西藤公園
中学生の時、ひとつのアーティストに全力で好きを捧げられる人達が羨ましかった。
私はどっぷりと好きに浸かることも表現することもしなかったから。
いや、もっと言うと出来なかった。ひとつのアーティストに全力で好きを捧げるタイプではなかったから。
私はそれについてこう考えている。
好きの手持ちが10あるとして、ひとつのアーティストに好きを全力で捧げられる人達っていうのは、その10の好きをひとつのアーティストに割り振っている人達。
私はというと、10の手持ちを2ずついろんなアーティストに振り分けている人であった。
だから好きなアーティストは色々いて、洋楽もロックもヒップホップも聴いていたが、手持ちが2であるため周囲にアピールするほど好きではなかったのだ。
高校生の時、友達からback numberというアーティストを教えてもらった。
色々な曲を聴いて好きになって、この曲がよかったとか歌詞がどうとか、感想を言い合った。
back numberの中で1番好きな歌が「西藤公園」である。
歌詞がとてもいいのだ。
無論、back numberを好きになった理由も歌詞がよかったから。
「西藤公園」の好きなところを書いてみる。
これは好きな歌詞。
この、小説のような、情景が浮かぶこの歌詞が、たまらなく好きなのだ。
比喩が素晴らしい歌詞。
実際でも、比喩が上手な人が好きだ。比喩は、その人の感性と経験からくるもので、知性やユーモアがないとうまくできないものだと思うから。
back numberの歌詞の中で、好きな部分は、例えば、好きという気持ちを“好き”という言葉を使わずに、受け取り側に「好きなんだろうなあ」と思わせてくるところ。
私はこういう、想像させる文章というのがとても好きで、こういう歌詞を聴いて、そして見てみると、スタンディングオベーションをしたくなる。無言で、首を左右に振って感嘆し、大きく手を打ち鳴らす。心の中の自分は完全にそうしている。
言わないところに言いたいことが詰まっている。
行間を読む、ということ。
この歌の好きなポイントはまだある。
それは最後の最後で、「私は冬が好き。僕は君が。」と言い切らずに歌が終わるところ。
back numberに出てくる男性は本当に意気地なしで、ある友達に言わせれば「女々しい」らしい。
確かにその人物を実体化してみると、きっと、自信がなくて人と比べて落ち込んで、繊細なのだろうと思う。
行くか行かないか行くか行かないか、ずっと頭の中でぐるぐる悩み、そして結局行かない人。
多分こういう人だと思う。頑張れ。知人B。
(知人Bというのは分かる人は分かると思う)
歌詞のことばかり書いたが、清水さんの声もまたとてもよい。
裏声のきれいさ、力強さ。
音程をスパッと正しい場所に置くことができる。
素晴らしい。
いつか忘れてしまっても、風の強い日にチェックのワンピースを着て、海岸通りを歩きながらまた思い出せたなら、ハッピーエンドだね!
うまい!
いやそうでもないか。
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