookでも何でもいいので、日々の情報発信で慣れていくことが大事だと思います。沢山の人に読んでもらおうとしたり、無理して難しいことを書こうとしなくていので。日々の発信を少しずつ積み重ねていった先に、きちんとまとまった形での情報発信があるんじゃないかと。

加藤:
僕は、「表現」は人と何かをやっていくうえで全員に必要なものだと思っています。例えば、パートナーに伝える「ありがとう」も大事な表現だし、noteを書くとか本を書くとか、CDを出すとかもそうです。

昔は「日常生活での表現」と「本を出すなどの表現」の間にすごい断絶があったんですが、今は表現の選択肢が増えて、それが繋がったんです。

だから、まずやるべきことは自分にとって何が一番大事で、何をやりたいかを考えることかと思います。あらゆるクリエイティブの根源は「自分をわかってほしい」だと思うのですが、その度合いもそれぞれ違うので。

奥さんにわかって欲しいのであれば「いつもありがとう」の言葉でいいですし、より広く伝えたいなら、自分の好きなもので伝えればいいと思います。文章とか写真で伝えたいならnoteがおすすめなので、よければ使ってください(笑)


***


以上で、今回のレポートは終わりです!

個人の情報発信について、その可能性に気がついたり、情報発信の姿勢を見直すきっかけになったり、ネット全体の問題について考えたりと実りのあるイベントでした。

最後に、イベント参加者の方の実況や感想ツイートを紹介させていただきます。




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