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日本の会社を辞めてオーストラリアの会社で働いて学んだコト。(前編)

Author - 書いている人
30歳。愛知県出身。カナダの高校、東京の大学を卒業後、外資系広告代理店にて営業として5年間働いた後、東京オフィスを退職し、同グループのオーストラリア メルボルンの広告会社に入社。いわゆる広告代理店営業 - アカウントマネージャー として2年間勤務した後、帰国し現在はGAFAのストラテジスト。

About - このnoteについて
「海外で働いてみたいけどねー。」
そういう声を日本にいる時、よく聞きました。
行きたいと思っていても、ハードルが大きくて難しいと感じている人が多い印象でした。面接官として新卒の学生の方達とお話していた時もその希望が多くて驚いたのを覚えています。実際に日本の会社から海外の現地企業に行って働いてみて、僕は心から「行ってよかった」と思える経験が出来ました。
もし本当にそう思うなら、得られる学びの量的に、絶対行った方がいい、と思うのです。
これから海外に出たいと思っている人や何か新しい事にチャレンジしようとしている人の背中を少しでも押せたり、実際に行く事が決まっている人/既に行っている人の役に立てるかもしれない、と思い、自分の学びを4つにまとめてnoteとして書いてみました。経験を基にナラティブ形式で、英語圏/多様な職場で働く上でのプラクティカルなTips/テクニックと、より大きなマインドセット/心構えについて、ワーク+ライフ両方の学びを書いています。

1. Jump Off The Cliff - 崖から飛ぶというコト

「メルボルンのアカウントマネージャーが辞めた。 チャンスだぞ。」
クライアント先でのプレゼンの直後、当時の上司が突然そう言って肩を叩いてきた。

そもそも僕が外資系の会社に入社したのも、グループとしてのグローバルネットワークの存在から、海外の会社で経験を積むチャンスがあると思ったから。入社してから毎年、会社に上げ続けてきた希望が遂に叶うかもしれないと興奮した。しかし、喜ぶのもつかの間、プロセスが進み時間が経てば経つ程、次々と不安が沸いてきた。
「本当に自分、海外に行ってなんとかなるのか?」
「こっちでは英語が話せるのも強みになったが、向こうで'ただの外国人'になって通用するのか?」

同じ会社で働いて5年、仕事においてはクライアント、社内の上司部下に他部署、全員と信頼関係が築けていて順風満帆、どんなプロジェクトが来ても正直不安はなかった。
親友もいて、付き合ってる人もいて、平和そのもの - 快適この上無かった。

 「このまま日本にいてもきっと幸せに暮らせるし、むしろその方が幸せかも。やっぱり行かなくていいんじゃないか...。」
本気でそう思ってしまうくらい、入社以来漠然とそこを最初のゴールとして掲げていたはずが、いざそれが起こるとなると、あまりの「未知さ」に想像がつかず、完全にヒヨっていた。

実際に行ってみてどんな感じになるのかは全く分からない。
ただひとつだけ、今行かなかった場合、10年20年、この先ずっと「なんで俺あの時海外行って挑戦しなかったんだろ...」とチャレンジしなかったことに必ず後悔をする、それだけは分かっていた。

人生は決断と選択の連続。決断は怖い。
失敗するかもしれないし、「行かなきゃよかった」と思ってしまうかもしれない。
しかし、自分で下したその決断の結果である「経験」は全部「自分のもの」で、その挑戦は大きいほど、成功でも失敗でも自分を成長させてくれる。
頭の中では、バンジーを飛ぶ時の様な、「崖から飛び降りようとして下を見ている自分」の画が浮かんでいた。崖から飛んだら後は、地面に当たらない様、必死で羽を動かすしかない。

眠れないくらい不安になりながらも、「後悔したくない」という気持ちと、「もしかしたら意外とうまくいくかも!?」というポジティブなワクワクに身を任せてみて、戦慄迷宮にでも入るかの様な気分で渡豪した。

