マーケティングについて学ぶ⑨

●流通チャネル

流通チャネルとは、企業の製品を顧客のもとへ届ける役割を担う流通業者全般のことを指します。良い製品があっても、それが顧客の元へ届かなければ全く意味がありません。

流通チャネルには3つの種類があり、直接流通、間接流通、マーケティングチャネルです。直接流通とは、インターネットや新聞、雑誌、テレビなどメディアを介した通信販売や直営店、販売員による直接訪問の販売などがあります。コミュニケーションや配送が迅速かつ正確に行えるというメリットがあります。間接流通とは、生産者と消費者の間に流通業者が介在する流通です。取引の合理化や広範囲に大量に製品を販売することができます。マーケティングチャネルとは、生産者が卸売業者や小売業者のような流通業者を組織化したチャネルのことです。

誰でも1度は聞いたことがあると思うチャネルワードに、小売と卸売があります。それぞれ外部業者が行っている流通形態ですが、小売業者の最も重要な機能は集客です。また、最終消費者と直接取引をするので何がよく売れるのか、どういう陳列をすればよく売れるのかを知っており、こういった情報は生産者にとっては価値のあるものです。そのため、生産者に対して強い影響力を持っています。卸売業者は、生産者と小売業者の接触回数を減らし、取引を合理化する役割があります。生産者と小売業者両者から圧力をかけられます。生産者側からすると、買い手の数が増えるにつれて1業者毎の取引は煩雑になります。小売り側も同様の問題が発生します。そのため、卸売業者が間に入ることにより、両社にとって都合よく取引が可能となります。

私自身もとある小売店で5年間働いていた経験があり、数種類のメーカーとの取引をしていました。各メーカーに発注をかけることもあるのですが、ほぼ全てのメーカー在庫を保有している商社から発注をかけることがほとんどでした。卸売業者が中間に入ることでマージンが発生し、単価が高くなるため何のために商社が存在しているのか疑問でしたが、取引の合理化という観点からみると必要なことだと気づきました。とはいえ、小売りや生産者の努力次第では卸売は不必要ですね。生産者は自身で取引する小売業者を増やすことは可能ですし、専門の部署を作ることで業務の集約化も可能です。小売業者も各メーカーから発注すれば良いだけの話です。しかしながら未だに卸売が存在するのは、昔からの付き合いということを教えてもらったことがあります。長年やってきている流通形態であり、担当の人とのつながりも自然と長くなります。卸売を撤廃することでその人は仕事がなくなるため、収入もなくなります。そんな状況にはしてあげたくないという感情が働くのでしょう。

・チャネルの段階数

1.0段階チャネル
  製造メーカーが消費者に直接販売する形態のことを指します。販売活動をコントロールしやすく、他社の製品に気を使わなくてよいという特徴の他、高額な商品や説明が難しい商品で多い形態です。

2.1段階チャネル
  製造メーカーと消費者の間に流通業者が1つだけ介在する形態です。実店舗が必要な商品で、最もシンプルなチャネル形態です。

3.2段階チャネル
  製造メーカーと小売業者の間に卸売業者が介在する形態です。商品点数が多く、単価が低い商品で一般的です。卸売業者は多くの取引先があるため、製造メーカー側としては製品を広範囲に行き渡らせたい場合、2段階チャネル以上の流通形態をとることが合理的です。

4.3段階チャネル
  製造メーカーと小売業者の間に複数の卸売業者が介在する形態です。

・流通チャネルの幅を決定する3つの政策

1.開放的チャネル政策
 取引先の流通業者を限定せず、広範囲に渡る業者に流通させる政策です。大量に製品を流通させたい場合、幅広い販売機会を得たい場合に有効です。製造メーカーとしては、流通業者の管理が重要であり、マネジメントを怠ると同じ商品を扱う流通業者間で競争が起き、販売価格を極端に下げられ、ブランドイメージを損なうこともあります。

