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『渡邉恒雄回顧録』と『わが人生記 青春・政治・野球・大病』渡辺恒雄

 BS1スペシャル「独占告白 渡辺恒雄~戦後政治はこうして作られた 昭和編」をみました。ナベツネさんの回顧録では『渡邉恒雄回顧録』伊藤隆、御厨貴、飯尾潤、中央公論新社、『わが人生記 青春・政治・野球・大病』渡辺恒雄、中公新書ラクレを読んだことがあります。どちらも面白い読み物で、恥ずかしながらそれなりに参考にして発憤材料ともしていました。

 大越健介さんが同じ記者として「ジャーナリストとして日韓国交回復など外交問題まで関与するのはいかがなものか」と質問したのに対し「だって国交回復前なんだから何やってもいいんだよ」という回答にもならない回答が印象的。「語りえないことについては、沈黙するほかない」というウィトゲンシュタインの言葉を思いだしたほど。ナベツネのオーラル・ヒストリーを手がけた御厨貴先生が「沖縄返還でも様々なルートで工作が行われたが、そういうもののひとつだったんだろう」みたいなことをコメントしていたのも印象的。日中国交回復でも、そうだったんだろうな、とか。義理と人情で人間は動くという話し、「書くなというのだけ書かないと信用してもらって、後からどんどん情報が入ってくる」というのも狭い中でしたが経験しました。

 東大の日共細胞時代もリーダーとなり、すぐに偽善性に気づいて新人会というフラクションをつくり、読売新聞に入った後も山村工作隊をスクープしに山中に入るという動きも君子豹変そのもの。

 自民党副総裁の懐刀となって以降は、大野伴睦の著名で本を書き、バカ高い原稿料を貰い、それで部下に奢りまくり、社内に派閥をつくっていったというのは凄いな、と。話しは飛びますが、野村が古田の監督としての失敗を「あいつはケチだったから」と語ったのを思いだしました(ぼくも随分、いろんなアルバイトをしましたが、奢りたりなかったかなw)。

 「回顧録も読んだけどやっぱり生の語りは面白いな」と思って見ていたのですが、さすがに色っぽいところ、暴力的なところはNHKコード的にカットされてました。

 例えば大野伴睦が韓国との国交回復に熱心でなかったのは、韓国人に殺されそうになったから、という話し。殺されかけた時に「撃つなら私を撃って」と身を乗り出した芸者さんをちゃんと妾にしたというあたり。また、岸信介が退陣後は大野を後継にするという密約をホゴにしたという話しの後日談として、岸が暴漢に太ももを刺されたんですが、殺さない程度に制裁を加えるプロの仕業だった、というあたり。また、密約書は大切な部分だけは見せてもらず、その前半部分だけをミノックスで撮った、というあたりもカットされていましたね。

 西山太吉さんが出ていたのも驚きました。沖縄返還について、当時、ワシントン支局長だったナベツネは「裏でOKになったから、表で沖縄の交渉が進んだ」と語っていたんですが、裏取引のスクープについては裁判で西山さんを擁護したのは偉いな、と。個人的に西山さんが「情を通じて」については一言も発せずに持論を述べていたのにはちょっとな、と思いましたが「西山さんが挙げられたのは、大平と西山さんが近かったから、それを佐藤英作が気に入らなかった」というのは初めて知りました。凄いな、と。

 ナンバーワンはナンバーツーにすりよってきて次の権力者にしようとする人間を嫌うから、ナンバーツーを嫉妬する、というあたりの話しも面白かった。

 中曽根さんは右翼としてスタートしたが、左ウィングに羽根を伸ばさせたのはナベツネで「進歩主義、自由主義者になった。そうじゃなかったら総理大臣になれなかった」というのもなるほどな、と。あと、八畳間で子どもや奥さんが寝ている横で酒を飲んだというあたり、中曽根さんは本当に色事がなかったんだな、とw

 中に入り込んで取材することについて、政治部記者になって総裁選をやってる廊下でカネを剥き出しでやりとりする現場をみせつけられたことを語り「記者の目の前でやっているのはショックだったが、生物学者が動物のS*Xを観察しないとどうにもならないしリアリストじゃなきゃどうしようもない」というも説得力ありました。世の中の仕組みを単純に批判するより、実際のところどうなっているのか、なぜそうなったかを確かめてみたい、という感じだったと思います。だいたいミイラとりがミイラにもなれないのがほとんどだし。それにしても確実に嫌われるでしょうけどね、左右からw

 これに関しては『渡邉恒雄回顧録』を思いだしました。ワシントンポストのキャサリン・グラハムがケネディに肩入れし、民主党内の反対にもかかわらず「テキサスをとらなければ我々は負ける」と党内を説得して副大統領にリンドン・ジョンソンを据えてニクソンに僅差で勝利したことを引き合いに出して、「中に入らなければ真実は書けない」と思うに至った、というぐらい食いこんだあたり。

 「独占告白 渡邊恒夫」の中曽根以降篇も楽しみです。

http://pata.air-nifty.com/pata/2005/11/post_cfcc.html

http://pata.air-nifty.com/pata/2005/11/post_14b4.html

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経済紙の記者をやっておりました http://pata.air-nifty.com/
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