いつかのパリ

もう10年近く前のこと。

子どもが1歳をすぎたあたりで、どうしようもなく海外に行きたくなってしまった。2歳未満は航空券が無料、という情報に「今しかない」と思った。

ちらりと覗いた航空券サイトで、パリ行きの飛行機のチケットが激安だった。2月のパリ。寒いだろうけれど、暖かい焼き栗を食べたり、焼き立てのクレープ、バゲットをかじったらさぞかしおいしかろう。。

そんな思いで気がついたら予約してしまった。

ムーラン・ルージュ近くのアパルトマンタイプのホテル。
(意外とあやしげなおみせが多くてびっくり)
子供がいるからキッチン付きにすれば自分でご飯を作り、食費も節約できるね、ということで。

スーパーでお肉や卵を買って調理したり、日本では手が出ない高級チーズも安く買えるので、存分に食べて。
あとはフランスパンに目覚めた息子のために毎日違うパン屋さんでバゲットを買って家族3人でわける。フランスのパン屋さんはお菓子も売っているので、そこでマカロンやケーキも買って、毎日食べて、、え、食べた思い出ばかり?


よちよち歩きで、友達がくれたファミリアのブルーグレーのポンチョを着た息子は、多分一番可愛らしい時期だった。
というわけで、フランス滞在中、いたるところで大人気。ベルサイユ宮殿ではスペインから来た陽気な一族に可愛がってもらいながら園内バスに乗ったのもいい思い出。
百貨店でアラブの王族みたいな一族にも囲まれ、可愛がられていた。子供を連れていることで、たくさんの人と関わった旅になった気がする。

とにかくお茶することが大好きなので、いろんなカフェに行ったけど、一番「来てよかった」と思ったのは、カルチェ・ラタンにあるグランド・モスケ・ド・パリ。とにかくアラビア風の内装は色合いが美しく、雰囲気が良い。
店員さんは寡黙だけど、街中のカフェで感じたような東洋人への視線、みたいなものがなくて、心落ち着いて過ごせた。ちょうど子どもがお昼寝の時間だったのもよかったのかもしれないけど。

甘いミントティーと、初めてみるアラビアンスイーツ。もう一度行きたいな。


一緒に乗った観覧車、公園の噴水をびっくりして眺めていた顔。ベルサイユ宮殿の音声案内ガイドを電話だと思って耳に当てている姿。オペラ座の見学のとき、抱っこ紐の中で眠っていた子どもの頭の丸さ。(あのとき声をかけられた日本からきたという青年は今頃どうしているのだろう。)

今文字にしていたら、様々な記憶が蘇ってきた。モンマルトルの丘で帰りのトラムが止まってしまい、ベビーカーで走り降りた非常用の階段。他に人がいなかったので、夫が本気を出してすごいスピードで駆け下りた。キャッキャと喜んでいた声をおもいだす。

遠い思い出になってしまったし、どんな日程で何をしたのか順序立てては思い出せないのに、部分部分はこんなにも鮮明で。

こうして思い返すことで楽しかった思い出が蘇り、心が満たされていく。


またいつか自由に旅行ができる日が来たら、町中を歩き回って、美味しいパン食べて、今度は市場でも買い物して美味しいもの作ってみたい。
できたら南フランスにも足を伸ばして太陽の光と空気の違いを感じたい。

想像の世界では私はいつも自由に旅立てる。




新しい楽しいことを探すための書籍代、記事を書くときのコーヒー代にします^^