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HR豆知識 vol.23 偉大な企業文化があっても、偉大な企業が構築できるとは限らない。(from The Science of Happiness)

皆さんは、企業文化というものをどのように考えていますか?

私たちは、知らず知らずのうちに企業文化という魔法の言葉に理想と希望を頂いています。

成功したときはその要因を企業文化としてと捉え、失敗したときはその要因を同じく企業文化であると結論付けたりします。なぜなんでしょうか。そしてそれは本当に正しいのでしょうか?


企業文化とは何だろうか?

例えば、の例で考えてみましょう。
会社に必ず存在するものといえば「目標」です。どのようなレベル感であれ、いつまでにXXを達成するという目標を掲げているのではないでしょうか。それに加えて、より抽象的な「ミッション(存在意義)」を掲げる企業も多いでしょう。

では、以下の様な質問は、私たちが追っている目標(ミッションやゴール)と照らし合わせて回答が出せるかどうかを考えてみてください。

・この電話はすぐに折り返し電話すべきか?明日まで待っても大丈夫か?
・この資料は外に出していい品質なのか?
・人事評価前に昇給を求めて良いのか?
・このミーティングに遅れて良いのか?
・5時に帰宅していいのか?それとも8時までいるべきか?
・自分の会社の中でまずいことを見つけたら報告すべきか否か?
・同僚の間違いを指摘すべきか、うまくいっている事を褒めるべきか?
・新入社員はどんな仕事でも指示されたらYesといって行うべきか?
・上司が懇親会を開いたら参加すべきか否か?
・勝つことは倫理より大切なのか?

この質問を見ると、「正しい答えがない」という事に気づくと思います。

もしくはYes/Noで明確に答えがある場合は、その理由を言葉にしてみてください。それがあなたの「価値観」であり、「無意識バイアス」でもあり、「偏見」でもあります。このような質問への回答は、その会社の今の姿、その行動、これからなりたい姿によって答えは変わってくるのです。

HARD THINGSの著者であるベン・ホロウィッツは以下のように語ります。

偉大な企業文化があっても、偉大な企業が構築できるとは限らない。
企業にとっての文化とは、有望なプロスポーツ選手にとっての栄養とトレーニングのようなもの。生まれつきの才能がある選手(素晴らしいサービス)であれば、素晴らしい栄養とトレーニング(素晴らしい企業文化)がなくてもオリンピック選手になれる。


企業文化と不祥事の関係性(Uberの事例)

実例を見ていきましょう。世界的なテクノロジー企業として知られるUberには過去に以下の様なものを文化規定として公開していました。

1 ウーバーミッション
2 都市を味わい尽くす
3 実力主義とおせっかい精神
4 節度ある対立
5 勝ちにこだわる:勝者の心構えを持つ
6 開発者に開発させる
7 いつも胴元(主体者)となる
8 ユーザー第一
9 大胆な賭けに出る
10 魔法をかける
11 間借り人ではなくオーナーになる
12 ありのままで
13 前向きに導く
14 最高のアイデアが勝つ

上記のような文化を掲げ大きな成長を遂げたUber。2016年には時価総額が600億円となり「素晴らしい文化が素晴らしい成功をもたらしている」とも言われていました。

一方で、ハラスメントの問題やドライバーが加害者となった事件が発生し、その後一時期上場のストップや創業者は解雇される結果となりました。彼らはお手本ともいえるような文化規定を持ちながらも、他社との競争やプロダクト開発に対してルールぎりぎりの事を行っていたらしく、その行動が積み重なり大きな不祥事に発展してしまったのでしょう。

※Uberの当時の様子はこちらをご覧ください。

企業文化は行動の積み重ね


「企業文化は一度の判断で形成されるものではなく、長年の様々な行動が積み重なるうちに自然に出来上がる決まり事」であるとベン・ホロウィッツは語ります。

私たちがここまで企業文化を気にする理由も、私たちはもらった賞を記憶したり、XXX億円というビジネス目標を達成する事を記憶するのではないからです。それよりも「そこで働いた時にどんな気分になったか、そこで働いたことで自分がどんな人間になったか」を記憶します。その自分の感情や過去の体験から企業に対する解釈を大きく変えるのです。


