毒親育ちじゃないアダルトチルドレン

※先にこちらの記事を読んでからお読みください。

最近よく毒親なんて言葉をSNSで見かける事が増えてきました。
散々記事に書いてきているアダルトチルドレンはいわゆる毒親によって生み出されます。
しかし特殊なケースとして親が毒親じゃないのにアダルトチルドレンになる場合があるので、今回はその話をしてみようと思います。

アダルトチルドレンとは幼少期などに愛情が不足して愛情飢餓のまま大人になる事によって生きづらくなる人たちの事です。
そしてそのように育った子供の親もまた愛情飢餓のまま大人になったアダルトチルドレンであるというのが典型的なパターンでしょう。
ところが愛のある親に育てられながらもやむを得ない理由によって愛情不足のまま育ってしまう人というのもいます。

たとえば親が病気をしてしまった、事業に失敗して極端に貧乏な生活になった、兄弟姉妹が先天的に病気であった事などが考えられます。
つまりその子に対して愛情はあるものの、時間的な余裕や優先順位の問題でなかなか愛情を感じさせる事ができなかった、子供の望みを叶えてあげられなかった場合です。
親が本当に愛情深い人間であったとしても、このような場合にもアダルトチルドレン的な症状に悩まされる可能性はあり得るでしょう。

親が毒親である場合はアダルトチルドレンからの脱却の過程で親が毒親である事に気づいてその事実を受け入れ、場合によっては親を憎む事が必要だと前回の記事には書きました。
ところが、親が毒親でない場合には憎む相手というのが特にいないので気持ちのぶつけようがないのです。
親も精一杯頑張っていて自分のことを愛してくれているのは分かる、でも寂しい、もう少し構ってほしい、ワガママが言えない。

この場合、多くのアダルトチルドレンにありがちな親の顔色をうかがうという意味での本心の抑圧とは違う形で本心を抑圧する事になります。
親に嫌われたくないから本心を抑圧するタイプに関しては、少し厳しい言葉を言うと優しいようで実は優しくはないです。
相手の為を思うというよりも自分が愛されない事が不安で仕方がない、つまり相手の心が見える状態ではないからです。
自分の事で精一杯という感じでしょう。

ところが親に愛があるものの病気の家族の看病であったり親自身が病気で自由に動けずに子供に構ってあげられない場合には子供は親に対しての優しさから本心を抑圧するのです。
愛のある親に育てられた人は優しいです。
親が苦しんでいるのが見たくない、親に少しでも幸せでいて欲しいというような奥行きのある優しさを持ち合わせています。
大人ですら優しくない人が多い世の中でありながら、彼らは子供の段階でとても優しいのです。

このように優しさがあるという利点も踏まえて僕自身はこのタイプの人たちが一概に悪い状態だとは思いません。
そもそもこの状態はある種仕方がない事であるので、良い悪いを論じる意味はないのです。
問題はそのように育った人たちが愛情飢餓をどう乗り越えていくのかでしょう。
このような人たちは長年弱音を抑圧している傾向にあるので、心の奥底に自分のワガママを封じ込めている可能性が高いです。
ろくにワガママを言った事がない人にとってワガママな気持ちを肯定する事はなかなか難しいです。

しかし人間にはそもそもワガママな気持ちというものが備わっているものです。
ここで言うワガママとはすなわちエゴ(自我)の事です。
エゴ(自我)というものは決して悪いものではありません。
問題はそれをどう扱うかにあるでしょう。
エゴという強烈なエネルギーをプラスに向けるのか、マイナスに向けるのかが人生の大きな分かれ道になるでしょう。

インナーチャイルドという言葉をご存知でしょうか。
これは大人の中にある子供の一面、つまり抑圧された子供時代の自分を表現しています。
子供時代の体験に依存した自身の特性や感情に振り回されているアダルトチルドレンの方にはぜひ知っておいて頂きたい言葉で特に親が毒親でないタイプの人には非常に重要な概念です。

大切なのはインナーチャイルドに対してどうアプローチしていくかという事です。
大人になった自分が子供時代の自分の満たされなかった気持ちや辛い記憶を振り返ってその時の自分に優しい言葉をかけてあげる、受け入れてあげるというようなことが彼らには必要なのではないでしょうか。
インナーチャイルドを癒すためのワークショップなどでは受講者でお母さん役と子供役を作って子供役の人が子供の頃に言って欲しかった言葉をお母さん役の人に言ってハグをしてもらうというような事が行われるそうです。
これは親が毒親ではないタイプのアダルトチルドレンの人たちには特に効果が高いんじゃないかと思っています。
親が毒親である場合にはそもそもの認知が歪んでいる場合が多いので、このような療法に対しての効き目が弱くなりやすくそもそも受講するハードルも高い気がしています。

ワークショップなどが難しい場合にできる事としては、まず自分への扱いと他人への扱いにズレがある事への気づきが大切なんじゃないかと思っています。
彼らは愛がある人間でそもそもが優しいので他者に対しての思いやりはちゃんとあります。
しかし自分に対しては思いやりが足りないのです。
つまり他者に対しての思いやりをヒントに自分に対しても思いやりを持つ事を覚えていく、これが大切なんじゃないかと思うのです。

あなたにとって大切な親があなたを大切に思っていたという事をもし理解しているのであれば、周りの事ばかりでなくて自分自身にも優しくしていいんだという方向性に行って欲しいなと思います。
今まで我慢していた分、少し羽目を外すくらいでもちょうど良いのかもしれませんね。

どうするべきかというより僕の個人的な願望にはなってしまいましたが、親に愛情を貰っていた上でのアダルトチルドレンの方にはこんなマイルドな処方箋でも意外に伝わってくれるのじゃないかと勝手ながら期待をしています笑


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