Ibuki Ozawa

児童精神科医・精神科専門医 認定NPO法人PIECES代表理事。 twitter:@…

Ibuki Ozawa

児童精神科医・精神科専門医 認定NPO法人PIECES代表理事。 twitter:@IbukiOzawa

記事一覧

「問いを贈ろう」

大きすぎる願いと共に どうしたら、誰かの痛みや排除の上に社会が成り立つのではなく、誰もが尊厳ある一人の人として大切にされ、異なるさまざまな存在が共に生きていける…

Ibuki Ozawa
1年前
29

なぜ市民性を醸成していくのか〜「いる」ことですでに関わり合っている私たちだからこそ〜

市民性は私たちをケアし、癒し、エンパワーする。 「傘持ちますよ」 突然の大雨の中、ベビーカーを片手に大泣きする子どもを抱っこしながら 抱っこ紐を忘れたことを後悔し…

Ibuki Ozawa
1年前
28

私たちの手元から、明日へ〜PIECESのロゴに込めた想いと大事なお願い〜

PIECESという団体名の由来〜私たちの手元にすでにある未来〜 先人たちが耕してきた社会の土壌を受け取り、この世界を共にするさまざまな存在とともに、今を育み、次の時代…

Ibuki Ozawa
1年前
12

大きな事件があったとき、私たちが心を守り、社会のレジリエンスを大切にするために

安倍元首相の事件について、さまざまな報道やSNSでの情報が流れています。 事件自体は、その人に対してこれまでどんな感情を持っていたとしても、誰もが傷つきうる可能性の…

Ibuki Ozawa
1年前
126

世界で紛争や戦争が起きている時の子どもとの関わり

ウクライナ・ロシア情勢が刻々と変化する中で、子どもたちもニュースでそのことを目にする機会や、大人が話すことを耳にする機会が増えているかもしれません。 私たちが自…

Ibuki Ozawa
2年前
12

生命

大好きなチョコレートに手を伸ばして ふと手を止める ねえ あなたの元に チョコは届くのかな ふと漂ってきた刃のような言葉に 目を凝らしながら 思わず身体を守る …

Ibuki Ozawa
3年前
5

あっちとこっちときみとぼくと

こっちがぼく あっちはきみ ぼくときみの間に境界線が現れた こっちにこないで きたいときはどうするの? 現れた境界線の力に 思わず立ち止まるぼくときみの頭の上を…

Ibuki Ozawa
3年前

はる

春がきたね 光を湛えた瞳がぼくを見つめる 春がいたよ ひんやりあたたかい掌がぼくに触れる ねえ みてみて 笑い声を映した瞳の中でぼくが揺れる ねえ ここにいたよ…

Ibuki Ozawa
3年前
2

たくさんの本当の世界

トクトクトク ぼくはぼくのからだにそっと耳を澄ます とくとくとく ぼくは今日も生きている トントントン ぼくはぼくのうしろにそっと耳を澄ます とんとんとん 誰か…

Ibuki Ozawa
3年前
12

力の行方

あなたの力は なんのために使われるのでしょう あなたの力は 何を守ろうとするのでしょう あなたの力は どこに向かうのでしょう あなたの力が 誰かを傷つける時 も…

Ibuki Ozawa
3年前
9

地球の散歩

ああ、ここはどこだろう 深い深い海の底からきこえるかすかなねいろ 森にうごめく幾種もの生命の息吹の地層 街に息づく今はいないものたちの記憶 地球のプレートがゆっ…

Ibuki Ozawa
3年前
10

ことばに「優しい間」を宿す

目に涙をため 顔を真っ赤にして いつもより眉が上がったあの子は 普段話す声を3くらいだとしたら10くらいのボリュームで 普段話すスピードを2くらいだとしたら9く…

Ibuki Ozawa
3年前
32

異なるものたちが共に生きる明日を共に育む 〜PoFというプロジェクト〜

「なぜ、自然の一部であるわたしは、毛虫を毛虫という理由だけで踏み潰す人間の一部なのだろう」 「なぜ、自然の一部である人間は、そこに暮らす猫を 野良猫 と名付けて…

Ibuki Ozawa
3年前
14

狂気と祈り

狂気が 森を焼き尽くした日の もっと前の前から 狂気が 生命のひとひらひとひらを 灰に変えた もっと前の前から 葉を広げあい 根と根を伸ばし挨拶をしあいながら …

Ibuki Ozawa
3年前
4

1000年の記憶

1000年前に生まれた杉の木は 今日も生まれた場所に佇む 1000年前に 土と空の間に芽吹いた杉の木の始まりに出会ったあの人は 今はもういない 1000年前に 自分の足元に…