従って、上司がいるから帰れないというのも一つの文化であり、「上司がいるのに帰ると上司の機嫌が悪くなる(自分の評価が悪くなる)」という長年の行動の積み重ねによって自然に出来上がった決まりです。

「どうしよう?」と思ったその瞬間に、私たちは、過去の意思決定(AAAの上司・先輩・同僚・自分)を見て、小さな判断の道しるべを作り行動することになるのです。

謙虚さという武器

企業の不正・スキャンダルに対して、リーダーシップの研究家であるティファニーマルドナド「Humility(謙虚さ)が大事である」と述べています。彼女は独自の研究によって、「Humility(謙虚さ)」を自尊心と傲慢の中間点と位置づけ、6つの規範があれば組織文化が改善され、職場が成功につながる寛大さ、結束、学習を受け入れると発表しています。以下、6つの大事な規範を解説していきます。

1.自分たちを正しく認識する
多くの企業は、長所を過大評価し、短所を過小評価するという罠に陥ることがよくあります。これは、経営上の意思決定の不備や組織の失敗につながる可能性があります。正確な認識の基準とは、組織とその従業員が、自分自身と他者の長所と短所について偏見のない、率直な評価を行うことを指します。
2.間違いを許容する 

一部の企業は、完璧でエラーのない仕事を目指しており、従業員が失敗したり非難されたりしたくないために現状を改善することを恐れる環境を作り出しています。しかし、謙虚な組織文化に共通しているもう1つのことは、有能な過ちを容認する規範です。それは、欠陥のある実行ではなく、斬新なアイデアに起因する過ちです。この種の間違いを受け入れることは、効果的な学習が行われることを確実にするのに役立ちます。
3.透明性と誠実さを重視する(隠さない)
多くの従業員は、業務やアイデアを秘密にしておくことで、他の人や部門が自分のアイデアを「盗む」ことを回避できると感じています。対照的に、謙虚な組織文化は、より透明で正直になる傾向があります。個人は率直で、自分の考えや限界について率直です。この事はミスや過失があったとき自ら認め、そしてきちんと共有し、対策を改善するプロセスが顧客との信頼関係の構築につながるという事も指しています。
4.オープンである
謙虚な組織文化とは、新しいアイデアや外部のアイデアを受け入れることを意味します。たとえば、Colgateは、オープンイノベーション提出ポータルを通じて消費者の提案をクラウドソーシングすることにより、製品の有効成分とデリバリーシステムの新しいアイデアを積極的に模索しています。
5.従業員の学習を支援する
謙虚な組織文化はまた、従業員の育成と継続的な学習を優先します。この規範を無視する組織は、通常、短期間の日常業務、消火活動、より少ない人数でより多くの作業を行うことに重点を置いています。これにより、最終的に優秀な人材が追い出される可能性があります。
6.従業員の認識をケアする
最後に、謙虚な組織文化は定期的に彼らの人々の成功を評価し、祝います。目標は、プライドやエゴを築くことではなく、すべての人が組織の成功に役割を果たすことを認めることです。つまり、会社は彼らなしでは存在できません。従業員の成功を認めることでよく知られている会社の1つは、オンライン小売業者のZapposです。ZapposにはFamilyHERO Awardがあり、特別なHEROケープ、HEROピン、150ドルのZapposギフトカード、そして彼らに敬意を表して投げられたパレードで勤勉な候補者を表彰します。

上記の6つのアプローチが企業や人の非完全性から来るスキャンダルや不正・過失を未然に防ぐ上で重要だと言われているのです。


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私は誰ですか?著者:松澤 勝充

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神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。企業向けの採用支援・組織開発支援、総合商社で2年半採用経験を経て、2017年より、執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供するBerkeley Hass Global Access ProgramにJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了。卒業後、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。

保有資格:The Science of Happiness(UC Berkeley)、DiSC認定トレーナー、ピープル・アナリティクス(authorized by the University of Pennsylvania)、ポジティブ・サイコロジー・ワークショップ(Japan Positive Psychology Institute)、他

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