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【HR豆知識Vol.30】HRのグローバル資格(人事キャリア)について/SHRM-CP&SHRM-SCP


なぜ書くか

様々な情報が飛び交う現代において重要になる中、日本に住む約1億人にはグローバルでの最新の取り組みやトレンドを学ぶ機会が多くありません。Every Inc.では「HRからパフォーマンスとワクワクを」というビジョンを掲げ、グローバルな取組みやアカデミックな文献からD&Iに関する歴史、取組み、事例など”日本なら”ではなく、”グローバルスタンダード”な情報を提供しています。

「資格を取ったらどう?」

2018年の夏に渡米留学をした私は、HRの専門家でUCバークレーで40年教壇に立つCristina G Banksの授業をとる機会に恵まれました。最後のアサイメントも提出し成績が出たタイミングで、「将来どうしようかな」と思っていた私は、改めて彼女にキャリアのことを相談しに行きました。

「私はもっとこの人事や組織の領域においてもっと専門性を身に着けたい。どんな学びをするべきなのか?」
「チームビルディング(MBTIやストレングスファインダー)やコーチングに関する資格などはアメリカでも評価されるものか?」
「アメリカで人事のポジションにつくことを目標としたら何が必要か?」

そんなことを彼女に聞いてみました。

そこで

「資格を取ってみたらどう?アメリカにはHRCIやSHRMという団体が"人事"というポジションに関する資格を提供していて、あなたが私の授業で学んだ事とも繋がっているから就職などにも活きると思うよ」

これが私がHRの資格勉強をするきっかけとなる会話でした。


私が現時点で取得した資格は


SHRM-SCP(SHRM)
Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
Global Professional in Human Resources (HRCI)

などなどです。2024年10月時点で、結果的に3つの公式資格を保有することとなりました。この内容について解説をしていきたいと思います。

SHRMとは

SHRM(Society for Human Resource Management、米国人事協会)は、世界中で人事専門職の能力向上とネットワーキングを支援する、世界有数の人事団体です。現在、32万人以上の会員が165カ国以上に存在すると言われています。また弊社は日本で最初で唯一のラーニングパートナーになっています。(2023年2月)

注意:SHRMが提供する公式の資格は2つのみ

SHRMが提供する公式の資格は2つのみです。尚、複数の日本企業が提供しているSHRM Essentialsは公式の資格ではなく、就職の機会などのスキルや知識として使われるものではありません。

公式なグローバル資格は以下の2つ(SHRM-CP・SHRM-SCP)のみです。

2つの資格は、レベル別に区分けされており、スタッフレベルであればSHRM-CP、マネジメントクラスであればSHRM-SCPを取得することが推奨されています。

SHRM Essentialsとの違い

尚、日本でSHRMと言うとSHRM Essentialsは日本語での提供がありますが、こちらはあくまでも「研修プログラム」であり、キャリア向上に直接的なメリットのある「資格」とは異なるという点があります。

1. SHRM Essentials

  • 概要: SHRM Essentials は、人事の基本知識を提供するプログラムであり、HRの初心者やHRに関する基礎的な知識を習得したい人を対象としています。

  • 目的: 人事分野に関する基礎知識の学習とスキルアップ。具体的には、採用、労務管理、法的な知識、トレーニングの基本的な内容をカバーします。

  • 資格ではない: SHRM Essentials は「資格」ではなく、基礎スキルを身につけるための学習プログラムです。そのため、キャリアや給与向上の直接的な影響は少ないです。

2. SHRM-SCP / SHRM-CP

  • 概要: SHRM-SCP(Senior Certified Professional)および SHRM-CP(Certified Professional)は、グローバルHRの専門性と信頼性を証明する公式資格です。

  • 対象:

