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私じゃない「誰か」になりたくて (つれづれなる創作日記#4 )

はじめに

この記事は、小説『鏡の中のレクイエム』の「あとがき」「備忘録」のようなものです。
記事・小説の両編とも独立したものとなっているので、どちらから読んでもお楽しみいただけます。

本題

「可愛いね」が欲しかった青春

中高生時代、あまり「可愛い」ともてはやされる方ではありませんでした。
どちらかというと、面白いキャラ…とでもいうのでしょうか(笑)。ジョークを言ったりボケたりして、場を盛り上げるタイプでした。

中高生の間というのは概して、「みんなと一緒のもの」「みんなが良いと言うもの」を目指しがちになります。

みんなの言う「可愛い女の子」とはこんな感じでした。
ほっそりとした手足の長い女の子で、髪はサラサラのストレート。
目はぱっちりした二重で、きめ細かな白い肌とぷるぷるの唇を持った子。

どこの学校でも、おそらく大体は同じような特徴なのではないでしょうか。

「可愛い子」たちはみんなから愛され、一目置かれ、尊重される。
そんな状況を目の当たりにしながら、その「可愛い」の恩恵を受けることなく過ごし続けた青春時代。
むしろ、そんな世界からは一線を引かれて、どこか劣等感を抱えながら過ごした青春時代。

大人になった私が「可愛いね」という言葉に焦がれるようになった原因のひとつは、あの時代にあったような気がします。


自己愛はあるはずなのに

私は自分自身が嫌いではありません。むしろ好きです。
自分自身が、というよりも、自分のもつ世界が、と言った方が正しいのかもしれませんが。

私は自分の描く絵が好きだし、自分の書く物語が好きだし、自分の作るあらゆる創作物が好きです。
それは私にしかない内面の表れだから。
私が切実な思いを込めて何かを作る限り、それは世界にたった一つしかない、私にしか作ることの出来ないものです。


そう思っているのに、私は時々、「自分以外の誰か」にどうしようもなく焦がれます。

私にはない可愛さを持つあの人。
私にはない輝きを持つあの人。
私にはない雰囲気を持つあの人。

私が焦がれるのは、大体の場合、その人の「外見」です。
輝きや雰囲気と言ったものたちはどこからが内面でどこからが外見なのか難しいところではありますが、
大体が写真や映像でパッと見たときにわかる、
その人の「見た目」からくる特徴です。


一度焦がれ出すと、もう衝動は止まりません。

どうして私はサユリみたいじゃないんだろう。
この頬も、鼻も、口もーー。
『鏡越しのレクイエム』より

自分を否定するのは苦しいことです。
他の誰かになろうとするのは、つらく悲しいことです。

だって結局、私は私なのです。
他の誰にもなることは出来ないのですから。


「誰か」のための美しさを超えて

これは私だけに起きている話でも、小説の主人公「ナナ」だけに起きている話でもないはずです。

SNSが活性化して、私たちは周囲の人々の生活や外見をまざまざと目にするようになりました。同時に、承認欲求の沼が口を開けて私たちを待っています。
街中では「外見が変われば幸せになれる」といった趣旨のメッセージをいくつも見かけます。

そこで叫ばれているのはいつでも、誰かが作った定義の美です。

ほっそりとした手足の長い女の子で、髪はサラサラのストレート。
目はぱっちりした二重で、きめ細かな白い肌とぷるぷるの唇を持った子。

上で挙げた「可愛い女の子」の定義は、現代日本で若い世代の女の子が直面するものでしょう。


でも、これは誰のために、誰が作ったものなのでしょうか。

私のためではありません。
あなたのためでも、きっと、ありません。

どこの誰でもない「誰か」のために、
いつのまにか歴史と社会と文化が作り上げたもの
です。


私やあなたの個性は、私やあなたのための、私やあなただけのものです。

「誰か」の基準で、「誰か」の判断で、汚されたり曲げられたりしていいものではありません。

私がなることが出来るのは、私だけです。
しかしそれは、逆に言えば、私になることが出来るのも私だけだということです。
他の誰かがいくら努力したところで、私という個性を持つ人間には私しかなれないのです。

他の「誰か」が唱えた美に合わせて自分自身を変えるのではなく、
自分にしか出せない「味」を極めて、自分のだけの「美」を作ること。

そう思えるように、そう実現出来るように、私も日々考えては施行を重ねています。


さいごに


最後までお読みいただきありがとうございました!

読んでくださる方がいることが、創作活動の励みになっております。

今回はつい語りまくってしまいました。
もう2000字です。1000字前後で終わらせようと思ったのに…。怖いですね。

今回の記事に共感してくださる方がいらっしゃれば、何かを感じてくださる方がいらっしゃれば、こんなに嬉しいことはありません。

それでは、重ね重ね、読んでいただき本当にありがとうございました!

Mei(メイ/明)

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