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【HRテックカンファレンス2024】参加レポートVol.7『Josh Bersinによるオープニング基調講演 | 未来を切り開く: ジェネレーティブAI(生成AI)によるHRの変革』

HRテックカンファレンスとは?

2024年9月24-26日にかけて、アメリカ・ラスベガスにて開催される世界最大の人事テックイベント、HR Tech Conference & Exposition 2024。

HR Technology Conference & EXPOは、HR Tech領域ベンダーが出展するエクスポ(ブース出展)、各企業の事例やインフルエンサーがトレンドを語るカンファレンス、明日のトレンドをつくるpitch(ベンチャー企業のプレゼン大会)等が行われる【世界最大のHR Techイベント】です。

HR Techという言葉が注目されてから久しく、日本でも効率化・自動化・最適化等をテーマに魅力的なサービスが展開されています。しかし、日本の市場規模が1,200億円程度とされる一方、世界のマーケットはは2018年時点で146億8,000万ドル(およそ1兆6000億円)とまさに桁違い、しかも年10〜11%で成長しており、2025年には300億ドル(約3兆2000億円)に達する見通しでした。なかでもアメリカでは、平均従業員一人当たりで300ドルの投資がなされているとのことで、各企業が重要な投資分野と位置付けており、それに伴いベンダーも魅力的なサービスを提供し続けています。

参加できたセッションについて、ラフな文章ではありますが皆様に共有をさせて頂きます。ご参加された方は社内レポートなどの参考にして頂ければと思います。

HRテクノロジーとAIの進化に関する最新の洞察


日時: 2024-09-25 08:04:22
スピーカー:ジョシュ・バーシン、グローバル業界アナリスト兼 CEO - ジョシュ・バーシン カンパニー
タイトル:基調講演 | HR テクノロジー 2025: AI がもたらす存在の変化

キーワード

HRテクノロジー AI エンゲージメント

主な学び

1.     HRテクノロジーのトレイルブレーザー: HRテクノロジーの進化とその影響についての詳細な説明。

2.     ポストインダストリアルエージョン: HRの新しい時代についての詳細な説明。

3.     システミックHR: HRのオープニングモデルについての詳細な説明。

4.     AIとデータの関係: AIシステムとデータの関係についての詳細な説明。

5.     AIのHRへの影響: AIがHRのあらゆる分野に影響を与えていることについての説明。

6.     エージェント技術の進化: エージェント技術がどのように進化しているかについての説明。

7.     WorkdayのAIアーキテクチャ: WorkdayのAIアーキテクチャとその進化についての説明。

8.     リクルーティングにおけるAIの役割: リクルーティングプロセスにおけるエージェンティックAIとジェネレーティブAIの役割について説明。

9.     スキルスマーケットの進化: スキルスマーケットの進化とその影響について説明。

10. タレント・アクイジションとタレント・マーケットプレイス: タレント・アクイジションとタレント・マーケットプレイスの現状と未来について説明。

11. L&Dの進化とAIの影響: L&D(学習と開発)の進化とAIの影響について説明。

12.JoshBershinとパートナーシップを組んでいる(であろう)会社を説明

知識の説明

1. HRテクノロジーのトレイルブレーザー

·       キーポイント

o   2008年以降、仕事の市場は上昇し、失業率は低下している。

o   誕生率、育児率、結婚率の低下と技術の進化が影響している。

o   プロダクティビティーと仕事の再構築はCEOレベルのイニシアティブである。

·       説明
HRテクノロジーの進化により、従業員のエンゲージメントやリテンションが重要な課題となっている。データによると、従業員のエンゲージメントは過去数十年で大きく変わっていない。

