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大卒就活のときの話

大学生の「就活戦争」、これはまさに地獄だった。

私は大学4年間をもっても「何がやりたいか・何がしたくないか」「都会に出たいのか・鳥取に留まりたいのか・田舎に帰りたいのか」、その他もろもろ、全く定まっていなかった。(今も定まってない)
ただ毎日、「有効求人倍率が~」「解禁前の内定が○割~」「企業説明が~」「試験対策セミナーが~」という波に、言葉に、流されていた。
ぼんやりと(休学して、猟師の免許とか取りたい。台湾とか行きたい。ニートしたい。働きたくない。)とか思っていたけれど、それも「経歴ストレートが至上」「ブランクがあると就活に不利?!」とかいう波に飲まれて消えていった。

午前○時(忘れた)、就活解禁と共に大手就活サイトにはパンクするほどの就活生がアクセスする。めんどくさい登録を済ませて、我先にと希望職種の中から気になる企業をピックアップ。「お気に入り企業登録」と「エントリー」をしていく。
説明会の空席は次から次に減っていく。「◎」から「○」へ、「△」「×」と。

私は解禁から数時間後にやっと登録作業を済ませて、空席が減っていく様子をずっと見ていた。
タイムセール時のスーパーに押しかける人間。
7月7日のパチ屋の早朝に行列を作る人間。
新作スマホの発売日に押し寄せる人間。 …に似てるなと思った。

別に急いだって急がなかったって、受かる時は受かるし、受からない時は受からない。きっと大丈夫だって。
というか、そんなに熱烈に爆裂に急ぐほど働きたい人たちに、私は適わないので、お先にドーゾ。

減っていく空席の中で、たぶん誰かが「ここはいいや」とキャンセルして出来た、そのお下がりの席に私は座った。

場所はなんとなく東京、なんとなく大阪、で始めた就活は楽しかった。
いや、正しくは、就活にかこつけて行く東京が、大阪が、楽しかった。

東京へは夜行バスで向かい、朝6時くらいに池袋に放り出され、そこから池袋のネットカフェでシャワーを浴び、メイクをしてスーツに着替え、長時間のバス移動でむくんだ足をパンプスに突っ込んで説明会や面接に行く。
就活が終わると、最寄りのコインロッカーに預けた荷物からスニーカーを引っ張り出し、カフェで優雅に過ごして、その日のうちに夜行バスで帰る。

説明会が続く日は格安ゲストハウスに泊まって見知らぬ外国人と見知らぬお菓子を食べたり、東京から大阪行きのバスに乗る時もあった。二丁目のゲイバーに行って朝まで入り浸ってご迷惑をお掛けした挙句、ヘロヘロで乗った電車で爆睡して、大阪行きのバスに乗り遅れそうになったこともある。
今思うとマジで遊んでただけだな、就活。

結局、「LGBTフレンドリーな下着を作りたい」と受けた会社に落ち、
「誰もが来店しやすいお店作りをしたい」と受けた会社に落ち、
書類選考も入れるとトータル20社くらい?落ちに落ちに落ちた。
最終的には募集数も多くて「出せばほぼ受かる」と言われていた会社に受かりました。

はじめは一応「こんなことできたらいいな」と思いながら決めていた企業選び、就活も、周りの人の内定、内々定が増えてくるともはや「内定が」欲しいがための企業選び、就活に変わっていった。苦しい作業だった。

「自分は自分」「自分らしい人生を」と言われ始めていた時代にあって、なんで「当たり障りないもの」を選び、「当たり障りない自己PR」なんて書いてるんだろう…と、自己嫌悪を抱いていた。

内定を得て、内定式も終えた1月。卒論もなんとか終えて、あとは再試に受かれば卒業(注:多くの人は4年の1月まで再試が残ることはありません。)。
フゥと一息ついたところで、冷静に(これでいいわけないだろう)と思った。
誰でも受かる会社の、誰でも出来る仕事。大手ではあるけど農学部ほぼ関係ないし、よく見たら職場レビューすげぇぞここ。転職数もすごっ。私みたいにとりあえず入社した人も多いんでねぇの?
バチッと目が覚めた。

すぐさまハローワークに駆け込んだ。内定は取り消した。
もう、あんな就活サイトに泳がされてたまるかっ。(語弊)
「新卒就活」なんかじゃなくてもいい、新卒ブランドに頼って就活するのはつらい、というか就活もういやだ…!

ハローワークで出来上がった登録情報は、「大学卒、汽車・自転車通勤可、自動車AT限定免許あり、私用車なし、資格なし、職歴なし」と、なんとも格好悪くて、とうてい受かりそうも無かった。当時からやっていた講演活動の実績も、手話の講座に通ったことも、登録情報には載せる場が無かった。


結果的には、ここからなんとかかんとか、「やれること」「やりたいこと」を主軸に選んだ仕事を経たわけだけれど、色々あって長く続かなかった。
やれること、やりたいことで選べても、続かないこともある。続けるのが難しい要因はいくらでもあるもんだ。
逆に、最初の「誰でも出来る」ほうが長く続いたのかも。それもわからないことだけれど。

大学4年生の就活は、しんどかった。
このことが後の転職活動にも響いてくるのだが、それはまた別の機会に。

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