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恨んでる、だから都合よく使う

化粧が嫌いだ。
整形をするか悩んでいた頃、あたしはまずダイエットをした。MAX13キロ痩せた。摂食障害気味だったが、痩せた自分を好きになった。
それでもブスだから次は化粧に力を入れた。毎日美容に関する情報をチェックした。どの色が似合うか、どんな化粧なら可愛く見えるか自分なりに研究した。大学生でお金はなかったが、3000円もするアイプチを購入し、まぶたに塗ってそれをドライヤーで乾かした。失敗すればやり直し。毎朝アイプチに30分以上はかけていた。
でもブスだった。ダイエットは意味を成したが、あたしは化粧で可愛くなることはできない顔立ちであった。化粧が嫌いになった。

整形をして二重まぶたを手に入れた。埋没と呼ばれる比較的安価な整形だけでは二重になれない目をしていたので、二重になるために2度手術をした。執刀医は調べに調べた腕のいい医者だった。あたしは理想の目を手に入れた。
毎朝顔にドライヤーを当てなくてよくなった。あの惨めな時間が無くなったことだけでも、金額以上の価値を感じた。せっかく引いたアイラインが奥二重で隠れることもない、アイシャドウの輝きを楽しむことができる。目の上の1本のシワは、あたしの人生を変えた。少し、化粧が好きになった。
しかし、顔の下半分はそうもいかない。顔の中央に鎮座する豚のような鼻はメンテナンスが必要だから安易にはいじれないし、鼻の下が長くサル顔なので短縮手術をしたが、大した変化はなかった。

世の中の女性がどのくらい化粧に興味があるかは知らないが、あたしは化粧品を買わない方だと思う。
化粧直しが嫌いだからファンデーションはデパートで購入しているが、毎回「前回と同じのください」と雑に購入しているし、その他の化粧品は人に勧められたものを薬局で購入し、見直しをすることもない。とりあえず同じものを買っている。アイシャドウも単色を2つ持っているだけ。

そのあたしが昨日、口紅を買った。
昨日は友達と遊んでいた。彼女が急に「リップ見にいかへん?」と言った。
「え、いきたい!」
「やんな!昨日ストーリーでウェディングフォトのリップ探してるって言ってたやん、あたしもちょうどリップ欲しいと思っててん!」
彼女はあたしが化粧に興味がないことを知っている。なのに誘ってくれたのが嬉しかった。

友達と百貨店のカウンターに行き、2人でタッチアップをしてもらった。
先に友達が似たような2色の赤色を試した。あたしには同じ色に見えるが、友達はその2色で真剣に悩んで、1本を購入していた。
「どのような色をお探しでしょうか」
店員さんに聞かれた。
「結婚写真を撮るので、似合う色を探しています。でも化粧が本当にわからなくて、似合えば何でもいいんですけど・・・」
カウンターに行くたびに「化粧が分からない」と素直に伝えている。
「え!ドレスはどんな色ですか?写真なら少し濃いめがいいと思うので・・・」
店員さんはいつだって親切に対応してくれる。しかしその日は、普段の何倍も親切だと思った。
何本か塗ってもらったが、結局あたしには色の違いが判らず、友達に決めてもらった。普段は買わない、赤っぽい色だった。

家に帰って、1人で口紅を塗ってみた。肌に馴染んでいる感じはしたが、やっぱり、化粧はいまいち分からない。でも可愛い見た目のリップスティックには気持ちが躍った。

ちなみに先日なくしたシャネルの口紅はカバンの奥から出てきた。今思い出したが、その口紅は彼のご両親に挨拶に行く際に買った。塗り直しする暇もないし、少しでも綺麗な嫁だと思われたかった。色はピンク。

あたしは化粧品をあまり買わないし、あまり分かっていないけれど、買う時にはそれなりの想いがあるのかもね。化粧は整形前のあたしを可愛くしてくれなかったから嫌い、だから特別な時はしっかり利用させてもらうね。


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