Ibuki Ozawa
3年前
9

ねえ

この世界を共にするひとつひとつの身体には それぞれの知覚した違う世界が映る たくさんの世界線が存在しあって 今日のこの世界がうまれる 手をのばしてものばしても …

Ibuki Ozawa
3年前
10
「問いを贈ろう」

「問いを贈ろう」

大きすぎる願いと共に

どうしたら、誰かの痛みや排除の上に社会が成り立つのではなく、誰もが尊厳ある一人の人として大切にされ、異なるさまざまな存在が共に生きていけるのだろう。その世界をどう育んでいけるのだろう。

そんな大きすぎる「願い」を持ちながら、私たちPIECESは活動しています。

大きすぎる願いや痛みを目の前に、私自身、時に途方に暮れることもあります。

ただ、私自身は、それでも願う社会が

もっとみる
なぜ市民性を醸成していくのか〜「いる」ことですでに関わり合っている私たちだからこそ〜

なぜ市民性を醸成していくのか〜「いる」ことですでに関わり合っている私たちだからこそ〜

市民性は私たちをケアし、癒し、エンパワーする。

「傘持ちますよ」
突然の大雨の中、ベビーカーを片手に大泣きする子どもを抱っこしながら
抱っこ紐を忘れたことを後悔しつつ、子どもだけは濡れないようにと傘の配置に試行錯誤しながらの帰り道。
声をかけてきたその女性の温かさに、片道40分の道のりを片手に子ども片手にベビーカーと傘、重い荷物を背負って、疲れ果てていた私の心が柔らかく緩み、緊張していた肩が緩み

もっとみる
私たちの手元から、明日へ〜PIECESのロゴに込めた想いと大事なお願い〜

私たちの手元から、明日へ〜PIECESのロゴに込めた想いと大事なお願い〜

PIECESという団体名の由来〜私たちの手元にすでにある未来〜

先人たちが耕してきた社会の土壌を受け取り、この世界を共にするさまざまな存在とともに、今を育み、次の時代につなげていく。
そんな私たちの持つ大切なエッセンスが、紡がれ広がりうねりとなり、柔らかくしなやかな、優しくも躍動的で力強い次の時代への源となっている様を想像して、PIECESという名前が生まれました。

私たちの手元には、過去から

もっとみる
大きな事件があったとき、私たちが心を守り、社会のレジリエンスを大切にするために

大きな事件があったとき、私たちが心を守り、社会のレジリエンスを大切にするために

安倍元首相の事件について、さまざまな報道やSNSでの情報が流れています。
事件自体は、その人に対してこれまでどんな感情を持っていたとしても、誰もが傷つきうる可能性の高いことです。
誰もが知っている有名な人であったり、一国の首相を務めた自分たちの暮らす国と密接に関わる人である場合、より広範囲に、誰もにとって影響が起こりえます。また、「コレクティブトラウマ」という集団としての傷ともなり得ます。

この

もっとみる
世界で紛争や戦争が起きている時の子どもとの関わり

世界で紛争や戦争が起きている時の子どもとの関わり

ウクライナ・ロシア情勢が刻々と変化する中で、子どもたちもニュースでそのことを目にする機会や、大人が話すことを耳にする機会が増えているかもしれません。

私たちが自分なりに社会で起きていることを受け取っているように、子どももその子なりに起こっていることを受け取っています。受け取ったことをどのように認識するか、どのように対処するかは年齢や発達により、そして一人一人違います。

いつもと違う状況やニュー

もっとみる

生命

大好きなチョコレートに手を伸ばして

ふと手を止める

ねえ あなたの元に チョコは届くのかな

ふと漂ってきた刃のような言葉に

目を凝らしながら

思わず身体を守る

ねえ あなたにこの言葉は聞こえているのかな

びくともしなかった私の軌道は

あなたの軌道に出会ってから

まるではじめて地球の周りからはぐれた月のように

彷徨いながら

自由になって

まだ見えないあなたの星に耳を澄ませて

もっとみる
あっちとこっちときみとぼくと

あっちとこっちときみとぼくと

こっちがぼく

あっちはきみ

ぼくときみの間に境界線が現れた

こっちにこないで

きたいときはどうするの?

