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HR豆知識⑮科学的アプローチで職場エンゲージメントを向上させる方法

エンゲージメントとは何ですか?

エンゲージメントという言葉は日本の労働市場においても注目されている言葉で一般化されつつあります。これまでは職場満足度(従業員満足度)というものが注目され、「満たされているかor満たされていないか」という価値判断をすることが良い職場であるか否かの判断基準でした。

一方で、エンゲージメントとは、「没頭」に近い言葉の意味を持ち、「その職場で働くことがその人の充実感や幸福感に関連しているか」という人間心理的・感情的・内面的なゴールに対するアプローチです。

いくつかの研究結果においても、職場満足度で測定される指標よりも、労働生産性や創造性、並びに離職率などに強い影響があると言われているため、「エンゲージメント」という言葉が注目されています。シリコンバレー界隈では、「エンゲージメント」という言葉と同じくらい「Employee Experience」が注目されています。

しかし残念ながら、誤解を恐れずに言えば日本のHR界隈では何となくカッコいいからという観点でそのカタカナを使っているのが大多数な気がします。(どっからその言葉が来ていて、どんな研究や調査によってその言葉が作られたか、を知る事がとても大事だと思うのです)

なので、私は信頼できるソースを駆使してエンゲージメントに対して情報を発信していきたいと思うこの頃です。

あなたは仕事に没頭していますか?

Jessica Lindseyは、UC Berkeleyの認知科学と心理学の学位を持っており、彼女が「職場でのエンゲージメントの高め方」について記事を書いています。


1.Exercise autonomy and self-determination(自主性と自己決定を育む)

仕事に対してアクティブに取り組み人々は、自分の強みと価値観に沿った仕事をしているという事が研究結果で明らかになっています。一方で、仕事が自分の強みや価値観と一致しない場合、どうするべきなのかをここで説明しています。

その方法は、Amy Wrzesniewskiの研究結果で「ジョブクラフティング」と呼ばれ、仕事を別の視点からとらえてみるという方法です。具体的には「タスク・関係性・思考」の面から見え方や解釈を変えるというものです。

細かい仕事が得意でないあなたが正確性を求められる仕事をしなくてはならない時を想像してみてください。ここでは「自分の強みを活かす方法は何か?」という観点で、大きな全体像を描くことにフォーカスしたり、情報共有を密にすることによってチームとしてのアウトプットの正確性を上げていく、という事に解釈と行動を変えることが出来ます。

また、関係性の再構築という意味においては、仕事以外でボランティアや食事などで交流する事によってタスク以外の観点に意義をもたらす、という事です。これは飲みにケーションと似ますが、「このチームやあの人のために頑張ろう」と思えるような関係性の再構築を図っていくという事になります。

最後は、思考の再構築ですが、専門用語では"Cognitive Crafting"と呼ばれ、物事の別の意味を探すという事なります。コーヒーを入れる”作業”を、”目の前の人が喜んだり、安心したり、ほっとするひと時を作る”というリフレーミングです。

30年間の調査によると、ジョブ・クラフティングに従事する人々は、仕事に満足し、パフォーマンスが向上し、幸福感が増し、休暇を取ったり辞めたりする可能性が低くなります。さらに、あなたのワークライフを再形成するためのこの積極的なアプローチは、あなたの所有意識と自己モチベーションを刺激し、それにより、あなたはより仕事に従事することができます。



もし、あなたが誰かの上司なのであれば一つ問いかけて挙げてください。

「あなたは、自分のタスクの意味や意義を部下に説明できますか?」



2.Celebrate your progress(進歩を祝おう)

「毎日の進歩」もエンゲージメントに貢献します。研究者のテレサ・アマビレとスティーブン・クレイマーが12,000近くの日記のエントリを分析したときに、「進歩があった日」を良い一日の要素として捉える事が多かったことがわかりました。

従って、仕事が前に進むこと、プロジェクトが進むこと、という事が働く上での重要な要素であるという事です。逆の研究では、「小さな後退」はモチベーションを抑制し、ネガティブな感情を生み出し、翌日の進歩を減らす可能性がある事も明らかにしています。

この事からも、「今日は少し前に進めたな」と思える要素がMBOやOKRの仕組みによってもたらされるかがとても重要であるという事です。これは自分自身で無意識的に勝ち取ることが難しい為、他人(顧客や上司や友人知人)からの影響を受けやすい領域でもあると思います。



もし、あなたが誰かの上司なのであれば一つ問いかけて挙げてください。

「あなたは、顧客や部下の進歩(小さな成功)を褒めていますか?」



3.Prioritize activities that feel good(気持ちよく感じる行動を優先する)

人はみな、楽しい感情を持ちたいと思っています。だからこそ、ポジティブ感情で動ける仕事に従事する事が重要なのです。

その要素の一つとして注目されているのが「humor(ユーモア)」です。ものすごく人間臭いですが、「笑い」は科学的に注目されているものであり、笑いはドーパミン回路に働きかけ、安心感や協力意欲、仕事のしやすさ、貢献意欲を高めるという効果が明らかになっています。



もし、あなたが誰かの上司なのであれば一つ問いかけて挙げてください。

「あなたは、顧客や部下を笑わせられていますか?」



4.Create space for flow(集中できる場所を作る)

ポジティブ心理学者の Mihály Csíkszentmihályiは、”Flow”という1つの事に集中できている状態が間違いなくエンゲージメントに大きな影響を与えるという研究結果を明らかにしています。

「Opens in new window」という調査の結果によっては、スマートフォンを持つだけで生産性が低下するという事を示唆しているのです。従って、Slackを常に見ていたり、メールを5分おきにチェックしていたり、騒音環境にいたり、などなど。自らの集中力を阻害するものによって、実はあなたは無意識のうちに集中力を欠き、パフォーマンスを下げ、仕事の面白さややりがいを感じる瞬間を逃している。この事を見直す環境づくりがHRとしては重要になってきます。

しかし、この「集中できる適切な環境」は、音楽を聴きながら仕事する事があっている人もいれば、人から離れた場所で一人で作業をすることを好む人がいるように、人それぞれでです。だからこそ、毎日少しずつでも「今日は集中できたかな?」と振り返ってみる努力が必要です。



もし、あなたが誰かの上司なのであれば一つ問いかけて挙げてください。

「あなたは、顧客や部下の仕事の邪魔をしていませんか?」



最後まで読んで頂き有り難うございました。エンゲージメントツールを測定したけど、結局何をしたらいいかわからない方に参考になっていれば嬉しいです。


お前は誰だ?
著者:松澤 勝充

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神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。企業向けの採用支援・組織開発支援、総合商社で2年半採用経験を経て、2017年より、執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供するBerkeley Hass Global Access ProgramにJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了。卒業後、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。

保有資格:The Science of Happiness(UC Berkeley)、DiSC認定トレーナー、ピープル・アナリティクス(authorized by the University of Pennsylvania)、ポジティブ・サイコロジー・ワークショップ(Japan Positive Psychology Institute)、他

お問い合わせ先:contact@every-co.com

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