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河野幸人×横田大輔 トークイベントを終えて

先週金曜日に、写真家の横田大輔氏を迎えたトークイベントが代官山蔦屋書店で開催されました。

当日はそれぞれの活動において作品集というものがどのように機能してきたのか、ということを中心にお話しをさせて頂きました。誠に多くのご来場、改めて感謝申し上げます。

以下トーク内容を振り返りながら趣旨をまとめてみました。

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「作品としての写真集」という考え方自体は、近年発見されたことではありません。写真家たちの展示場所が乏しく、オリジナルプリントという概念が現在ほど浸透していなかった頃は特に、作品の最終形態として写真集の制作が目標に掲げられていました。

そのようなある種の貧困さ故に、日本では世界的に見ても質の高い作品としての写真集が数多く制作されてきました。

しかし時代が変わり、作品集を取り巻く環境が大きく変化しました。それはインターネットやアートブックフェアの登場による、作品発表の場と活動手段の多様化です。特に2000年代半ば以降は、それ以前とは異なる表現や活動が顕著に見られました。今回のフェアで「アートブック」という名称を用いたのには、そのような時代性を強調する意図があります。

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毎年パリで開催されるOff Print Paris

そんな時代に活動を始めた横田氏にとって、作品集はそれ自体作品でありながらも同時に「過程」であり、また作家活動の基盤として重要な役割を担ってきました。

ギャラリー、作品集、フォトフェア、アートブックフェアなど、同時多発的に様々な場所で作品発表を行うことでダイナミックな活動を展開してきましたが、近年では作品集を意識しすぎることが作品の可能性を狭めているのではないかという懸念から、アートブックフェアや本からは少し距離をおいて活動をしているそうです。

そのような経緯があり、作品集やそれを取り巻く状況に対し、最近はあまりポジティブな印象を抱いていないということでした。

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オスロの独立系出版社 Multipressの作品集

対してぼくは、そのような局所化や形骸化には同意しつつも、IACKの活動を通して改めて作品集のポジティブな側面を発見することができました。

それは、中央集権的なマーケットに対して作品集が移動可能で、より多くの人の鑑賞が可能だという基本の再認識であり、一部の作家たちが表現や活動の一環としての作品集のあり方を捉え直すような作品作りを始めたのを目にしたからです。これはロンドンでもなく東京でもなく、地方都市で活動しているからこそ考えることができたことかもしれません。

「開かれた書斎」というコンセプトが示すとおり、IACKは何かを体系づけることを目的にした活動をしておらず、店主の極めて個人的な興味に沿った選書がなされています。なので、今回のフェアも決して現代的な表現を網羅する内容ではありません。

しかし、様々な作品集を手に取る中で感じた同時代的な取り組みと、表現の多様性を感じとることができるように選書をいたしました。

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代官山蔦屋で開催中のIACKフェア「アートブックの現在地」

写真という視覚言語のシークエンスを意識した作品集、改めてテキストと写真の相関性に着目した作品集、文学的作品集、流通する作品としての作品集、活動としての作品集、既存の手法を脱構築する作品集。完全に目新しいものではないかもしれませんが、冒頭で述べたような作品集を取り巻く状況や場の変化を考慮すれば、彼らの取り組みの現代性が垣間見えるはずです。

フェアは3月8日まで開催いたしております。この機会に是非ご来場下さいませ。

IACKフェア:アートブックの現在地
会期:2月7日(金)- 3月8日(日)
会場:蔦屋書店2号館 1階 写真コーナー平台

All images ©︎IACK 2020

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石川県金沢市にて、現代写真を中心とした作品集の展示/販売を行っています。 https://www.iack.online