偏愛 -ミラーレス-

 エイジは天体写真を撮っていた時期がある。
写真(現像)を始めた中学生から高校生の頃のことである。

本当はオリオン座大星雲などのメジャーなキレイな天体を撮りたかったが、いかんせんスキルが伴わない。
そこで、専ら月や土星などのお手軽な惑星が相手であった。
苦労して手に入れた口径100mm、焦点距離600mmのニュートン式反射望遠鏡に、マウントアダプターでSR-3をセットして撮影していた。
ガイドスコープは、自作の屈折式望遠鏡であった。

 ある日、カメラ店で天体望遠鏡にセットされた「minolta SR-7」に出会った。店長に聞くと、商品である天体望遠鏡のディスプレイとしてセットしていて売り物ではない、とのこと。
売る気は無いのか、と聞くと「露出計が壊れているから。」との回答。
SR-7はミノルタが世界で初めてcds式露出計を内蔵したカメラである。まだTTLではなく外光式であったが、ミノルタの歴史に於いてはチョイチョイこの「世界で初めて」と言うフレーズが登場する。
露出計が壊れていても構わない。
なぜなら、普段使っているSR-3には元々露出計が付いていない。
何より、このSR-7には「ミラーアップ機構」が付いている。
後玉がミラーボックス内に張り出すような超広角レンズを使う時に、邪魔になるミラーを予め強制的に上げておく機能である。
そして、このミラーアップ機構と言うのは天文写真撮影には都合が良い。
ミラーアップしておけばシャッターを切った時のミラーショックが無いのである。(シャッター膜の走行ショックは残るけどね)

そう言う訳で、そこを承知でSR-7を売ってもらえるようにお願いした。
店長は、「しょうがないなぁ。じゃぁ、1500円で。」。
いわゆる「ジャンク品」であるが即決である。
これでブレが無くなるか、と言うとそうでもないし、元々ブレてる訳でもなかっただろうけど、精神衛生上は向上することになる。

 ただ、先に書いたように私の使っていた望遠鏡はニュートン式反射望遠鏡である。屈折式ではレンズ先端と接眼部(カメラ)が離れているが、ニュートン式だと開口部のすぐ脇に接眼部(カメラ)がある。
つまり、バルブで撮影する天文写真である、手元で何か遮光板をシャッター代わりに開け閉めすれば事足りたのである。

今、この拙文を書きながら気がついた。



画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?