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よりクリエイティブに、よりアクティブにさせる困難

新型コロナウイルスに世界中が苦しみ始めて1年半以上たった今、多くの人がコロナの蔓延を恨み、一刻も早い終息を願っている。
しかし、本当にコロナはただの悪者なのか。私たちにネガティブなものしかもたらさないのか。主に東アフリカで活動する日本人から、コロナについてポジティブにとらえる方法を学ぶ。

第3回目は小川真吾さん。
小川さんは2001年に創設された、認定NPO法人テラ・ルネッサンスの理事長であり、「すべての生命が安心して生活できる社会の実現」をビジョンとして、現在はウガンダ、ブルンジ、コンゴ民主共和国で活動している。
学生時代、憧れのマザーテレサの施設でボランティアをするためにカルカッタに渡航。しかし小川さんがインドに到着したその前日にマザーがなくなったことを知る。「これは何かあるのでは」と運命を感じ、国際協力への道へ進むことに。大学卒業後は、青年海外協力隊員(現 JICA協力隊)としてハンガリーにて野球を教え、カナダ留学やバックパッカーなど様々な海外経験を経て、上記団体に所属し今に至る。

小川さんの特徴としては、小川さん自身はコロナに影響を受けていない、といっても過言ではないということだ。むしろ逆境に燃え、出口が見えないほど力を発揮するタイプのため、コロナ禍はある意味やりがいのある時期・状況だという。

コロナがアフリカでも猛威をふるいはじめると、紛争の被害者や貧困層など、社会的に脆弱な人々の生活が本当に大変で、命の危機に直面している人も多いということが可視化された。その日の稼ぎで毎日を生きていた人々は、一日の食べ物さえ手に入れるのが困難になり、医療体制の整っていない病院はすぐにコロナの患者で溢れかえり治療も不十分である。また、世界がコロナで一色になっている中、予防可能だがアフリカで人々を苦しめている、マラリアや下痢で亡くなる人は変わらず多く、むしろこれらの病気のほうが多くの死者を生み出している。

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隔離施設にて支援物資の準備をする様子

こういった既存の問題の「可視化」を小川さんはポジティブに捉えるべきことだと話す。これまでは多くの人々にとって、問題が見えていない、もしくは知っていてもその人にとって他人事であった。しかしコロナによって、社会の様々な問題を、その中でも社会的に脆弱な人が特に影響を受けていることに、気付く人が増えた。日本においても、子どもの貧困や外国人技能実習生の問題はより明確に認識されたはずだ。また世界はつながっており、世界のどこかで起こった出来事は、グローバルに巡って自分とも関係があることになるのだと改めて気づかされた。小川さんは、「この気づきを教訓にしなければならない」と強く語る。
「コロナが収束した時に、『終わって良かった』で済ませてはいけない。コロナは『誰一人取り残さない社会の実現』やSDGs、人間の安全保障の意味をもう一度考え直すきっかけだ。これらの学びや気づきを活かし、浮き彫りになった問題に対して行動を起こす必要がある」

また小川さんは自分の存在意義を改めて感じたこともコロナ禍ならではだ、と話す。
一番虐げられている人たちが身近にいて、自分は彼ら彼女らに対して何か出来る立場にある。この環境下において、自分の力が試されており、それを発揮できる幸せとワクワクを感じているそうだ。このことが小川さんにとってはとても良かったことであり、おかげでよりアクティブに活動できたという。例えば、医者の多くは人の命を救いたいという想いでその職に就く。しかし、夢が叶い毎日仕事をこなしていると、それが当たり前のルーティンにまってしまう。だが多くの人がコロナに苦しむ今、自分が役に立っていると強く感じ、自分の存在意義を確かめられている医者は多いのではないだろうか。これはNGO業界も同様だ。この業界で働く人々は、何かしら社会のために役に立ちたいと思っており、そんな彼ら彼女らにとって、コロナ禍はやりがいのある時期だ。小川さん自身も「この仕事をやりたかったんだ」と改めて気づいた。mustではなくwantを大切にしている小川さん。何事も使命感ではなく、自分がやりたいと思う気持ちになって動く必要があるという。そしてNGO職員としてのこの仕事は、まさにwantで常に働ける、言うなれば生活の一部である。またこの点に関して小川さんは、コロナでリモートワークになったことは、mustをwantに変えやすい状況を生み出したのでは、とも話す。オフィスで働くと、周りの目があるため自由に仕事が出来ないが、家であれば、スケジュールも働く環境も自由に調整できる、自発的な仕事スタイルとなる。これによって、強制的に働かされているのではなく、自主的に働こうと思える状況を生み出せる。この点もコロナがもたらしたメリットだと小川さんは考えているそうだ。

表紙 他、使えそうなイメージ写真00019

受益者を訪問した先にて子どもと仲良く写真撮影

小川さんはアフリカで16年生活しているため、「正直日本人とはデフォルトが違ってしまっている」と苦笑いしていた。ウガンダやコンゴでの紛争の影響で、苦しい生活を送る方々と寄り添って生きてきた小川さんにとって、コロナは大した事象ではないのだ。しかし、コロナが既存の問題をより大きくしていることには変わりはない。その状況をポジティブにとらえ、世界を混乱させてウガンダやコンゴ、ブルンジでも人々を追い込んでいる困難に対し、wantの気持ちで立ち向かっていくことで、小川さんはコロナ禍でも変わらず、苦しむ人々と共に戦っている。


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