·       Gallupの従業員エンゲージメントデータ

        Gallupのデータによると、従業員のエンゲージメントは過去数十年でほとんど変わっていない。

1.     データは、従業員の約3分の1がエンゲージしていることを示している。

2.     エンゲージメントの向上が必要であることを示唆している。

2. ポストインダストリアル時代

·       キーポイント

o   CHROは最も重要なCレベルのオフィサーの一つとなっている。

o   AIは労働市場の問題を解決するための重要なテクノロジーである。

·       説明
HRの役割が進化し、CHROが戦略的な役割を果たすようになっている。AIの導入により、労働市場の効率化が進んでいる。

·       AIの導入事例

        AIが労働市場の効率化にどのように寄与しているかの具体例。

1.     AIシステムはデータから学び、時間とともに賢くなる。

2.     AIのコストは急速に低下している。

3. システマチックなHR

·       キーポイント

o   HRの仕事は非常にフラグメントされている。

o   新しい仕事が始まるたびに新しいタイトルやスペシャリストグループが必要となる。

·       説明
HRの仕事が細分化され、新しい役割やグループが頻繁に追加されることが、HRの効率を低下させている。

4. AIとデータの関係

·       キーポイント

o   AIシステムはデータから学び、時間とともに賢くなる。

o   伝統的なシステムはデータが増えても賢くならない。

·       説明
AIシステムは大量のデータを集め、それを学習することで賢くなる。伝統的なシステムは新しいリリースがない限り賢くならない。

·       Galileoの事例

        Galileoシステムが新しいコンテンツを追加するたびに賢くなる具体例。

1.     新しいコンテンツが追加されるたびにシステムが学習し、機能が向上する。

5. AIのHRへの影響

·       キーポイント

o   AIシステムの役割

o   AIツールの例

o   AIシステムの進化

·       説明
AIはHRの多くの分野で使用されており、例えばChatGPTやGeminiなどのツールを使用して質問に答えることができます。これにより、従業員は休暇の予約や承認、フライトやホテルの予約などのアクションを簡単に行うことができます。

·       Eric Schmidtのスピーチ

        Eric Schmidtがスタンフォードで行ったスピーチが話題になりました。

1.     エージェントの能力についての説明

2.     AIシステムが相互に通信する未来の予測

6. エージェント技術の進化

·       キーポイント

o   エージェントの相互通信

o   大規模言語モデルから大規模アクションモデルへの進化

·       説明
エージェント技術は、MicrosoftのコーパイロットやGalileo、Workdayのエージェントなどが相互に通信し、トランザクションを実行する能力を持つようになります。

·       Salesforceのエージェントフォース

        Salesforceが発表したエージェントフォースについての説明。

1.     マーケティング会社としてのSalesforceの役割

2.     エージェント技術の導入

7. WorkdayのAIアーキテクチャ

·       キーポイント

o   Workday Assistantのアップグレード

o   Galileoとの統合

·       説明
WorkdayはAIアーキテクチャを進化させ、Workday Assistantをアップグレードしました。これにより、ユーザーは必要な情報を簡単に見つけることができるようになります。また、Galileoとの統合も進められています。

·       WorkdayのAIアーキテクチャの進化

        WorkdayがAIアーキテクチャを進化させた具体的な例。

1.     Workday Assistantの機能向上

2.     Galileoとの統合による利便性の向上

8. リクルーティングにおけるAIの役割

·       キーポイント

o   エージェンティックAIとジェネレーティブAIはリクルーティングプロセスのステップを短縮する。

o   サービスナウとガレレオの使用。

o   ADPの次世代HCMプロジェクト。

o   UKGのAIプラットフォーム再構築。

·       説明
リクルーティングプロセスのステップを短縮するために、エージェンティックAIとジェネレーティブAIがどのように使用されるかを説明。サービスナウやガレレオなどのツールがどのように役立つかを具体的に示す。

·       ADPの次世代HCMプロジェクト

        ADPが6、7年間開催している次世代HCMプロジェクト。

1.     スクラッチから始めたプロジェクト。

2.     ADPが今日発売するHRテクノロジーは、アクリゼーションや内部開発システムから始まっている。

·       UKGのAIプラットフォーム再構築

        UKGが全てのAIプラットフォームを再構築し、大企業向けの利用ケースを追加。

1.     大企業にとって大きな貢献。

2.     多くの時間と金を投入している。

9. スキルスマーケットの進化

·       キーポイント

o   スキルスマーケットは非常に進歩している。

o   ラーニングエクスペリエンスプラットフォーム(LXP)の登場。

o   スキルベースのヒアリングとモビリティー。

o   コンペテンシーベースのモビリティーの失敗。

·       説明
スキルスマーケットの進化とその影響について、具体的な事例を交えて説明。特にLXPマーケットの登場やスキルベースのヒアリングとモビリティーの重要性について詳述。

