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まずは自分が最高に面白いテーマを選ぶ―井二かけるのアニメ創作論(1)

アニメ「こうしす!」制作スタッフ便り(仮)の記念すべき第1回は、企画・脚本・監督・雑用係の井二かけるがお送りします。

アニメ「こうしす!」は、情報セキュリティ啓発アニメとして2014年から作品を公開してきました。シリーズ累計で47万再生を記録しています。

これから自主アニメを作ろうという方のお役に立てれば……ということで、こうしす!の企画と脚本を担当してきた井二かけるの創作論を書いてみたいと思います。

今回のテーマは、ずばり「テーマの決め方」です。

自分が最高に楽しめるテーマを選ぶ

自分が最高に楽しめるテーマを選ばないと、自主アニメは完成できません。

なぜなら、アニメというのは完成までに非常に時間がかかるからです。特に25分の自主アニメであれば2年ほどは必要です。もちろん石油王から1000万円ぐらいの寄附があれば、作画開始から3ヶ月ぐらいで完成できる可能性もありますが、可能性としてはほぼゼロです。(もし読者に石油王がおられたらご支援お願いします)

気力を保ち続けるためには、どんな辛いときも自分が最高に楽しみつづける必要があります。特にリーダーが楽しめることは大切です。アニメ制作はチームワークですから、リーダーが楽しみを失えば企画を継続することはできません。多くの自主アニメ企画が自然消滅してしまうのは、これが原因ではないでしょうか。

こうしす!の場合は、企画開始から5年以上となりますが、その間にも筆者のプライベートでは辛いことがいくつもありました。最近ではだんだん仕事が辛くなってきました。けれども創作意欲が続いているのは、自分が最高に楽しめるテーマだからです。

ちなみに、こうしす!のテーマとなるキーワードは、IT、セキュリティ、コメディ、鉄道、姫路です。

筆者は小学生時代からプログラミングを楽しんできました。
(最近は、諸々が憂鬱であまり楽しめていませんが……)

プログラミングだけでなく、学校のプロキシで閲覧を禁止されたウェブサイトを、いかに制限を回避して閲覧するかという実験を嗜む悪ガキでした。その成果もあって、社会人となった後に、ノー勉で情報セキュリティスペシャリスト試験に一発合格できたほどです。

残念ながらその道を究めなかったせいで、ホワイトハッカーとして活躍できるほどの能力はないのですが、それでも、ITやセキュリティという分野には、それなりに愛着があります。

コメディというのも小学生の頃から天空の城ラピュタのムスカ大佐で四コママンガを書いてきたことから、(センスがあるかはともかく)好きな分野でした。

あとは、鉄道マニアだったこと、ちょうど姫路モノレール大将軍駅跡が話題になっていたこと諸々を含めて、こうしす!という企画が徐々に出来上がってきました。

そうやって、好きなモノを掛け合わせていった結果、IT×セキュリティ×コメディ×鉄道(姫路モノレールなど)という異色の作品が誕生したのです。商業作品でないからこそできる好きなモノのごった煮です。

読者の皆様も自分の好きな要素を掛け合わせていけば、ユニークな作品を創り上げることができ、そして何より、作品を完成させる原動力になると思います。

公開のタイミングで話題になりそうなテーマを選ぶ

同じ労力なら、話題にならない作品よりも話題になる作品を作りたいところです。

まだ、こうしす!でも成功メソッドを確立できたわけではありませんが、分かってきたのは、どうやら公開のタイミングと社会的な話題のタイミングが一致すれば強いっぽい、ということです。

こうしす!第1話の場合、制作開始時に「一年後に絶対に話題になる」という大きなテーマがありました。それが「Windows XPのサポート期限切れ」でした。これをXPのサポート期限切れとなる2014年4月9日に公開するということに意味がありました。

実際その通り行った結果、大当たりし、ニコニコ動画では今日時点で28万再生を記録しています。(リンクはYouTubeに掲載している改訂版です)

この結果を超えることが非常に難しいというのもまた事実です。自主制作アニメを作る場合、1、2年を要することが普通ですから、1、2年後に話題になるというテーマが必要です。「Windows XPのサポート期限切れ」は、稀に見るチャンスだったのです。

第2話では、システム開発の現場でなぜセキュリティが軽視されるのかという物語を描きました。ブラックIT企業あるあるという部分はタイミングに関係なくウケるネタだったということもあり、ニコニコでは13万再生となりました。

しかし、第1話に比べると半分以下であり、いつでもウケるネタというのは、ある一時にウケるネタよりも再生数が伸びづらいということが明らかになりました。言い換えれば、公開するタイミングと話題になるタイミングが一致すれば、とても強いのです。

第3話は、「セキュリティに完璧を求めるよりも事後対応の準備を」というテーマです。企画時にはちょうどCSIRT(コンピューター・セキュリティ・インシデント・レスポンス・チーム)これから話題になりそう!ということで選んだテーマです。

Part1~4まで分割していることもあり、最終的な再生数はいくらになるかという評価はまだできませんが、ニコニコ動画ではPart1の再生数が約3万再生でした。

他のエピソードに比べて伸び悩んでいるのは、やはり完全版でないことや、今回のテーマが企業にフォーカスしており、一般視聴者の間で話題になっていないことが挙げられるかもしれません。

実は第4話以降の展開にCSIRTはどうしても必要なので、話題になるかならないかはともかくとして、通過しなければならない部分です。

でも、せっかくやるなら話題になる方が良い。第3話Part2以降のテーマを、どうやって社会的な関心を集める話題につなげていくかというのは、大きな課題であったりします。情報集めに今日も奔走しています。

(もし良いアイデア・情報があれば教えてください)

最後に

今回は作品のテーマの決め方という点についてご紹介しました。この情報があなたのアニメ作りのお役に立てれば幸いです。

今後も時々このような記事を書いていこうと思います。内容へのリクエストがあればぜひコメントをお願いします。


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