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HR豆知識⑭ The Science of Happiness(感謝する企業文化の作り方)

The Science of Happinessの続きです。

なぜ書くか

ストレスプレッシャーの高い現代社会で、精神的な豊かさや幸福感(Subjective Well-being)の研究が進んでおり、かつ身近に学ぶことのできるアメリカ。働く社員を幸せにすることのできるかもしれないHRが、この領域(The Science of Happiness)に対して専門性を持つことは、私個人が非常に重要だと考えており、少しでも参考になればと思い書いています。

世論調査や人材コンサルティングを手掛ける米ギャラップが世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査によると、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかないことが分かった。米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった。https://www.nikkei.com/article/DGXLZO16873820W7A520C1TJ1000/

何を書くか

今回は、Gratitude at Work(職場での感謝)について書いていきます。

私たちは、日々、目標に向かって仕事をしています。その目標は与えられたものもあれば、自ら設定したものもあるでしょう。当然ながら目標というものは非常に重要ですが、では「目標があればすべてうまくいくのか?」と言われるとそうではない事がわかると思います。

それは以前に書いたエンゲージメントに関する記事でも述べましたが、「目標設定よりも日々の進捗サポートが重要である」という事が調査研究で明らかになっています。

中でも、日々の進捗サポートの一つとして「感謝する」というアクションがあるのですが、今回の記事ではその感謝する行動や文化をどのように形成していくべきなのか、という事を書いてまいります。

感謝する企業文化のメリット

John Templeton Foundationという団体が行ったアメリカ人2,000人を対象にした調査では、「人々は他の場所よりも職場で感謝の気持ちや感じたり、表現する事をしなくなっている」と結果を発表しています。

しかし、Greater Good Science Center ScienceというUC Berkeleyの調査機関では、「感謝をすること」の効果を以下のように発表しています。

When Greater Good Science Center Science Director Emiliana Simon-Thomas analyzed data from our interactive gratitude journal Thnx4.org, she found the greater the number of gratitude experiences people had on a given day, the better they felt. People who kept at it for at least two weeks showed significantly increased happiness, greater satisfaction with life, and higher resilience to stress; this group even reported fewer headaches and illnesses.(Greater Good Science CenterのサイエンスディレクターであるEmiliana Simon-Thomasが、インタラクティブな感謝ジャーナルThnx4.orgのデータを分析したところ、1日の感謝の気持ちの数が多いほど、その日の気分が良くなることがわかりました。それを少なくとも2週間維持した人々は、幸福感の大幅な増加、人生に対する満足度の向上、ストレスに対する回復力の高さを示しました。さらに、このグループは頭痛と病気にもポジティブな効果があることを発表しました。)

従って、「感謝する」という行為は、瞬間的な気分や感情の改善に加えて、より深いレベルでの「幸福感」、「満足度」、「レジリエンス」を高める効果があると述べているのです。

また、従業員の立場でも以下のような研究結果があります。

It’s not that people don’t crave gratitude at work, both giving and receiving. Ninety-three percent agreed that grateful bosses are more likely to succeed, and only 18 percent thought that gratitude made bosses “weak.” Most reported that hearing “thank you” at work made them feel good and motivated.(人々は職場で感謝の気持ちを切望するだけでなく、与えることと受け取ることの両方を求めています。93%は感謝する上司が成功する可能性が高いことに同意しており、18%だけが上司に「弱さ」を与えたと考えています。ほとんどの人が、職場で「ありがとう」と聞くと、気持ちが良くなり、やる気が高まったと報告しています。

感謝する企業文化の育み方

著者のJEREMY ADAM SMITHは、感謝する企業文化の育み方について5つのエッセンスを述べます。

1. Start at the top(トップから始める)
2. Thank the people who never get thanked(これまでに感謝したことのない人の事を考える)
3. Aim for quality, not quantity(量ではなく、質を大事にする)
4. Provide many opportunities for gratitude(感謝する機会を多く提供する)
5. In the wake of crisis, take time for thanksgiving(危機に直面したときは、感謝する時間を取る)

1. Start at the top(トップから始める)とは、トップが率先して感謝するという行動を実践するということです。従業員同士で始める事も重要で効果がありそうですが、上司や経営陣にはその責任があるという事です。なぜならば、従業員の一部は新しい職場に適合するに際し、少なからず不安を感じるから。従ってトップには従業員の仕事に感謝する責任があるのです。

タイミングと方法は、日々のミーティングでも評価のタイミングでもいいので、予め計画的に時間を取ることが重要だと書いています。それ以外にも、採用時に本人に「どのように感謝されることが嬉しかったか?」と尋ねることもできますね。

2. Thank the people who never get thanked(これまでに感謝したことのない人の事を考える)とは、日々あなたが見えていない部分に光をともしてみましょう、ということでもあります。

会社を清掃してくれる方、元気よく挨拶してくれる新入社員、営業経費を精算してくれる社員、様々な方が私たちの業務をサポートしています。

私自身は昔松下幸之助の本を読んで「お茶くみをしてくれる人に対して、最も感謝の意を示すべきだ」みたいな事がとっても心に残っていましたが、こういったアクションはとても大事だという事でした。

3. Aim for quality, not quantity(量ではなく、質を大事にする)で大事なことは、自発的に感謝が生まれる時間や場所を生み出すことと述べています。感謝という行動は多すぎても少なすぎてもダメだという研究結果が出ており、感謝が多すぎると「感謝疲れ」という現象が発生するという事を述べています。更に、抽象的な感謝は意味がないことを述べており、その人の行動や生まれた感情や成果が詳細に述べられている必要性があります。

4. Provide many opportunities for gratitude(感謝する機会を多く提供する)は、「回数」ではなく「多様な感謝の仕方」を述べています。間接的・直接的、公式の場・非公式の場、金銭的・非金銭的、様々な感謝の与え方受け取り方があり、どれが一つに絞る必要性はないという事です。但し、間接的な場(Web)などを使う場合は、モノやコトに焦点を当てる場合には適さず、あくまでも人に焦点を当てるときに効果があると述べています。また、金銭的な報酬による感謝のみならず、非金銭的な報酬は互いの信頼関係をより良くするという研究結果が出ています。

5. In the wake of crisis, take time for thanksgiving(危機に直面したときは、感謝する時間を取る)では、危機を機会にトランスフォームしていく事が私たちの免疫システムを高めるということを心理学者のロバート・エモンズ氏が述べています。

“There is scientific evidence that grateful people are more resilient to stress, whether minor everyday hassles or major personal upheavals.”(「毎日のちょっとした面倒なことでも、個人的な大きな混乱でも、感謝する人々はストレスに対してより弾力的であるという科学的証拠があります。」)

確かに、どの会社に属していたとしても危機的な状況に遭遇する事はありますがその状況を「どうやったら機会として捉えられるか?」と考えてみる事は私たちの前に進む力や回復力を高めてくれるかもしれないと思います。

このコロナの状況では、多くのネガティブな情報が回っています。しかし、改めて「どうやったらこの危機を、機会として捉えられるか?」という問いが重要であると私は強く思います。


最後まで読んで頂き有り難うございました。


お前は誰だ?

著者:松澤 勝充

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神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。企業向けの採用支援・組織開発支援、総合商社で2年半採用経験を経て、2017年より、執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供するBerkeley Hass Global Access ProgramにJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了。卒業後、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。

保有資格:DiSC認定トレーナー、ピープル・アナリティクス(authorized by the University of Pennsylvania)、ポジティブ・サイコロジー・ワークショップ(Japan Positive Psychology Institute)、他

お問い合わせ先:contact@every-co.com

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Masa

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