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箱根駅伝の全国化への期待


6月30日、2023年秋に開催される第100回箱根駅伝予選会に、全国の大学が参加可能だと発表された。
この文章は遡ること約4か月前、箱根駅伝の全国化についての報道を見て筆者がつづったものである。
ただその時期に書いたという証拠もないし、結局どこの媒体に出すことも叶っていない。そこで供養の意味を込めて、自分のnoteに掲載することにした。全国化が叶い、本当に嬉しく思っている。

箱根駅伝とその問題点


毎年、1月2日と3日に行なわれる、箱根駅伝(正式には東京箱根間往復大学駅伝競走)。
毎年20%近い視聴率を記録するなど視聴者にとってお正月の恒例行事となっているこの大会は、日本の駅伝大会の中でも最も大々的に報じられ、学生の長距離走ランナーにとって大きな目標となっている。

筆者もこの箱根駅伝を毎年楽しみにしている1人だが、しかしこの大会には大きな問題点がある。
出雲駅伝(出雲全日本大学選抜駅伝競走)、全日本大学駅伝(全日本大学駅伝対校選手権大会)と並ぶ大学三大駅伝と呼ばれる大会であるにも関わらず、関東の大学のみ、正確には関東学連に加盟している大学にしか出場の資格がないのだ。

箱根駅伝は関東学連が主催する「地方大会」という位置付けでありながら、三大駅伝の一角を占め最も注目を集めている。このいびつな構造が、長距離界の可能性を狭めてしまっているのではないだろうか。

2022年の年明けに行なわれた第98回大会を制するなど、近年最も実績を残している青山学院大学の原晋監督も、全国化に賛成する1人だ。
第98回大会に向け同大学の相模原キャンパスで行なわれた壮行会で、駅伝を五輪種目にするためにと聞かれた原監督は「皆が参加出来る仕組みをまず国内で整備する。その1つがやはり、箱根駅伝の全国化。100回大会を機に、箱根駅伝の出場大学を全国化させる。そして1月1日のニューイヤー駅伝、これもクラブチームを参加させる」と語っている。

有望選手の関東への集中

箱根駅伝に出場したいがために関東の大学への進学を選択する学生は多く、大学の駅伝界は関東への極端な戦力集中が目立つ。
例えば、2021年11月7日に行なわれた第53回全日本大学駅伝対校選手権大会。上位の15校は全て関東学連に加盟している大学で、区間賞を獲得した8人もそうだった。
最も人口の多い関東の高校を卒業して関東の大学に進学し、箱根駅伝への出場を目指す割合が大きいのも確かだが、静岡県や長野県、宮崎県などの高校を卒業して関東へ進学する学生も事実だ。

箱根駅伝の全国化に反対意見を持つ方も少なくない。その多くは上記のような実力差の大きさを懸念するもの。現在、関東の大学とその他の地域の大学の実力差は大きいため、全国化を行なうと繰り上げスタートの急増が予想されるというものだ。


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全国化の短期的なデメリットと、長期的なメリット



この意見は確かに事実を捉えている。ただし、短期的な観点だけならば。
全国化となるとおそらく、全日本大学駅伝のように各地域ごとに予選会が行なわれ、上位の大学に出場枠が与えられる形になるだろう。
つまりその地域で強豪であれば出場でき、関東の大学との格差が箱根駅伝の本選で現れることになる。
全国化してからの数大会は、反対する方の言う通り繰り上げスタートが増え上位と下位の差は非常に大きなものになるだろう。

それでも本気で日本の長距離界を強化したいと考えるならば、箱根駅伝の全国化には大きなメリットがある。
どのスポーツにも、大学生の4年間で大きく伸びる選手がいる。例えば野球であれば元読売ジャイアンツの上原浩治氏。サッカーであればFC東京の長友佑都選手。いずれも高校時代は全くの無名だったが、大学で実力と知名度を伸ばし、その競技を代表する1人となっている。
選手が実力を伸ばすために、モチベーションは非常に大きな要素だ。大学の長距離界で最もモチベーションが上がる大会といえば、箱根駅伝だろう。
その大会に「絶対に出られない」と「出られるかもしれない」の間には、非常に大きな差がある。

また短期的には関東とそれ以外の大学で大きな差があったとしても、箱根駅伝に出られる権利があれば地元の大学に進学する選手も徐々に増え、関東以外の各大学もより一層の強化に乗り出すに違いない。

箱根駅伝には様々なスポンサーが付いているが、プロでなく学生が出場する大会である以上は学生らのための競技であらねばならない。
高校時代は無名で地元の大学に進んだ選手が、そこで箱根駅伝を目標にして急成長を遂げる。夢物語だと思われるかもしれないが、学生スポーツは可能性を信じてより幅広い選手に門戸を開いておくべきではないだろうか。


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