僕は宮本武蔵が好きなのだが、彼は著書「五輪書」で有名な二刀流について、「刀を二本使う事」が目的ではなく、「片手では重くて扱うことができない刀を、二刀に慣れることで、馬に乗りながらでも易々と扱うことができるくらい片手で持つことが当たり前となる」ことが極意と説いている。
つまり「不可能に感じることも挑戦して、慣れて可能にしていく」ということだ。
昇進や転職などで「立場が人を作る」というが、正にそういう事なのだろう。
挑戦のない人生は成長のない人生。その崖は飛ばなきゃ始まらない。
人生の岐路にたった時、もし少しでもその未知にワクワクがあるなら、怖くても飛ぶべきなのだ。

"Jump, and you will find out how to unfold your wings as you fall. "
(飛べ。落ちていく間に翼を広げる方法を見つけ出すだろう。)
 - Ray Bradbury (アメリカのSF作家)

2. Speak To Lead, Lead To Speak - リードする空気を作るというコト

飛んだものの、やっぱりその後は簡単じゃない。
"Follow Your Heart But Take Your Brain With You (自分のハートに従ってやりたい事をやれ。でも脳みそを忘れるな。)"とは言うように、「とりあえず海外に行ったら何とかなる!」という綺麗事を言うつもりはなく、実際に最初は何とかなっていなかった。
だからそれをブレイクダウンしてみようと思う。
僕が直面した問題は、2つの大きなこれまでの環境との「違い」

違い1: 言葉
カナダの高校を卒業し大学も全て英語の環境で、会社でも上司やクライアントとは英語だった為、言語には自信があったはずが、オーストラリアの中でも出身によってかなりクセの強い訛りで話す方も沢山おり、更にオーストラリアでしか使われない特有のスラング、abbreviation(略語)、表現など盛り沢山、そんな人たちが集まっての音質の悪い電話会議、なんて日には本気で「待って。今なんの話だった?」という状況もあった。
ましてや自分は、技術職でない営業職(ビジネス担当)。
会議をファシリテートする立場のエージェンシーのリーダーが、議論に付いていけていないなど、あってはならない事である。
渡豪当初、家に帰ってテレビをつけるとアメリカの映画やドラマが流れており、あまりの違いに本当に同じ言語かと愕然として、
「明日からどうしよう...。」と心底焦ったのを覚えている。

違い2:文化
更に英語圏は、日本以上にシビアに「いかに価値を付加しているか」が重視されるカルチャー。もしその会議で発言が少なければ
「もっと色んな視点を加えてくれ。Where's your voice? (君だけの意見はどこだ。)」とプレッシャーをかけられる。
また会議のスタイルも少し違う。例えばブレストでも、じっくり考えこむという事はなく、とにかく全員がノンストップで話し続け、トピックが二転三転しながらも、「走りながら」アイデアを生んでいく、というスタイルだ。とにかく発言と出てくる意見の数が多い。
その上で「付加する視点とアイデアの質」が求められる。
ジュニアの新卒1年目のスタッフでも萎縮する事なく自由に意見を言うこのスタイルは、少しホンダの「ワイガヤ」思想の様で悪くないのだが、慣れていないと次々と話の変わっていくスピードに戸惑うかもしれない。

備えあれば憂いなし
この様な大きな違いがある中で、その国に来たばかりの「外国人」の自分は、アクセントにも慣れておらず大勢でのワークショップやブレストでは遅れを取りがち。
ハンデがある自分が「存在感をもってリード」するには、まずは事前の「下準備」が大切だった。

会議は規模を問わず録音し、業務終了後に録音を聞いて内容を復習した。
会議前に内容を頭の中でシミュレートして、始める時のアイスブレイク、自分が最も言いたいポイント、反対された場合の反論のシナリオを詳細に台本の様に書き出しておいた。
またブレストの際は必ず予め企画を数ディレクション考え、自分の案を通すつもりで資料化して持っていった。

