オンライン授業でのブレイクアウトは、「リアルより話しやすい」、「教室のときよりも、多様な人と話せる」、「名前が表示されていて話しやすい」 (大学生の感想)

僕の授業では、教師から学生への一方通行の伝達の場にならないように、「ラジオ番組とお便り」スタイルとしてチャットを活用するほか、授業中に何度も数人でブレイクアウトルームに分かれて履修者間でコミュニケーションを取るという時間を設けている(自己紹介・交流タイムや感想雑談タイム、およびグループワークの作業時間)。

ブレイクアウトルームで履修者同士で話す時間は、学生はどのように感じているのだろうか。僕の授業の初回の感想では、以下のような声が寄せられた。

まず、履修者同士で話す時間がよかったという感想が多い。

他の授業を受けていて、オンラインはオフラインの時よりも受講者同士の繋がりがほとんどないと感じています。しかし、対話をする時間が設けられていることで、繋がりが生まれると思いました。
初めて、オンライン授業での相互的な会話を経験した。リアルにおいても初手対面の相手と話すのは得意ではないため不安もあったが、皆が同じような気持ちでいたのか、ある意味考えていたよりも気楽で、充実した時間になったのでよかった。

リアルよりもオンラインの方が話やすいという学生がいた。

オンラインで初対面の人と会話をするのは少し緊張したが、思ったよりも滞りなく会話を進められたので、私としては会話はオンラインの方がいいなと感じた
私は、結構初対面の人と会って、コミニケーションをする上で、表面上は、そう見せないようにとても気を配っているのですが、内心、かなり緊張する方なので、正直、オンラインでのコミニケーションの方が、初対面の人と会話をする、グループワークを行う、などにおいては、対面のコミニケーションよりも、自分を思いっきり表現できるし、発言することや、自分の思いを伝えることに対して怖くないので、とても心地がいいです。
そういう、私のように緊張しいだったり、過去の、人との関わりの上で、少しコミニケーションに対して苦手意識を持っている人、もしくは、人とコミニケーションを行う機会が今まであまり持てなかった、というような人にとっては、今回の機会は、オンラインでのコミニケーションでまず、自分を思い切り表現しても大丈夫、という体験を重ねてから、次のステップとして、実際の対面のコミニケーションなどに、慣れていくという、流れは、とても自然で、良いアイディアなのではないか、と思いました。

他方で、やはりリアルとは違ってやりにくいという人もいる。また、積極的にコミュニケーションを取ろうとしている人が多いと指摘する人もいた。

対面よりも気まずかった。オンラインは対面よりも「会話のきっかけ」を自ら作るハードルが高く感じる。対面の時のように”さりげなく” ”気軽に”話を振ったり、話題を提供することが難しく”今私話題提供しています感”を顕著に感じるのかやりにくかった
対面よりも、相手の顔を見てコミュニケーションが取れるので議論を深く掘り下げることができたと思います。またオンラインだと話す以外に逃げ場がないので、話を途切れさせないようにと話題を振ったり積極的にコミュニケーションを取ろうとしている人が多いなとも感じました。

オンラインで、ランダムにブレイクアウトルームに割り当てられることについては、ふだん教室では自分からは話しかけないような人とも話す機会になるのでよい、という感想が多くありました。

普段グループで話すときは近くの⼈と話すので結局知っている⼈と話すことが多いのですが、全く知らない⼈と意⾒交換ができるのは⾯⽩いと思った。
初めてオンライン授業でブレイクアウトルームというものを体験しました。実際の空間にいなくても、インターラクティブに授業ができてしまうことに驚きを感じました。また、普段は仲良い友達とディスカッションをしがちなのですが、ブレイクアウトルームだと本当に初対面の学生と会話できるようになるため、その点についても新たな出会いがオンライン授業でも体験できることがいいなと思いました。
zoomのブレイクアウトセッションのグループ分けはランダムで行われる。そのため共通の友人同士で組むことは確率的にはそんなに無く新しい人と出会える機会が多くなる。その点はメリットである。同様に、グループを勝手に割り振ってくれるため、どこに行くべきか分からなくなる心配は無い
ブレークアウトセッションでは、機械が無作為無差別にグループを設定するため、オフラインでは絶対に話すことの内容な⼈と話せたことも良かった。きっと、教室の中では、受講者に友達や知り合いがたくさんいたため、彼らとずっと話していただろう
ブレイクアウトセッションでは、生徒は話しかけたい人を選べないので、自分と似ている境遇の人を見つけるのは困難かもしれません。一方で、価値観や経験が異なる人から学べることも多く、互いに理解し合おうとする雰囲気も出てくるかと思います。

さらにオンラインでブレイクアウトするメリットとして、もたつかず、すぐに移動できるということを挙げる声もありました。

オンラインだとグループ分けが瞬時にできて、時間の効率よくたくさん対話ができて良かったです。
初めてのオンライン授業でしたが、とても楽しかったです!グループワークの際の移動やもたつきなどもないので、効率的に授業ができるのかなと、オンライン授業の可能性を感じました!
教室で行う際と比べても、議論の密度は変わらなかった。むしろグループワークを言い渡されてからの移動時間などが短縮されて、より効率的であると感じた

この授業では、学部 1年生から4年生までが履修しているため、話す相手が違う学年の学生であることが頻繁に起こる。学年を超えたコミュニケーションについても、複数声が寄せられていて、普段どれほど学年の違いという壁があったのかということが、逆に浮き彫りになったと言える。特に、入学したての1年生には、リアルではまだ会ったことのない大学の先輩と話す初めての機会だったと言える。