現れた境界線の力に

思わず立ち止まるぼくときみの頭の上を

ムクドリたちが飛んでいった

ねえ ぼくも鳥になれたらいいのに

あっちがぼく こっちがきみ

きみがゆっくり眠れるように

ぼくが自分でいられるように

ぼくときみは自由に動かしたり上げた下げたりできる境界線をつくった

もっとみる
はる

はる

春がきたね

光を湛えた瞳がぼくを見つめる

春がいたよ

ひんやりあたたかい掌がぼくに触れる

ねえ みてみて

笑い声を映した瞳の中でぼくが揺れる

ねえ ここにいたよ

3つになった掌がぼくの隣の空気をそっと包む

春を探すあなたのすぐそばに

春は

春になる前からそっと

ぼくを探すあなたのすぐそばに

ぼくは

土の中の中にそっと

そっと 暮らしながら

あなたの足音をきいていた

もっとみる
たくさんの本当の世界

たくさんの本当の世界

トクトクトク

ぼくはぼくのからだにそっと耳を澄ます

とくとくとく

ぼくは今日も生きている

トントントン

ぼくはぼくのうしろにそっと耳を澄ます

とんとんとん

誰かが階段をおりる音がする

長くて短い のぼる音よりちょっぴり低い音

パタ

ぼくはぼくの手元にそっと耳を澄ます

ぱた

本がそっと閉じられた音

大好きな寂しい音

キャキャキャ

ぼくはぼくの横にいるちっちゃな生き物に耳

もっとみる
力の行方

力の行方

あなたの力は

なんのために使われるのでしょう

あなたの力は

何を守ろうとするのでしょう

あなたの力は

どこに向かうのでしょう

あなたの力が

誰かを傷つける時

もしかしたらあなたも傷ついているのかもしれない

あなたの力が

誰かを癒すとき

もしかしたらあなたの癒されているのかもしれない

あなたの力が

あなたを守るのと同じくらい

誰かを癒すものとなるように

あなたの力が

もっとみる
地球の散歩

地球の散歩

ああ、ここはどこだろう
深い深い海の底からきこえるかすかなねいろ

森にうごめく幾種もの生命の息吹の地層

街に息づく今はいないものたちの記憶

地球のプレートがゆっくりゆっくり散歩を続ける

森があくびをしてめざめる

風が虫たちのぬくもりをはこんでくる

鳥たちの囁きの隙間から

草木の笑い声がきこえる

ぼくのまだ知らない命の気配

花の蕾がゆっくり伸びをする

みつばちがそっと羽を休める

もっとみる
ことばに「優しい間」を宿す

ことばに「優しい間」を宿す

目に涙をため

顔を真っ赤にして

いつもより眉が上がったあの子は

普段話す声を3くらいだとしたら10くらいのボリュームで

普段話すスピードを2くらいだとしたら9くらいのスピードで

言葉を発した。

そして、手を握りこぶしにしてわたしの方に拳を向けた。

**

「かんしゃく」というメガネで切り取られた

そのメガネをそっとはずしてみると

そこには一人の人の姿が浮かび上がってくる。

わた

もっとみる
異なるものたちが共に生きる明日を共に育む 〜PoFというプロジェクト〜

異なるものたちが共に生きる明日を共に育む 〜PoFというプロジェクト〜

「なぜ、自然の一部であるわたしは、毛虫を毛虫という理由だけで踏み潰す人間の一部なのだろう」

「なぜ、自然の一部である人間は、そこに暮らす猫を 野良猫 と名付けて勝手にその命のあり方を決めるのだろう」

「なぜ、自然の一部であるわたしとあなたは、その違いを排除の理由に、傷つける理由に、相手の命を勝手に決める理由にするのだろう」

物心つく時から尽きることのなかった疑問と、その頃からわたしの心に育ま

もっとみる
狂気と祈り

狂気と祈り

狂気が

森を焼き尽くした日の

もっと前の前から

狂気が

生命のひとひらひとひらを

灰に変えた

もっと前の前から

葉を広げあい

根と根を伸ばし挨拶をしあいながら

生きている

この森に

たくさんの祈りが

時を超えて

そっと置かれてきた

ただただ

祈っていた

あなたのことを

ただただ

祈っていた

あの子のことを

風がそっとみつめる

この島でうまれた

人々の祈り

もっとみる
1000年の記憶

1000年の記憶

1000年前に生まれた杉の木は

今日も生まれた場所に佇む

1000年前に

土と空の間に芽吹いた杉の木の始まりに出会ったあの人は

今はもういない

1000年前に

自分の足元に杉の木の始まりをみつけたあの人の

後の後の後の後にうまれた子が

1000年前に生まれた

空と土をつなぐ杉の木を

見上げる

1000年前のもっと前から

たくさんの記憶を培ってきた土が

杉の木をそっと受け止

もっとみる
ねえ

ねえ

この世界を共にするひとつひとつの身体には

それぞれの知覚した違う世界が映る

たくさんの世界線が存在しあって

今日のこの世界がうまれる

手をのばしてものばしても

きっと捉えることは難しい

たくさんの美しく儚く

混沌とした世界たち

ねえ 羽をはためかせながら

花にとまり その羽を閉じて震わせる

あなたはどんなふうに世界を知覚しているのでしょう

ねえ 地上に出てきてその夏を生きて

もっとみる