·       LXPマーケットの登場

        デグリードがLXPツールを販売。

1.     Java Programmingはスキルと呼ばれる。

2.     言葉とフレーズを仕事の説明に入れる。

·       コンペテンシーベースのモビリティーの失敗

        アメリカのコンペテンシーベースによるJobボードを構築しようとしたが失敗。

1.     United Health Groupの大きなプロジェクト。

2.     3時間ほど話し合い、できることについて話した。

10. タレント・アクイジションとタレント・マーケットプレイス

·       キーポイント

o   タレント・アクイジションは常に起きている。

o   タレント・アクイジションのシステムは混乱している。

o   タレント・マーケットプレイスの重要性。

o   内部の選択肢を見つけるためのシステム。

·       説明
タレント・アクイジションとタレント・マーケットプレイスの現状と未来について、具体的な事例を交えて説明。特に内部の選択肢を見つけるためのシステムの重要性について詳述。

·       タレント・アクイジションのシステムの混乱

        タレント・アクイジションでは20,30,40種類のツールが使用されている。

1.     システムの利用が早くなってきている。

2.     Higher Viewsが多くのアセスメントとIO心理学ベンダーを取得。

·       内部の選択肢を見つけるためのシステム

        Gloatと一緒に長い会話をし、タレント・モビリティ・システムをインターナルな仕事ボードとして構築。

1.     インターナルに投稿し、インターナルの選択肢を見つける。

2.     ATSを取り入れて、バックエンディングを開き、良いアイデアを得る。

11. L&Dの進化とAIの影響

·       キーポイント

o   L&Dは320-330億ドルのマーケット。

o   E学習からダイナミック学習への進化。

o   AIがL&Dに与える影響。

o   心理的安全の重要性。

·       説明
L&Dの進化とAIの影響について、具体的な事例を交えて説明。特にE学習からダイナミック学習への進化や心理的安全の重要性について詳述。

·       E学習からダイナミック学習への進化

        最初はE学習、次にブレンディング学習、次にマイクロ学習、次にダイナミック学習。

1.     学習ツールをより使いやすく、学習によるアクセスをより細かくする。

2.     技術を基に人々に学習を与える。

·       心理的安全の重要性

        チームに心理的安全をもっと提供する必要がある。

1.     心理的安全は何かについて説明。

2.     知識の問題から学習の問題までの間隔をとる。

12. 紹介されたHRTechサービス

  1. UKG
    UKGは人事管理ソリューションを提供する企業で、特に労働力管理や人材のエンゲージメント強化に注力しています。
    https://www.ukg.com/

  2. Microsoft Copilot
    Microsoft Copilotは、AIを活用してMicrosoft 365内の作業をサポートする次世代の技術ツールです。
    https://www.microsoft.com/en-us/microsoft-365/copilot