    • SHRM-CP: HRの実務担当者や専門家レベルの職務に携わる人向け。

    • SHRM-SCP: HRのマネージャーやリーダーとして戦略的な役割を担う人向け。

  • 目的: HR専門職としての高度な知識とスキルの証明。資格取得により、キャリアアップ、昇進、給与向上が期待されます。

  • 認定資格: SHRM-SCP/SHRM-CP は、グローバル基準に基づいた専門性を証明する「資格」として広く認知され、国際的なHRキャリアの向上に役立ちます。

SHRM認定資格のメリット(昇格・賃金)

公式サイトには以下の記載があります。

SHRM 認定資格保有者は、人事分野の専門家およびリーダーとして認められています。SHRM 認定資格保有者は、次のことを報告します
・信頼性のレベルが大幅に高まります。
・資格を持たない同僚よりも 35% 高い給与。*
・より高いレベルのキャリアの成功。

ほとんどの採用マネージャーは、人事にとって望ましい資格として SHRM 認定資格を挙げており、SHRM 認定資格を取得した人は、それがキャリアアップの重要な要素であったと報告しています。
*2022年 SHRM HRキャリア調査

PayScale社の調査では以下の記載があります。

HR資格は給与を最大28%上げる

HR資格は昇進率を最大25%上げる

世界のCHROの55%が資格を有している

資格がキャリア上のメリットを持つことはグローバルな世界では一般的であるという事がわかると思います。

SHRMが提唱するHRコンピテンシー(SHRM BASK)

SHRMではHRに必要なコンピテンシー(≒KSA)を以下の通りに設定しています。自分自身でも勉強をしながらよくできているBASK(Body of Applied Skills and Knowledge)だと感じるものですが、その理由は以下の通りです。

①人事・HRは「人と組織と職場」をわかっていなくてはいけない

当たり前のように感じる部分ですが、HRは人と組織に関わる仕事がメインですので「人と組織と職場」をわかっていなくてはいけません。人の採用や育成・配置・評価など様々な制度や施策を展開し、エンゲージメントや従業員満足度などのKPIに対してもアプローチしていきます。この領域に関して、他の従業員よりも知見があるからこそ会社で起こる問題が解決できます。このBASKでは「People・Workplace・Organization」といった3つのカテゴリーでその専門性を高める必要性を提唱しています。

②人事は「人と組織と職場」をわかっているだけではいけない

一方で、絵に描いた餅にならないように「人と組織と職場」をわかっているだけではいけません。HRは、ビジネスを通じて起こる問題を解決しているわけで、クライアントがどんなことで困っているのか、その根本原因はどこにあるのか、ビジネスを理解していることも重要ですし、その原因分析やコンサルティング能力が必要です。即ち、人事が人事屋だけであっては不十分であるということが言及されているという事です。このBASKでは「Business」のカテゴリーでその専門性を高める必要性を提唱しています。

③人事は「知識」を使えなくてはいけない

そして最後に、HR知見とビジネス知見を深めた上で必要とされていることが、「知識を使う力」です。BASK領域としては「Leadership・Interpersonal」というカテゴリーの中で言及されていますが、会社を鼓舞しリードしていく力、時にはブレーキをかける倫理的な視点に加え、グローバルマインドセットを持ち、関係構築を行える能力の必要性が言及されています。

HRのプロフェッショナルとして活動をしていくのであれば、営業やコンサルタントと同様に自ら動き、関係を構築し、Noと言わなくてはいけないときにはNoと言う。そのようなスタンスが求められているとも言えます。

どんな問題が出るのか?

さてここで実際にどんな問題が出るのかを少しご紹介していきたいと思います。問題は日々アップデートされますので、あくまでもイメージとして参考にして頂けると幸いです。

SHRM-CPサンプル問題(中級者向け)

以下のような問題を回答する事となります。

問題①:ある会社が新しい勤怠管理システムを導入しました。このシステムを従業員に導入する際、最初に行うべき重要なステップは何ですか?
a) 全スタッフにシステムを導入後に説明会を実施する
b) IT部門にのみシステムをテストさせる
c) 従業員へのトレーニングプログラムを実施する
d) システムに関するフィードバックを従業員に依頼する

