ティラノゲームフェス2024お薦め作品紹介④イヤホンをつけて遊びたくなる怖い作品
はじめに
今年もフリーノベルゲームのプラットフォーム「ノベルゲームコレクション」の祭典「ティラノゲームフェス2024」が開催中です!私もスポンサーになり、いよいよここからやるぞ!という気分です。ノベコレへの支援にもなりますし、フェスをより楽しめる仕掛けも多々ありますのでよければ皆様もスポンサーになることをご検討ください。今年もお気に入り作品を紹介できるのが楽しみです。
去年に引き続き私がここまで遊んだフェス参加作品の中から特にお薦めしたい作品を紹介しています!ぜひこれを期に皆様にも個人制作ノベルゲームの世界に触れていただければと思います。
去年に引き続き5回の連続記事で3~4作の作品を紹介しています。どれもこれもお薦めの作品なのでぜひ遊んでいただければと思います…!
去年の作品紹介記事はこちらから!
各記事の紹介・予告
イヤホンをつけて遊びたくなる怖い作品(今回)
今回は第4回「イヤホンをつけて遊びたくなる怖い作品」になります!
ノベルゲームにおいてホラーは常に一大ジャンルです。秋~冬にかけて行われるティラノフェスですが、夏に限らず様々な恐怖を味わっていきましょう!
個人的にホラーとは演出や表現に込めた技術のショーケースだと思っています。恐怖と読み応えを生み出すためのクリエイターたちの工夫の髄をぜひ味わってください。
怖い作品4選
1:海鳥野ガクの精神鑑定録
精神科医である主人公が母親を刺し少年の治療にあたる、その過程で神話的現象に直面し、そこからの生還を目指すアドベンチャーゲームとなります。対話・探索・選択と様々なシチュエーションがあり、ゲームとしてもとても楽しめます。クトゥルフ神話ADVを謳う通り「クトゥルフ神話」らしい「神話生物」も絡みながら物語が進んでいきます。
今作は「恐怖を全力で楽しむ」ことができる作品です。先ほど言った「技術のショーケース」を堪能できる作品と言えるでしょう。
ゲーム開始時のテロップを皮切りに端から端までほれぼれするような美しいドット絵と、場面・状況にぴったり合っているSEがものすごく没入感を煽ってくれます。ドット絵のアドベンチャーゲームは最高というのは皆様知っての通りですが、それを強く味合わせてくれます。今作では特にドット絵がちょっとしたモーションで動くのが本当に心地よくて、「あーーーこの作品楽しい!!」となります。まずこのモーションの気持ちよさを見るために遊んでほしいです。
ストーリーは王道のホラーとなっています。導入はちょっとした出来事や違和感があるだけですが、そこから不穏な出来事が少しずつ溜まっていきます。、日を追うごとに少しずつ事態が進行し、そこで生まれた不安が少しずつ広まり具現化していくのは「あー来た!」となること請け合いです。その感じが本当にクラシックなクトゥルフっぽいし、Jホラーらしくもあります。作品の中で向き合うことになる患者の少年はかわいらしくも変に浮ついている感じが独特の不安を与えてきます。そして、その不安が的中、あるいはこちらの期待通りに膨らみ、そしてちゃんとと弾けてこちらを怖がらせてくれます。いい短編から中編のホラー映画を見た時のような満足感が得られる作品です。
物語を読み進めたり考察するための資料も美しく整理されていたりと、探索のため、推理・考察のため、何よりそして怖がってもらうため細部まで工夫が込められている、いい意味で「恐怖を楽しませてくれる」エンタメホラー作品となっています
。
いや怖いところはほんとに怖いんですけどね!
