『スパイク』#178

履き物の、靴のほう。ワールドカップを見ているなかで、トップ選手のスパイクは「紐がなくて」「足にピッタリとフィットして」「素足に近くて」「脱げると履きにくい」、という感じらしい。プレー中に脱げてしまったときに実況でそんな感じのことが解説された。
サッカーのスパイクは、いかに軽やかに力強くフットワークをこなせて、そして肝心なボールの扱いをどれくらいストレスなく自在にやれるかが大事なとこ、クオリティ、最重点ポイントなのかな。軽やかな切り返しで芝を掴んで踏み出せる足裏を作れること。ふんわりした浮き球のパスは、どれだけ“身体”の“ボール”の距離が近いか、どれだけ足先の神経が、意識が、ボールと近接できるか、なんじゃないかなと思う。きっとすごーく、薄くて柔軟な素材のスパイクなんだろうな。踏まれたときの選手の痛がり具合が物凄いのもきっと演技じゃない。
自分はこれまで、3つの競技のスパイクを体験した。端的に全般的な「スパイク」の特徴で言えることといえば、地面に刺さる・食い込む“針”か“ポイント”か、言い方次第ではあるが靴底に突起がある、その点で共通している。けど、サッカーとは違うなーって思って、書く。
小学校の時にやっていた野球では、樹脂製で直径5mmくらい高さ4mmくらいでドット状のポイントが足裏全体に分布したものだった。小学生だし、筋肉も発達しきってなかったこともあるしで、金属のスパイクではなかった。ただの運動靴からスパイクに変えたとき、実感したのは「ベースランニングで地面をよく蹴れることと、ベースを回るときの急カーブで滑らないこと」。小学生の気分としては「速く走れるようになった」だった。短距離走は速くなかったけど、ベースランニングと中距離ダッシュの筋持久力はチーム内では強かったから、効果はあったなと思う。
それから中学で陸上競技を始めて、長距離ランナーで長く長くペースを守る、というタイプだと思ってたんだけどというかそういう練習だったんだけど本番になると、溜めて溜めて最後400メートルの末脚タイプになってしまったのは今では結構悔いるところで、そもそも自分はスプリントタイプではなかったのにラストスパート末脚型をやるのは向いてなかった、って後悔はおいといて、陸上のスパイクは長距離にしても短距離にしても、つま先から母指球あたりまでの、足裏の先端の方にだけ、長さ1センチ弱のスパイクピンが10本ほど。とにかく、「足先で地面を掴んで、蹴り出すときには親指の付け根の母指球だけでなくつま先でまで力を地面に伝えてキックできる」のがトラックのスパイクだった。長距離と短距離ではピンの長さが違っていて、短距離は蹴るための力を使えるってことでやや長く7mmほど、長距離は長いと足への負担が大きいためにやや短くて5mmほど。スパイクを履いたときの、グンとストライドが伸びる感じがたまらない。楽に速くなる感じでドーピングのようだと思った記憶がある。
高校で始めたハンドボールでは、スパイクという名称は使ってなくて、ハンドボールシューズ、ハンシュー。アメフト用のアシックスのミサイルを履く人もいた。いや私も履いた。ハンドボールシューズの、アシックスのスカイハンドはおよそ野球のスパイクと似ていて、ドット状のポイント。また、野球と同じく土踏まずのところにも靴底があってポイントは無い(メーカーのロゴが入ってる)。野球の時は、うまく走れて全般的にフットワークが良くなる感じだったけど、ハンドボールにおけるスパイクは、それに増して重要な機能はひとえに「自在に止まれること」。競技では、ボールを持って、投げて、走って、飛ぶ、そして切り込む。20×40メートルのなかで、基本的には相手プレーヤーの間を切り込んでゴールに近づく。そのためのフットワークは蹴れることよりも、前後左右の移動に伴う体重移動と体勢維持する筋力を支えて、ストップ&ゴーで相手を振り切ってパスかシュートかに持ち込む。ボールを持たないフリーの状態でもそう。いかに相手のマークを振り切れるか、そして、守備においてはいかに相手の動きに振り切られずついて行って圧倒できるか。たぶん、バスケにしても同じなのかな、いかに止まれるか。バスケは全く「スパイク」スポーツではないけど。
普段のランニングではランニングシューズで、かかとからどれだけうまく母指球まで接地をつないで蹴り出せるか、考えてはいるけれどあの、スパイクを履いたときのドーピング感がちょっぴり恋しい。

#スパイク #180614

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