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契約法務で心掛けていること

0.自己紹介

はじめまして!2021年9月1日にiCAREの法務担当として入社した蔀(しとみ)と申します。

iCAREに入社する前は、運輸物流会社、システム開発会社で法務を経験し、直近はリーガルテックのSaaSの営業を3年ほどやってました。約3年ぶりに法務として戻ってきて、法務としても勘を取り戻しながら、日々の業務に対応しています。

1.今回のテーマ

今回は、法務の仕事のうち、契約法務について心掛けていること書いてみたいと思います。

(0)そもそも契約とはなんでしょうか?

「契約」とは2人以上の当事者が合意することによって、法的な権利義務関係が発生する行為です。簡単に言えば、法的に保護される約束のことでもあります。企業が活動していくにあたっては、お客様との契約、人やモノを調達する契約、従業員との契約など、多岐にわたる「契約」があります。

(1)法務って契約書チェックの際に何をやっているの?

法務は、「契約」内容をチェックするにあたり、相手方との間で交わされた資料(提案書など)を確認し、契約を締結することで実現したいビジネスの目的や方向性についても契約締結を申請してきた部門に確認しながら、①自社にとって不利な内容や不合理な内容がないか、②法令に違反する内容がないか、③本来であれば契約書に記載されていなければならない事項が欠落していないかなどを確認していきます。

①不利な内容の確認の仕方

まず、自社にとって不利な内容や不合理な内容は、契約書の各条項を読んでいくとだいたいわかります。記載されていることなので、不利な内容や不合理な内容かどうかは、判断しやすいです(もっとも一定の法的知識が必要なこともあります)。ただ、自社にとって契約書上は不利な内容や不合理な内容に思えてもビジネス的には合理的な内容であることがあります。例えば、損害賠償責任を制限する条項です。自社が相手方に対して損害賠償責任を追及する際に、賠償範囲や賠償額に制限がかけられていると、実際に被った損害全てを賠償請求することができません。このような条項が設けられる背景としては、比較的安価なサービス提供を背景としているケースがあることがあり、そういった背景を確認することなく「自社にとって不利だから修正」としてはいけません。賠償責任を制限する条項が不合理かどうかは自社のビジネスの目的や重要度、履行上の事故発生の可能性の高低や事故発生時のインパクトなどを加味して検討する必要があります。

②法令の確認

次に法令に違反することはないかですが、わかりやすいところでいえば、下請事業者との契約で適用される下請法や偽装請負などがあります。下請法との関係でいえば、かならず相手方をインターネット等で調べて下請法適用対象取引に該当するかどうか確認する必要があります。また契約書の内容関しては偽装請負とならないかどうかをチェックするにあたっては、委託者側が受託者側の従業者に対して指揮命令をするような内容(要員交代や評価など)が記載されていないかどうかチェックする必要があります。そのほかは、契約のスキームが法令に違反しなかどうかです。これは業法も絡んでくる話なので調査は慎重に行い、必要に応じて顧問弁護士のお力を借りることもあります。

③本来であれば契約書に記載されていなければならない事項が欠落していないかどうかの確認

そして、本来であれば契約書に記載されていなければならない事項が欠落していないかどうかの確認です。これはかなり難しいです。ビジネス全体のフローを理解して、双方の認識のズレからトラブルが起きそうなところはないかどうかを検討しながら、契約書上で手当をしたほうがいい内容を盛り込んでいきます。法務は普段はビジネスの現場にはいないので、本来であれば契約書に記載されていなければならない事項が欠落していないかどうかを検討するにあたっては事業部門の協力が不可欠です。事業部門がもっている資料(提案書など)や仕様書などをしっかり読んで、自分がビジネスを進めるとしたらどういう点を契約でカバーすべきか、検討します。リスクの押し付け合いという契約書チェックの仕方からは脱却して、どうすればお互いが履行可能な内容でまとめられるかなどの観点からチェックすると良いと思います。

2.最後に

「契約」は当然相手方の契約当事者との利害が絡むものですので、自社から提示した契約書の内容について相手方への説明することも必要です。また、契約書に記載された内容の修正交渉が発生した際には、相手方が納得できる内容かも踏まえてコメントを記載すべきだと思います。こうすることで、契約締結までの論点は絞られていき、結果として契約締結までのリードタイムが短くなります。結局のところ、「法務」も会社の価値を最大化していくために存在しており、そのためにできることをやるべきだと考えています。

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