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苦境に立つ”ジェネレーションZ”

5/23 英国経済誌 The Economistより


〈未曾有のパンデミックは、世界の労働市場の格差を広げたのかもしれません〉


各国が徐々に外出自粛(≒ロックダウン)の解除に向かっています。

統計を見ると、今回の”ステイホーム”が与えた影響は、人材のタイプによって異なることが見て取れます。


人材のタイプとは、3つに分けられます。

・プロフェッショナル(専門的職業)

・低賃金労働者

・若年層


最も幸運なタイプから始めましょう。

プロフェッショナルは、自宅から働くことができ、職場でのコミュニケーションをZOOMやGoogle Hangoutsで代替することが可能です。このタイプを"Zoomer(ズーマー)"と名付けます。ズーマーはこのパンデミック下においても、給料の減額などはなく、単純に通勤時間が減ったのみ、という状態にあります。

彼らにとって、ロックダウンは確かに不便な事態ではありますが(特に家庭に子供がいる場合)、日々の生活を危機に晒すものではありません。


しかし、プロフェッショナルは例外にすぎません。

例えば、社会生活上必須な仕事をしている人間。彼らはウィルスに晒される危険を犯しながらも、外に出ていく必要があります。さもなくば、職を失ったり、減給されたりと、政府からの給付金を考慮しても大幅に生活水準を下げざるをえない状況に追い込まれます。

彼らは、パンデミック以前からプロフェッショナルよりも弱い立場にありました(賃金、仕事環境など)。


この比較的不運なグループに所属する人間の中で、さらに厳しい状況にあるのは”ゼログループ”と呼ばれています。イギリスでは、「ゼロ時間契約」の契約社員の半数以上が、”ステイホーム”が不可能な職についていたり、今回のパンデミックで閉業したセクターに所属しています。


※ゼロ時間契約とは※ 事業主の求めに応じて不定期に短時間就労する契約のこと。事前に事業主に登録を行い、必要に応じて呼び出されて短期間の就労を行う。オンコール労働者ともいう。近年の増加に伴いイギリスで社会問題化。


アメリカでは4月の平均賃金(農業除く)が4.7%上昇しました。これは記録的な数字で「良いニュースでは」と捉えそうになりますが、実際はそうではありません。

これは、サービス業などに属する低賃金労働者が一斉に雇用主から解雇された結果、統計から姿を消し、平均賃金を押し上げたにすぎないのです。

この傾向はイギリスでも見られます。イギリスは、サービス業などの今回閉鎖せざるをえなかった業界の平均賃金は、プロフェッショナルのそれの半分にも及びません。

さらに、イギリスの国家統計によると、警備員、ケアワーカー、バス運転手の死亡率が、プロフェッショナルのそれと比較し高いことがわかっています。


また、若年層も厳しい環境にさらされています。

1990年後半から2000年初頭に誕生した「ジェネレーションZ」は、その3分の1が、パンデミックの影響を甚大に受ける業界に属しています。25歳以上の人間は13%にすぎません。


また、学生も大きな影響を受けています。

まず第一に、就職するのが困難です。アメリカでは22%の企業がインターンシップオファーを撤回しました(アメリカでは就職の際に非常に重要)。

昨年は18000人のインターンシップ生が登録されていたのに比べて、今年は2500人に留まりました。イギリスの企業では、エントリーレベル(日本でいう新卒)の職を23%削減しています。


これは、単純に”今だけの”話ではありません。

イギリスの研究機関では、いま大学から卒業する新社会人は、今後3年間働き口を見つけるのが比較的困難になると報告。職を見つけられる可能性は、大卒で13%、学歴に乏しい人間では37%低下するとも言われています。


確かに、若年層は上の世代と比較して、新型コロナウィルスそれ自体には、怯えすぎなくてもよいかもしれません。

しかし経済的に、学生ローンや低賃金労働に敷かれることにより厳しい時代を過ごす可能性があります。デロイトによる調査では、「ジェネレーションZ」世代の3分の1が、これまで転職を試みるも、良い働き口が見つからなかったとアンケートに答えています。


若い低賃金労働者が、今回のパンデミックの一番の経済的被害を受けることなりそうです。

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40オランダ風景


いろんなところで叫ばれているように、今回のパンデミックは”経済格差”を助長する結果を招きそうです。

私が個人的に面白いと思って観察しているのが株式市場です。これだけローカル経済(レストランなどのサービス業)が苦しみ、多くの人が職を失っているにもかかわらず、

世界のトップ企業で構成される株式市場は、特段大きなダメージを受けていません。不思議なほどに株は下がっていないのです。(市場関係者から言わせると、各国中央銀行の資金注入が理由なのでしょうが)

つまり富裕層の懐は”大して傷ついていない”のです。

このような現象を見ると、「本当に世界は二分されてしまった」ような感覚に襲われることがあります。しかし、これが資本主義なのだと受け入れ、その中でどうやって生き延びていくかを考えることに価値がありそうです。


それでは、本日もマネークリップをポケットに入れて散歩に行っていまいります。

引き続きよろしくお願いいたします。


本日のマネークリップ




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