経営学という学問における異種格闘技

自分は経営学における企業の社会的責任やビジネスエシックスを専門にしている。

この秋からは1回生向けに経営学入門を担当することになったわけだが、あらためて経営学という学問は学際的で、いわば学問における異種格闘技の様相を呈しているなと感じた。

ここでは、経営学の特徴を2つ述べておく。

1. 経営学の対象となるものの境界線は曖昧

経営学、という学問は一般的にビジネスに関すること、と思われるかもしれない。もちろん、これは間違ってはいないし、7, 8割は営利企業(そしてそこで働く人々)を対象にしていると言えるだろう。

一方で、病院経営のように、非営利組織の経営に関しても経営学は研究対象にすることがある。すなわち、経営を行うあらゆる組織、そしてそこで働く人々が研究対象になる学問である。

これは決して悪いことではない。例えば、非営利組織の経営においては利益をあげる、という考えが十分に浸透していないため、持続不可能な経営を行っているケースがある。

しかし、「利益」=「悪」ではないし、組織を存続させるために利益は必要不可欠である。このことから、あらゆる組織は経営学の知識を活かすことが求められる。

2. 経営学の専門家はその他の学問的知識をバックボーンとする

上記で述べたように、経営学は様々な組織を対象とした研究がなされる。そして、各組織や組織で働いている人々を対象とした研究が行われる。こうしたことから、各組織を分析しようと様々な研究者が研究を行っているのが経営学である。

例えば、入山 (2012) は経営学の研究における三大流派として、経済学ディシプリン認知心理学ディシプリン、そして社会学ディシプリンをあげている。

また、自分が専門にしているビジネスエシックスの領域では、哲学ディシプリンの研究者が大勢いる。ほかにも、歴史学などの研究者も経営学の分野で活躍していることがある。

こうした異なる学問的バックグランドを持つ研究者が喧々諤々とした議論をするので、意見が収束しないことは多々ある。また、研究者同士が論文でお互いの主張をぶつけることもある。

まさに、各ディシプリンに基づいた「論文上での殴り合い」が行われているのが経営学であり、これほどエキサイティングな学問はないと思っている。

また、各ディシプリンごとの考え方の違いを理解することで、自分の見識をより広げることができる。

人々にとってとても身近な学問で、かつ最も実践的な学問の一つが経営学と言えると思う。


参考文献

入山章栄 (2012) 『世界の経営学者は今何を考えているのか:知られざるビジネスの知のフロンティア』英治出版.

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