そして、何よりあのエンディングが「あークトゥルフだーーー!」って感じで本当に好きだったので、ぜひ見て欲しいです。
あと余談ですが看護師のグラフィックが好きです。
2:自己浸食Vtuber
突然送られてきた女性アバターでVtuberを始めることになり、それをきっかけにとある人物との因縁、そして過ちに向き合うことになる短編ホラーゲームになります。「自己浸食」とタイトルにあるように、いわゆる「ガワ」と言われるアバターとアクターである主人公の境目が活動の中でぐらついたり、そこから主人公の抱える問題や、Vtuberという世界が見え隠れしていきます。「もう一人の自分に乗っ取られる」というホラーで使われる題材にVtuberという現代的な要素を合わせた作品です。
私もVtuberをしているので、ホラー的な現象とはまた別に「アバターに浸食される感覚」には覚えがあります。正直日向日影として過ごす方が充実していますし、なんだったらもう24時間365日日向日影として生きていけたらと思ってしまうこともあります。そんな思いを持つ自分が今作を遊ぶと、ホラー展開と関係なく「わかるなぁ…」「そういうコメント嬉しいよなぁ」「その感覚あるよなぁ…」となってしまいます。もちろん、Vtuberをしていない方にも、今作の主人公の葛藤やそのきっかけとなる真相は十分怖がりながら楽しめるでしょう。
サムネイルからも感じるかと思いますが、情念と炎が渦巻くかのように感じるモノクロのグラフィックがあらゆる場面で非常に印象的で、圧倒されるような絵の「リキ」を感じます。。その絵柄で女性アバターによる楽しい配信の雰囲気が描かれるのは非常に不思議で、なんともいえない怖さを感じるのではないでしょうか。
しかし、もちろんここでは申し上げられませんが今作はかなり予想を超えた真相が待っている作品です。その途中までの怖さと共に、切なさとさわやかな感動を感じるエンディングでした。ぜひヒントを見ながらでもいいのであのエンディングにたどりついてもらえればと思います。
3:おとぎ人形劇 Hansel's Gretel
有名なおとぎ話である「ヘンゼルとグレーテル」をモチーフとしたホラーノベルゲームになります。
今作はまずその「Hensel’s Gretel」というタイトルに強烈に惹きつけられました。「ヘンゼル『の』グレーテル」というタイトルに「ああ、これは絶対まずいやつ(褒め言葉)」と思ったのを覚えています。
実際に遊ぶととにかく演出が凝りに凝っていることに驚かされます。
人形劇をモチーフとした舞台はすごく魅力的ですし、そこにいるヘンゼルとグレーテルの人形をぜひその糸の伸び方回り方絡み方ひとつまでじっくりと見て欲しいです。また、人形劇の「語り」という作品の形式、BGM・SEの使い方、探索箇所の増え方と減り方、一つ一つの出てくる描写、情報の出し方の順番、全てが丁寧かつ細やか、そして恐ろしい物語を語っています。
特に登場人物のセリフが全て絶妙です。はっきりと情報やメッセージを伝えてはいるものの、同時にそこに感情の動きや含みが多重に含まれています。登場人物の中には明確にヘンゼルとグレーテルにひどいことをする人物も、助ける人物もいるのですが、かといって前者=悪、後者=善と言い切ることはできないなと思わされるほど、登場人物全員の多面性と葛藤が描かれています。とはいえ同時にヘンゼルとグレーテルに感情移入を起こし、そしてあの結末へプレイヤーを導くような感情のドライブを起こしてくれます。
今作は「あべこべ」がキーワードとなっています。ぜひ、この四文字を覚えたまま、物語に込められた無数の「あべこべ」に出会い、そしてトゥルーエンドの最後に出会う最大の「あべこべ」に直面してもらいたいです。まじでショックで声が出ました…。
ちなみに「あべこべ」以外にも概要欄には覚えておくとより物語と味わえる言葉が散らばめられているのでぜひチェックしてみてください。それぐらい隅から隅まで工夫が込められた作品です。
4:ねくすとまんでー
朝三時に目が覚めてしまい、そこから三時間何かをして暇をつぶすノベルゲームになります。部屋の各所にあるものをクリックするとそれに関するちょっとした内容を読むことができて、そこから日菜の日常や、会社に行きたくない思いを知ることができます。その内容は非常に日常的で共感できる人も多いでしょう。
また、イラストの色合いが全体に未明のあの薄明るいけどまだ暗さがベースにある感じが再現されていて、早く起き過ぎた朝のあのけだるさが映像や雰囲気に現れていて「わかるなー」って感じになりました。
超短編で、語るというよりとにかく遊んでほしい作品です。ちょっとした謎解き要素があり、そこにかなり驚く展開がありました。私は直前でそれを察した時に「あっ!」となり、非常にぞわっとしました。気づいた瞬間、もし自分がこれだったら…と思うとぞくっと来る怖さがありました。雰囲気がよく、その上で一発の驚きもある超短編らしい超短編で、短い時間で印象に残る体験ができそうな作品です。
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今回紹介した作品は全て実況をしています!
また2024年上半期のベストフリーゲーム10選+ベスト1記事を公開しています。ティラノフェス2024参加作品も多くありますのでぜひお読みください!