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自分の声を好きになる

自分の声は、好きですか?

わたしはきらいでした。初めて自分の声の録音を聞いたとき、悲しくなったのを覚えています。「いつも聞いてる声と全然違う……」と。

身体の中で反響して聴こえてくる音と、人が空気を通じて聴いてる音がこんなに違うなんて。ただただショックでした。

自分の声が恥ずかしい

知り合いには笑われそうですが、わたしに聴こえている自分の声は低めで落ち着いたトーンです。実力派女優のような、知的な声色なんです(おやおや)。

ですが、実際に録音や動画で流れてくるのは、少年のようなハイトーンボイス。しかも少し鼻にかかった感じの癖があり、喋りかたもトロッとしている。なんというかちょっと特徴的で、甘めで、変な声です。面白い感じ。

周囲からも「アニメっぽいよね」「楽器でいうとトイピアノ」「どこにいてもすぐわかる」と、よく言われます。 恥ずかしい…!!!!

だから自分の声って、昔からコンプレックスでした。録音なんて絶対聴きたくなかったし、どうしても好きになれなかった。

最近開き直った

そして35歳になっても相変わらず、面白い声の人間として生きています。でも去年ぐらいからちょっとずつ、その気持ちに変化がありました。

「いるとすぐわかるよ。声が特徴的でよく通るもの」と、何度も何度も言われるうちに、「わたしの声ってもしかして他の人より“聴こえやすい”のかな?」と、今さら気づきました。

たしかに、ワイワイ賑やかな居酒屋でも自分が「注文いいですか!」と声を出せば店員さんがパッと振り向いてくれる。例えがあれですけど。

仕事仲間にも「声が通る人は会議を制すからいいじゃない。注目を集める喋り方の人って、意見が通りやすくない?」言われて、(もしかしたら牽制されていたのかもしれないけど)お得感が増しました。

そのあたりからだんだん、気分が変わってきました。単純ですね。

声を味方に

そしてきわめつけは、とあるセミナーでのこと。

仕事で聴講していたそのセミナーが、あまりにもつまらなくて(失礼ですが……ありますよね、そういうとき)、もうだめだ眠いと倒れかけたときでした。

話者が変わって急に場の空気が変わったんです。パッと目が覚めて、登壇者の話を聞こうと思えるように。 その違いは、スライドの巧みさでも、内容の奇抜さでもありません。声だったんです。

よく通る声、言葉と合った音、場面ごとの抑揚。大切なことを大切に伝える息づかい。その話者はとにかく声の出し方がよかった。その場にいる人たちが皆、集中して耳を澄ませている気配がします。

言葉を大切にしていることがわかる。真剣であることが音で伝わる(あるいはそのように見える)。声ってすごいな、と思いました。ああいう風に喋りたいなと思いました。

声はつかうもの

それから、わたしは自分の面白い声を認めて、上手に付き合うことに決めました。だって声ひとつで人が振り向いてくれるなんて、素晴らしいじゃないですか。

最近は、プレゼンや大切な会議の出だしでは必ず、お腹からゆっくり声を出すようにしています。そうすると、普段より少しだけ音が低くなるので、モードが変わったことが明確で、周囲の人がすっと顔をあげてくれます。

でも、喉から絞り出す声はだめです。キンキン響いてうるさいので。あと、声は張ればいいってものでもなくて、会話をしている集団のトーンや抑揚、ペースに合わせると、話がしやすくなることもあるようです。

恥ずかしかったトロッとした喋りかたも、上手に活かせばオブラート効果があります。言葉選びが多少きつくても、この音ならマイルドになる。そのギャップを活かして、ピリッとした内容と和やかな聴き心地の両方を大切にするようにしました。

自分の何かを好きになる

と、いうような心がけをしてみて、どのくらい効果があったのかは、まぁ、測れるものでもないのでよくわかりません。

ただ、話すときにあまり緊張しなくなったのは確かです。「個性的な声という味方」がいる安心を手にした感じ。

とまあ、たいしてヤマもオチもない話なのですが、何がいいたいかというと、30代も半ばになると「手持ちのもので頑張るか」という開きなおりができていいなと最近よく思うんです。

年齢分溜め込んできたコンプレックスにどれだけブーブー言ったところで、新しいものは仕入れられないというか。冷蔵庫に入ってるものでご飯つくるしかないというか(違う?)。

羨んだり妬んだり、あるいは「◎◎よりマシ」といった相対的な物差しをこしらえたり、そういうことじゃなくて。自分なりに生きやすいルートをとるには、「自分の持ち物をちゃんと好きになる」ことこそ大切なのかなと気づいたという話です。(それも少しずつ好きになっていくと、年を重ねることにお得感があることに気づきました)。

あ、やっぱりオチはないです。なんか精神論で恐縮ですが。そんな今日このごろです。次は何かな〜。お腹のお肉かな……。


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“機転をきかせて起点をつくる” 広報コミュニケーション事務所「きてん企画室」を営んでます。文化・デザイン・ものづくり分野を中心に活動中。出版社やデザインカンパニーの広報PR/編集職、文化財団の中間支援兼コミュニケーション職を経て独立。https://ki-ten.com/