なぜ僕にとってこういった下準備が大切だったのか?
まず何を言うか、様々なシナリオにどう対応するかが頭の中でクリアになっていると会議の「スタートダッシュ」を自信をもって堂々と走りだせる。
また、自分のディレクションをまず最初に投入しておくと、その会議の土台が「自分の言葉」ベースになり、それが共通言語となるからだ。

もちろん会議の本質は、「会議前に作られた言葉」ではなく、「対話から生まれる新しいアイデア」にあると思うが、"Fake it till you make it (出来るまでは出来るフリをしろ)"という言葉がある様に、この準備の繰り返しをすることで、段々「準備をするスピード」が上がってきて、会議中のリアルタイムのディスカッションでも、即座に頭の中で"準備"が出来る様になり、フリースタイルの発言の精度も上がってくると感じた。

これは海外でなくとも例えば、外資系に転職したばかりでの英語ミーティングなどで、特に言語面で周りに比べハンデを感じる場合、試してみるといいと思う。

「自分のフィールド」化
「自分の言葉」を「共通言語」に変えることを狙ったこれらの「下準備」の目的は、会議の場を少しでも「自分のフィールド」にすることだった。
「自分のフィールド」とはつまり、
- 参加者が自分の言葉を使いその意味を共通認識として持っている
- 自分が発言しやすい「空気」ができている
- 自分が発言をすれば参加者が傾聴する
という状況で、自分がその場のコントロールを十分持っている状況だ。

皆さんも一度は経験がないだろうか。会議でも合コンでもいい。
ずっと黙っていると、なんとなく更に発言しづらい雰囲気が出来上がっていって、なんとか一言発すると「ん?どした?」みたいな空気になってしまったことは。
もしくは、テレビで松本人志がボソッと言った爆笑の一言を取っても、これを「スベりキャラ」の友人が言ったら同じ様に皆は爆笑するだろうか。
必ずしもそうはならないと思う。

複数で話し合う場では、発言する内容と同じくらい、「空気作り」が大切になる。
その「空気作り」の為には、自分自身の「ブランド」つまり「キャラ作り」「信頼」「好感度」- 皆が自分の事を信頼しているか、好きでいるか、そして前述したその場でのスタートダッシュが大切になる。

自分をPRする
マーケティングでは、実際にテレビCMなどで「広告」を使ってターゲットにメッセージを届けようとする前に、PRを打ったりする。
PRとはつまり、何かを話す前に、受け手がそのメッセージについて特定の印象を既に持っている状態にする「空気作り」のことだ。
僕がそれぞれの会議を「自分フィールド化」するには、会議の参加者に僕という人間を事前にPRしておき、キャラを確立し、且つ、好きになってもらう必要があった。

「外国人キャラ」の有効活用
キャラ作りとはつまり他の人との差別化ポイントの強調だ。
僕は、「ダンサーキャラ」、「不幸キャラ」、「ラーメンならこいつに聞けキャラ」、「髪にジェルつけすぎキャラ」など様々なキャラを確立していたが、やはり自分がオーストラリアに来たばかりの外国人だという「外国人キャラ」は何かと便利な差別化ポイントだった。
東京の会社の人の協力も得て日本での事例を集めまくり、何かにつけて「日本ではー」と関連する事例を紹介したりした。
アクセントに慣れていなかった最初も、言うべきか非常に悩んだ末、「外国人の僕にはあなた達のオージーアクセント強すぎるよ!」と正直に言う+彼らのアクセントをもうネタにした。
ネタといえば、日本ではどこかに旅行に行った時、職場の人にお土産を買う文化があるが、オーストラリアにはそんなカルチャーは1mmもない。
だが僕は毎回旅行に行く度、毎回同僚にお土産を買って"Gift-giving culture! (お土産文化だから!)"とか言いながらあげていた。
そしたら同僚も、お返しとしてお土産を買ってきてくれたり、よく分かっていない人は、ランチのデザートとか冷蔵庫に入ってるジュースとか色んなものを"Gift-giving culture!"とか言いながら僕のデスクに持ってくる様になった。「やたらと物を貰う謎の人」になっていてシュールだったが、こういうInside Joke (仲間だけの冗談や文化) が出来るのはいいことだった。
またクライアントと話す時、会議以外では外国人キャラを利用して積極的に「オーストラリアのこと、教えて!」という姿勢で色々質問をした。(何も知らなかったので誰でもいいから本当に教えてほしかったのもある。)
そうすると、「クライアントとエージェンシー」というビジネスの関係性から、「現地人と来たばかりの外国人」という異なる枠組みになり、より親密になれたからだ。因みにこれは心理学では「ベンフランクリン効果」と呼ばれ、人は誰かに何かをしてもらった時よりも、誰かに何かをしてあげた時の方がその人の事を好きになるということだ。