オンラインでzoom上に⾒える限られた情報しか⼊ってこないからこそ、年上でも年下でも同い年でもフラットに話しやすかったので、変な上下関係を感じることなくいろんな⼈の経験談を取り込めた感覚がありました。
⾮常に楽しかった。僕は普段だったら絶対に先輩とかには⾃分から話しかけることはできないし、しようとも思わないが、オンライン上ではそれが容易にできた
オンラインですが、初めて上級生と話すことができて、私より何倍も思考力だったり創造力があることに驚きました
5分間のブレイクタイムは様々な先輩や同輩と話す貴重な機会であり、息抜きにもなり嬉しかった

ランダムでのブレイクアウトは、このように、よい面もあるが、突然、馴染みのない人と向き合うことになるという側面もある。そのため、最初の瞬間が戸惑うようである。

オンライン上では、3人がランダムに強制的に顔を突き合わせることになり、それは突然に始まってしまう急にその場に入っていくような感覚であるため、コミュニケーションの始めにくさを感じることがあった。しかし、ある程度流れに乗ってくると、コミュニケーションの充実度としては、リアルとオンラインでさほど変わらないのではないかと感じた。
オンラインでは、最初の自己紹介等がゴタゴタし、上手く進んでいないと個人的に思っている。 相手と同時に話して しまうことも多く、謎の譲り合いをすることも多かった。そのため時間が足りないと感じてしまうのかもしれない。
打ち解けるのに時間がかかり、喋り出しが誰かの声と重ならないように様子を伺う形でコミュニケーションが始まった。しかし、慣れてくるとチャット共有や反応スタンプなどを使ってコミュニケーションの取り方が増えたと思う。
ブレイクアウトルームに分かれてからのはじめの一言で、空間の雰囲気が決まるということに気づいた。リアル空間の時とは違い、自分たちで対話の空間・環境も作っていくという感覚があった

このブレイクアウトに分かれてすぐの、様子を伺い合う状況に対し、スムーズに話し始められる工夫については、この授業でいろいろ試しているので、それについては、また別途紹介したい。

そして、ブレイクアウトに関する次の感想は、たしかにそうだな、と思った。

オンラインの場合だと、自分から人を選んで話しかけることはできない。そのため、私の場合は、グループ分けをされた時点で、他の参加者たちのコミュニティから外れて隔離された空間で話しているような錯覚に陥り、孤独を感じた

リアルな教室では、周囲のチームの雰囲気が伺い知れて、活発に議論していたり、わいわい盛り上がっているのが周辺音として聞こえてくる。オンラインのブレイクアウトルームでは、それがないので、完全にそこにいる数人の世界に切り離されてしまう。リアルな場では、周辺音として聞こえてくる周囲のグループの声が、話しやすさや、それぞれが取り組んでいるという感覚を生んでいたのだと、改めて気づかされる。

ほかには、オンラインでは、リアルと異なり、名前が表示されているのでやりやすいという指摘もあった。たしかにそうかもしれない。

人に名前を聞かなくても表示されるところも便利である。グループ分けのスムーズさや相手の名前を把握出来るのもオンラインならではの魅力だ。よって私はオンラインというやり方もアリであると考える。
オンライン上でのコミュニケーションがリアル空間でのコミュニケーションを比べたときによかった点としては、名前が常に表示されていることにより、生での初コミュニケーションだと名前を聞いても聞き取れなかったりすぐに忘れてしまったりして名前を呼び合ったコミュニケーションは中々取りずらいことが多いけれど、お互いにちゃんと名前で認識し合ってコミュニケーションを取れたことは、親睦に繋がりやすいと感じました。あとは、ちゃんと音だけでなく漢字で名前を認識できるとよりその人自身のことを知れた感じがしました。

なお、ブレイクアウトの人数については、僕の授業では3、4人で分けることが多い。5人以上だとそれぞれが話す時間が少なくなり、かつ、声が重なる確率も上がってしまうと考えてのことだ。

3⼈という⼈数感がとても良かったです。おそらく、⼈数が増えることによる話しにくさは、リアルよりもオンラインの⽅がより⼤きくなってくると思います。よって、3〜4⼈という⼈数は、オンライン授業において効果的にグループワークができる最適な⼈数だと思います
3分で3人、4分で4人だと少し駆け足になってしまった 5分で4人くらいだとちょうどいいかもしれないと感じた。

2人だと、「知らない相手」と2人で話すというのはあまり居心地がよいものではないのではないかと考えて、3、4人にしたのであるが、2人の方がいいのではないか、という声もある。

今回のコミュニケーションは3人単位のものだったが、2人でもできるのか、気になった。2人だと時間などの問題があると思うが、より深い話ができると思う
オンラインだと、3人以上で話すのはラグで声が重なってしまったりするので、 2人にした方がやりやすいのではないかと思った。

先日、研究会(ゼミ)で、2人で話すブレイクアウトをやってみたところ、思っていたよりも、好評だった。やはり、「ペア」(2人)か、「少人数」(3、4人)を、時と場合によって、使い分けるとよいのだと思う。

最後に、カメラのオン・オフについて。

この授業では、嫌な人や通信の関係で難しい人はカメラはオフにしてよいが、なるべくオンにして参加しよう、という方針でやっている。そのことについて、やりやすさや、一緒に授業を受けていると感じることができるという声があった。

他の授業よりも皆さんがカメラをオンにしていてやりやすかったです!
自分を含め基本的に多くの人が顔出ししていることで共に授業を受けていると感じることができ、 オンラインでもある程度集中して講義を聞くことができた。 2コマの間、顔出しを完全強制されると辛いが、多くの人が顔出しをし授業を受けるスタイルが今後も続くことを望みます

以上、慶應義塾大学SFCの「パターンランゲージ」(井庭・鎌田)の授業における初回授業の感想からでした。その後の授業を経ての感想は、また、後日共有します。

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