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P.V.L.日記 父子入院28日目 優先 

PVL(脳室周囲白質軟化症)から独歩をめざしリハビリ入院、
3歳児と父親が入院という名の合宿生活。
休日。午後から外出。

5月29日(日)

実に小学4年生の時以来の大阪城である。午後から外出許可をとって家族3人で大阪城まで歩いて行った。病院から約徒歩40分。微妙な距離感ではあるが運動不足になる入院生活の補填になってよい。小学4年生のバス遠足で地元の奈良から来た記憶はあるが、記念写真の他には何ひとつ思い出せないし、35年も前のことなのでほぼ初めての大阪城と言っても過言ではない。

「稼ぐ公園」化された大阪城公園は家族連れでにぎわっていた。個人的には公園は「公園」であって欲しいと思う。我々は城内を回って往復できる機関車(正確にはトラクターみたいな先頭車両がゆっくり牽引しているロードトレイン)に乗って天守閣まで行くことにした。これもまた「稼ぐ公園」の恩恵ではある。最初はきょとんとしていた息子も、慣れてくると大興奮。戻りの機関車では身を乗り出して風をきっていた。

機関車は障がい者手帳を提示すると本人は3歳以下で無料。介助者1名は100円に割引。折りたたみ不可のバギーであることを伝えると、次の機関車に既に車椅子席の予約が入っていないかを無線で確認し、最後部の車椅子席に案内してくれた。スロープが降りて手押しで乗車できる。ただ、この席にはスタッフ1名も乗車するため介助者しか乗れず私は1列前の席に。

大阪城の入口までは、少し傾斜がきついところがあるもののスロープで辿り着くことができる。階段を利用できない人のために別の入口に案内され検温と消毒をした後、エレベーター乗り場に誘導(チケットはここでも手帳の割引で本人と介助者は無料)エレベーターで天守閣の1Fまで通してくれた。屋内までは出口用のスロープを逆走しての入場になるが、係員が先導して案内してくれるので安心だ。

展望台までのエレベーターは優先エレベーターで8階まで一旦登り、下の階の展示を観るときは優先ボタンを3回押すと係員がエレベーターを上げてくれる。丁寧な対応でありがたい。しかし、噂には聞いていたが、お城というよりビルだな。各階は博物館だし市民の寄付金で再建されたので当時の情緒はほぼない。これ、外国人観光客は登ってみてがっかりしないのだろうか。日本人がエジプトのピラミッドを観にいったらすぐ隣に市街地があってびっくりするようなものか。(ちがうか)

それはさておき、この1ヶ月を息子はどれだけ覚えているだろうか。大人になったとき、私の大阪城遠足の記憶のように、ほぼ記憶にないのかも知れない。仕事、幼稚園、連休、様々なことを二の次にして取り組んだ親子入院でのリハビリも明日で一旦は終わる。来年も入院するとすれば今度が付き添いなしの単独入院かも知れない。私も息子のことをどれだけ覚えているのだろうか。0歳児の頃の記憶はすでに曖昧だ。3歳10ヶ月の息子を抱っこした重み、肌の弾力、細い筋肉のない脹らはぎ、髪の匂い、「おれ」「ぼく」「わたし」の入り混じった会話などなど。おそらく私の両親も3歳の私に感じていたに違いない感触と感情をいつまでも忘れないでおきたい。

夏日の「家族遠足」で父子ともに輪をかけて汗臭い。妻を病院の玄関で見送り、昨日に引き続き銭湯に行くことにした。おや?しまった、財布に現金が全くない。私はそのことをすっかり忘れていた。(続く)


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