2.排他的チャネル政策
 高級ブランド品のようなブランドイメージをコントロールしたい商品を扱う場合や、自動車やPCのような購入時に消費者に専門的な説明が求められるような商品を扱う場合に用いられます。チャネルを限定して流通させるため、製造メーカーのマーケティングや販売戦略を浸透させつつコントロールできるというメリットがある一方で、販売機会を逃すというリスクもあります。

3.選択的チャネル政策
 開放的、排他的チャネルの中間の政策です。製造メーカーがチャネルの幅をある程度限定し、チャネルメンバーに優先して販売します。優遇することで協力的な関係を構築し、自社製品を優先的に消費者に推奨してもらったり、便宜を図ってもらうことが可能です。業者を選定する条件には、メーカーへの協力度、競合製品の割合、立地条件などがあります。

・流通チャネル構築の6つのプロセス

1.ターゲット市場・自社経営資源の把握
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2.チャネルの長さの決定
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3.チャネルの幅・排他性の決定
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4.展開エリアの決定
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5.チャネルメンバーの選定
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6.チャネルの動機付け政策の決定

 チャネルの長さの決定では、「総販売量」「製品特性」「製品単価」「顧客の地理的条件(集中・分散)」「顧客規模」「顧客一人あたりの取引量」などを考慮しなければなりません。製品単価が安く顧客が地理的に分散している場合には、直販という選択は非経済的です。製品単価が高くターゲット市場が地理的に集中している場合には、直販が有効になることもあります。

 流通チャネルの幅を決める際には、「顧客の利便性」と「流通業者への配慮」を天秤にかけることになります。

 動機づけとは、流通業者がその企業の製品をもっと売りたいと思えるようなモチベーションアップのための手法です。具体的な方法には「流通業者へのマージン」「量によるディスカウント」「その他インセンティブ」の3つのがあります。流通業者へのマージンは、分担してもらいたい機能が増えるほど、あるいはリスクが大きくなるほど高くなります。在庫維持や現場での販売、配送といった機能までも負担してもらう場合には、流通業者に対して相応のマージンを支払わなければなりません。量によるディスカウントは、
一回の注文で大量の商品を仕入れる業者に対して、1個あたりの単価を安く提供するのが量によるディスカウントです。全国に展開する大手小売店の場合には、独自の販路や棚スペースを保有することで莫大なディスカウントを得ています。その他のインセンティブとしては、小売店を対象としたコンテストなどがあります。期間や製品ごとに売上・販売数を競わせ、販売を促進します。商品には各種商品券や旅行などがあり、とくに家族経営の小売店などでは効果があるとされています。

自社がどのような流通活動を行うべきか検討するために、流通チャネル構築時に考慮したい要因が6つあります。人口動態、製品特性、顧客の購入スタイル、経済性(投資額、維持コスト)、競合の流通チャネル政策、自社のブランド力・製品ライン・サービス競争力です。まず、人口動態では、年齢、性別、職業など、どのような顧客がどのくらいいるのかを把握します。製品特性では、製品のイメージ、使用方法、価格などの要素を検討します。経済性では、流通チャネルへの投資や維持コストを検討します。競合の流通チャネル政策では、顧客に対してより影響力のあるチャネルを使うことで、競合に打ち勝つ戦略を構築することができます。自社のブランド力・製品ライン・サービスの競争力では、ブランド力があり、製品ラインやサービスにも競争力があれば、流通チャネルへの交渉力は高まります。

・ハイブリッドチャネル

 チャネルやニーズの多様化に伴い、ターゲット層に合わせて流通を変えることをハイブリットチャネルといいます。例えば、若年層であればスマホサイト、動画サイトからECサイトへ誘導することが有効であると考えられます。主婦層であれば量販店での陳列販売が有効です。インターネット、ディーラー、小売店など、複数の流通チャネルで合理的に目的とする消費者セグメントにアプローチします。1つあるいは複数のセグメントに対して一つの流通チャネルを利用するのではなく、複数の流通チャネルを確保しておくことで、リスクテイクや販売強化が可能となります。

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