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TM NETWORK『DRESS2』:30年の軌跡を巻き戻し、変わり続ける姿を映した2014リプロダクション

1984年4月21日のデビューから数えて、重ねたDECADEは3回。2014年4月22日、TM NETWORKがアルバム『DRESS2』をリリースしました。キャリア初期の1984~1988年に発表した曲を、2014年のサウンドで再構築し、ボーカルやコーラスも録りなおしたリメイク集です。

デビュー作で発表した「金曜日のライオン」や「RAINBOW RAINBOW」、ヒットの道筋をつけた「COME ON LET’S DANCE」や「SELF CONTROL」、広く知られた「GET WILD」や「BE TOGETHER」などが2014年の姿に生まれ変わりました。

『DRESS2』の特徴のひとつとしてEDMが挙げられます。小室さんの解釈を通り抜けたEDMというべきですが、グループの軸をダンス・ミュージックにシフトする前、すなわち1984~85年の曲の変貌には驚きました。デビューから間もないころに生まれた曲がタイムマシンに乗って、30年の時間を飛び越えて2014年にたどり着き、その姿を変える。

特筆すべきは、キックの音が重い「金曜日のライオン 2014」や、メインのフレーズの繰り返しが高揚感を生む「RAINBOW RAINBOW 2014」です。思い切りがいいというべきか、やりたい放題やったというべきか、EDMによって改造された2014年のサウンドを聴くことができます。

また、小室さんが標榜するEDMサウンドにおいて重要なのがギターの存在です。ギターの音はエレクトロニック・サウンドと混ざりながら、曲の輪郭を浮き上がらせ、他の音の存在感を増幅させます。そのことを示す曲が「COME ON LET’S DANCE 2014」です。

新たに加えられた長尺のイントロで、ピアノの奏でるフレーズが体感速度をぐいぐい上げていきます。その中からギターの音が勢いよく飛び出し、激しくリフを刻み、四つ打ちに絡む。そしてオリジナルのイントロに接続すると一気に加速し、やがてボーカルにバトンを渡します。

『DRESS2』がリリースされた数日後に、ツアー〈TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end〉が始まりました。ツアーでは『DRESS2』のアレンジを軸にしつつ、例えば新しいフレーズを組み込んだ「GET WILD 2014」のように、曲によってはさらに変化しました。

『DRESS2』は、変わり続けてきたTM NETWORKのシンボルといえるアルバムですが、それすらも通過点とし、時間を進めるのがTM NETWORKらしいというか小室さんらしいというか。30周年の記念碑的な役割を担いつつも、現在進行形でアップデートしていくTM NETWORKの姿を見せてくれた作品です。


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