できないことはできない

ここ数年海外にずっと暮らしてた。小さな町に帰ってきた。いろんな気持ちを抱えて、飛行機に乗って帰ってきた。不完全燃焼のような、でももう力尽きた敗北感と、やっと少し楽になれるという気持ちと。うまく説明がつき切らないけれど離陸する時涙が溢れた。ひとつだけ確かだった感覚は、それは五年間の自分を讃える誇らしい涙ではなかったということ。

帰ってきてから暫く経って、私の帰郷は人の耳に入り、目に入り、次第に私に会いたいという人がちらほら。もちろん私は悪いことをしたわけでもなければ、コソコソと過ごす理由も無い。けれどひっそりとしていたい自分は確かにここにいる。家族は幼馴染に合うようにと促す。まだ仕事も決まっていないし〜と適当に理由をつけて気乗りがしないでいる私をたしなめる母と祖母。どうして堂々と人に会えないのか、自分を誇りなさいと言われた。そんなために海外に行かせのではない。行かせてやった私たちにも失礼だと母は更に加えた。彼女たちの言うことは正しい。ごもっともだ。

でもね、うまく説明ができない気持ちがあるのよ。時にポジティブであること、自分に寛容であることを誰かに強いられると泣きそうになってしまう。倫理的で優しい言葉に心が動くからではない。不完全な状態の自分を人の目に晒すのは思ったより怖いのよ。まだ準備ができていない場に無理に押し出されることが怖くて涙が出るのかもしれない。