取った取られたじゃ無い

もう15年以上前のことですが見ず知らずの方から、こんなご相談を頂いたことがありました。まあご相談と言うよりも一方的な要望だったのですが。
要約すると「被験者を取られました。取り返して欲しいです。僕の被験者なのに」との事。どう言うことなのでしょう。
どうやら催眠のかかりの良い被験者さんと出会うことが出来てしばらく催眠セッションをしていたのでしょう。ところが被験者さんがいつしかその方以外の催眠術師と関わるようになり、やがてそちら側に行ってしまったようです。

そもそも取られたと言う感覚が理解できない

これはなんとも嫌な気分になりました。
何故「僕の被験者」なのでしょう。例え有償で引き受けていた案件だとしてもです。
まずその被験者さんは他の術師に催眠をかけて貰うことを望んだのです。
その上で戻って来なかったのです。
どちらの術師も、ではありますが、そこにはどんな関わりで何を目標に催眠セッションを行なっていたのでしょう。
送られて来た文章を読む限りではどう考えても目標目的を持たず只々催眠術をかけたいと云う気持ちだけだったように思えます。

かけ方だけ覚えたのでは?

その方がすべきだったのは、まず他者の気持ちに立つことを学ぶ事だったのだと思います。事実、このようなメールを自己紹介もなしに送ってくるような事をしているわけですから。
おそらく催眠に興味を持って「自分も催眠術が出来るようになりたい」という気持ちで催眠を勉強したのでしょう。
そのようにかけ方だけを覚えて催眠誘導にチャレンジする方は少なくありません。ですがそれは大きな誤りです。
なぜならば催眠に大切なのは術師のバックボーンだからなのです。
また往々にしてそう言う方の催眠暗示の「読み方」は変な抑揚である事が多いですが、私からすると結構気持ち悪いです。

催眠で何がしたいのか?自分の軸を持たないと信頼は得られない

さて件の氏は催眠で何をしたかったのでしょうか。
あまりにも身勝手な相談内容である上、無償案件になりそうな予感がしたので途中でやり取りを中止しました。
その為、詳細については経験に基づく想像にしかなりませんが、結局催眠で他者を思い通りにしたかっただけなのでは?としか思えないのです。

ワンウェイ催眠術

だいたい想像付くのですが被験者様に引かれてしまう術師のほとんどが正しい意思の疎通が出来ていません。考えられる原因としては何度も書いていますが「かけかたしか学んでいない」からです。ですからまるでコミュニケーションが取れていないにもかかわらず一方的なセッションを行っていたのではないでしょうか。
相手の言葉を聞いても理解できない、したがって自分の試したいことしか出来ないしそれで良いと云う意識になってしまったのではないかと思っています。

なぜ被験者は他の術師に行ってしまったか?

そもそもここですよね。
件の相談者がどこでその被催眠性の高い被験者様と知り合えたのか。
状況からしてオフ会ましてや日常の生活の中での出会いなどではありませんよね。
そう考えると一番可能性の高いのがインターネットでしょうね。おそらくSNSだと思いますよ。
としたら被験者さんだってアカウント持っているし催眠に興味あるような投稿もするでしょう。また催眠が出来る方にアプローチしたりアプローチされたりだってあるわけですが・・・・・・
ここで改めて思うのが何で「僕の被験者」なんでしょう。
取られたわけでも何でもないしそもそも他の人に行かないようにしようという考えがおかしくて、更に取られたと思ったらプロに頼もうとするってどれだけたった一人のネットで出会った被験者さんに執着しているのでしょうか。

なぜ執着してしまったのか

自信が無く、また新たにチャレンジや学ぼうと云う向上心に欠ける方が被験者様の被催眠性に付け込んでしまうと、こうなりがちです。
「僕の被験者なのに」
この一言が全てを物語っています。
確かにそのような修行の足りない方の催眠にかかって貰えたという事は相当な高い被催眠性をお持ちだったのかと思います。
向上心の無い術師にとってはお宝見つけたようなものでしょうね。
正直言って感心できません。
ましてや執着心丸出しで「どうにかして取り返そう」だなんてまるで催眠ストーカーです。そして被験者様はそんな相談者の事を、自信が執着しているのと同等あるいはそれ以上に思って下さっていたのでしょうか。否です。

そもそも執着する割に大切にしていないと感じました。
それではいけませんね。それはそうでしょう、まるで修行が足りず、被催眠性に付け込んだ催眠を行っていたからに他なりません。

大切な催眠のスタンス 自分は何者?どんな催眠術師なの?

まずは自分の芯の無さを振り返るべきでしたね。
そもそもREDに相談する時にいきなり用件から入って来ましたが、それこそが全てを物語っています。きっと礼に欠いた人だったのだと思います。
礼とは敬語が使えれば良いわけでは無いのです。
相手の事情、都合、タイミング等さまざまな背景を考慮配慮して関わることが大事なのです。

この記事から得る学び

当然こんな事を書いたのには理由があります。
私が存じ上げている方でこのような考えの方はほとんどいませんが、実際には同じ体験は無いにせよ考え方として身に覚えのある方も少なくはないと思うのです。
ですがこのような事で催眠術自体が甘く安く見積もられ、或いは舐められて格の低い低俗な遊びになり下がってしまうのは忍びないのです。
催眠をかける事は誰にでも出来ますが、催眠でやってよい事は術師の総合的なレベルによって変わって来るのです。
ライトに楽しむのであればそれも良し、学術的に学ぶのであればより高度な知識と経験を、自分の行いたい事と身の丈に合った催眠を多くの人に楽しんで欲しいと思っています。
そしてその為のバックボーンをしっかり持つこと、正しい催眠が普及し誤った考えの方が思い直し学んでくれる事を望んでいます。

ワンウェイ催眠にならない為に

これから催眠術を学ぼうあるいは催眠術がどうもうまくいかないと感じている人は、ぜひとも私の記事を読んで参考になさってください。みなさんが見落としがちな事が書かれています。無料記事を沢山書いているのはそう言った理由です。
既に催眠施術の経験がある方は被験者様との会話を大切にして下さい。
言葉は文字ではありません。言葉には裏も表もあり表情態度タイミング、背景などなど様々な情報から読み取る訓練をすると良いでしょう。

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