  3. Gloat
    Gloatは、企業内でのタレントモビリティやスキル開発をサポートするAIベースのタレントマーケットプラットフォームです。
    https://www.gloat.com/

  4. Vizier
    Vizierは、データを活用したインテリジェントな企業向けのHRアナリティクスプラットフォームです。
    https://www.vizier.com/

  5. Cornerstone
    Cornerstoneは、学習とタレント管理に特化したクラウドベースのプラットフォームです。
    https://www.cornerstoneondemand.com/

  6. Grow Space
    Grow Spaceは、AI技術を活用して企業内で専門家を見つけ、スキル開発をサポートする企業です。
    https://www.grow.com/

  7. Sana Labs
    Sana Labsは、AIを活用したパーソナライズドラーニングとトレーニングのプラットフォームです。
    https://www.sanalabs.com/

  8. Docebo
    Doceboは、AIベースの学習管理システム(LMS)を提供し、企業の研修を効率化します。
    https://www.docebo.com/

  9. Aerist
    Aeristは、LMSシステムやエージェント作成ツールを提供する小規模企業です。
    https://www.aerist.io/

  10. Lattice
    Latticeは、従業員エンゲージメントやパフォーマンス管理をサポートするHRツールを提供しています。
    https://lattice.com/

  11. HiBob
    HiBobは、シンプルで直感的な人材管理プラットフォーム「Bob」を提供しています。
    https://www.hibob.com/

  12. LinkedIn
    LinkedInは、学習と採用のためのビジネスネットワーキングプラットフォームです。
    https://www.linkedin.com/

  13. LightCast
    LightCastは、労働市場の分析とスキルマッピングを行うデータプロバイダーです。
    https://lightcast.io/

  14. Drop
    Dropは、労働市場に関するデータを提供し、業界トレンドを分析する企業です。
    https://www.drop.com/

 まとめポイント

  • 日本の方はこの基調講演を聞いて「アメリカはこんなにテクノロジーの活用が進んでいるんだ、すべてデータ化(&クレンジング)されていて、AIの活用も当たり前で、HRはデータに基づきながらLLM(AI)に相談しながら戦略的なアプローチをとっているんだ」と思いがちですが、そうではありません。アメリカは私たちが思う以上に広く、日本でも例えば東京圏を離れたエリアでタレントマネジメントツールを使っている会社がどのくらいあるか?という事を考えると想像に容易いと思いますがそのくらいテクノロジーの活用度には企業間でGAPがあります。

  • 確かに、Josh Bershinさんは尊敬すべき世界的に有名なスピーカーです。IT業界に精通しており、様々なベンダーのパートナーとなっている方です。従って、彼が紹介したツールというものは、彼が認めた(+資金調達をしている)ツールに限定されているという事を知る必要があります。ビジネスアウトカム(売り上げや利益などのPL・BS指標)に効果があるのか、HRアウトカム(エンゲージメントや離職率)に効果があるのか、という事はあくまでも立証されていません。仮説の域を超えないものだと私は思います。

  • 本年度のカンファレンスで紹介されているスキルベース・オーガニゼーションに関しては、一つの主流トレンドになりそうではあります。但し、その背景にはいくつかの要因が複雑に絡み合ったものでありますので、この背景をきちんと整理が出来ていないと本質的な問題解決にはならず、生成AIをとにかく使う、といったテクノロジー・オリエンテッドな対処療法にしかなりません。

  • コンピテンシーベースのJob構築が失敗に終わったことをスキルベースの必要性への要因として繋げる事は不十分な印象を受けますし、エンゲージメントが過去数十年で上がっていないというよりはギャラップ社の調査によると米国の従業員エンゲージメントは下降傾向が続いており、過去10年以上で最低レベルに落ち込んでいまるとの見方があります。(https://www.gallup.com/workplace/643286/engagement-hits-11-year-low.aspx

  • 少なからず、労働人口の移り変わり(GenZ世代が中心となる)、国全体としてのタレント不足、ウクライナ、ガザ、大統領選挙、分断、移民、コロナ、Quiet Quitting、Great Resignation、不安定なストックマーケット、様々な外的要因を踏まえる必要があります。

  • 加えて、アメリカ国内における「働き方のあたりまえ」を知っておくと更に更なるインサイトを得られるのではないかと思います。日本とアメリカは大きな違いがあり、副業に対する考え方、転職に対する価値観や企業に対するロイヤルティの考え方、キャリア形成における考え方と従業員が抱えるリスク、At Willという労働法、様々な前提条件を踏まえた上で、今回紹介されたスキルベースオーガニゼーションのためのHRテックツールは、本当に企業のミッション・ビジョン・ゴールに対して効果があるソリューションとなりうるのか?を考える必要があるのではないでしょうか(この点はセミナーにてお話をさせて頂こうと思います)。


最後まで読んでいただき有難うございました。
ご参加された方は社内レポートなどの参考にして頂ければと思います。

著者:松澤 勝充

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供するBerkeley Hass Global Access ProgramにJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事

2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶEvery HR Academyを展開している。

保有資格:
・SHRM-SCP(SHRM)
・Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
・Global Professional in Human Resources (HRCI)
・The Science of Happiness(UC Berkeley)、他

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