スモールトークを活用せよ
会議を含め、英語圏の会話はまず「スモールトーク」から始まる。
スモールトークとは、誰かと会った時に話すちょっとした世間話のこと。
たいてい皆 "How are you doing? (調子はどう?)"、"How was your weekend?(週末どうだった?)"といったプライベートの調子を聞く質問から始まる。
週末の事を聞くなど日本ではあまり無い習慣だが、実はこれは自分のプライベートな部分を自己開示する絶好のチャンス。
適当に"Good, thanks."などと言わずにしっかりストーリーを用意して自分という人間の興味深さをアピールした方が絶対にお得だと思う。
その人と思わぬ共通点が見つかるかもしれない。そういった話からでも、クライアント同士の間で自分が話に上がる様になれば、それだけで知らぬ内に自分が「近い存在」になっていく。共有スペースやパーティーなど、1対1になる状況を積極的に作り出し、プライベートの自己開示をして相手の事を聞いていけば、相手も自然に自己開示をしてくれてより親密になっていけるはずだ。

当然だが、ストーリーは最後にオチをつけて笑いに落とすべきだ。
英語圏では特にユーモアは重要で、相手を笑わせてリラックスさせる事は自分の自信と余裕を表し、リーダーシップの表れとして見られる。
日本でも海外でも笑いを取れる奴はやっぱり強い。
因みに、上手いジョークは言えない代わりにやたらとプライベートで事件が起こる僕は、毎ミーティング、「今週起こった不幸話」を話してから本題に入っていた。
会議でも、基本スモールトーク無しでいきなり本題に入る事は失礼になる為、そこで何かストーリーを語り笑わせられるかも、その会議のオーナーシップを明確にし自分がリーダーだと再認識させる前述した「空気作り」に大きく関わってくる。

Lead to Speak, Speak to Lead, Repeat.
この様に、「下準備」があった上で、「空気作り」を行い、その上で「質の高い発言」で価値を付加して場をリードしていく。
そうする事で、Lead To Speak (リードしている事で話しやすい空気ができる)、Speak to Lead (話している事でリードしやすい空気ができる)のサイクルを作り上げる事ができる。

ファシリテートの質と数が高まると共に「自分というブランド」への「信頼と好感度」は高まり、その場所での存在感が生まれ、よりコントロールができるようになる。
そしてコントロールがあればある程、自分にとって「発言/リードがしやすい空気」は濃厚になってくる。

もしあなたが新しい国や文化の職場に行ったばかりで、言語や文化の慣れによるハンデがありつつもリードしていかなければいけない場合、会議ひいては仕事全体を「自分のフィールド化」する為、自分が常にイニチアチブを取り、場をリードし続ける事が非常に重要になる。
その時、Lead To Speak、Speak To Leadのサイクルが作れるといいと思う。

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愛知県とカナダの山奥育ち。 日本とオーストラリアの二か国で広告代理店営業として7年間働いた後、帰国し現在はGAFAストラテジスト。 2019年8月 自己免疫疾患であるVogt-小柳-原田病(VKH)と診断され、治療を行いながらNPO 'BEAT VKH'を設立。
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