問題②:HR部門が再編成されています。この新しい構造を会社の戦略目標に最も適合させるために、どの行動が最適ですか?
a) 再編成後のチーム構成を調整する
b) 従業員の意見を集め、全体のプロセスを再考する
c) 部門ごとの役割と責任を明確にし、新しい目標と連動させる
d) 外部コンサルタントを雇い、再編成をサポートさせる

SHRM-SCPサンプル問題(上級者向け)

問題:あなたの会社がグローバル展開を進めています。グローバルHRポリシーを策定する際に、最も重要な戦略的考慮事項は何ですか?
a) 各国の法規制と文化的な違いを考慮する
b) すべての国で統一したポリシーを導入する
c) 現地の従業員からのフィードバックを待つ
d) グローバルな基準に基づいてすべての国で同一のポリシーを実施する

問題:HRチームを率いて、会社の合併を進めています。ビジネス目標を達成しながら、異なる企業文化の統合を進めるためにはどのようなアプローチを取るべきですか?
a) 統合プロセスの初期段階で、全スタッフに向けたコミュニケーションと透明性を確保する
b) すべての重要な決定事項を経営陣だけで完了させる
c) 社内外のパートナーに統合作業を依頼する
d) 合併後に従業員に新しい文化を理解させる時間を設ける

SHRMテストの特徴(シチュエーショナル・ジャッジメント・テスト)

SHRMの問題としての特徴にはシチュエーショナル・ジャッジメント・テストと呼ばれるケーススタディが組み込まれている点があります。この点はもう一つのグローバルHR資格団体であるHRCIとは全く異なる形式をとっている特徴です。

シチュエーショナル・ジャッジメント・テスト(SJT)**は職場で実際に直面する可能性がある状況をシミュレーションした問題に基づく評価テストです。SJTでは、受験者に仮想的な仕事のシナリオが提示され、それに対して最も適切だと思われる対応を選択させる形式が一般的です。このテストは、受験者の判断力や問題解決能力、コミュニケーションスキル、リーダーシップなどの職場での行動特性を測定することを目的としています。例題としては以下のようなものです。

シナリオ: あなたはHRマネージャーとして、部下のAさんが他の従業員と対立し、チーム内で緊張が生じています。Aさんは、プロジェクトの進捗に関して他のメンバーと意見が対立し、チームの雰囲気が悪化しています。プロジェクトの締め切りが迫っている状況で、あなたはこの問題にどのように対処しますか?

選択肢: a) Aさんにすぐに休暇を与え、状況が落ち着くまで他のメンバーと距離を取らせる
b) Aさんと他のメンバーを集め、問題をオープンに話し合うミーティングを設定する
c) Aさんに問題について指摘し、今後は意見の対立を避けるよう指導する
d) 直接介入せず、チームが自発的に解決するのを待つ

資格取得までの流れ

一般的には試験内容を決めてから3~4カ月ぐらいの準備期間が必要だと言われています。実際に私が受験した際もそのくらいで、日系の会社で務めている方からすると言葉(英語というよりは単語や用語)が慣れない部分も考慮して半年くらいを見込んだ方がいいかもしれません。


お薦めの勉強法(資格準備のため)

弊社ではEvery HR Academy PlatformというHRのグローバルスタンダードを学べるE-Learning Platformをご提供しています。

このPlatformでは上記のSHRM-SCP・SHRM-CPの基礎学習としても効果的なコンテンツを作成しています。

もしHRとしてのキャリアアップや資格取得にご興味をお持ち頂けた方はぜひこちらでも資格取得に向けた学習が可能です。ぜひ参考にしてみてください。

Every HR Academy Platform


著者:松澤 勝充

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供するBerkeley Hass Global Access ProgramにJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事

2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶHRBP講座を展開している。

保有資格:
・SHRM-SCP(SHRM)
・Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
・Global Professional in Human Resources (HRCI)
・The Science of Happiness(UC Berkeley)、他

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