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最果ての地・尻屋崎で、たくましく愛らしい「寒立馬」に会おう

2つの海に囲まれた、本州最北東端の岬へ

本州最北端の半島、青森県・下北半島。その北東端は三角形のような形で突き出し、「尻屋崎」と呼ばれる雄大な自然が広がる岬です。尻屋崎があるのは、北西20km・南北36kmと細く長い東通村。北に津軽海峡、東に太平洋という2つの海に囲まれた、約65kmの沿岸が続く冷涼な地域です。

そして、最北東端である岬の先端に位置するのが、人気の観光名所でもある尻屋埼灯台。

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アクセスは、むつ市街から車で約30km。市内からのバスも運行しています。灯台へと続く尻屋崎道路は日本百名道にも数えられており、真っ青な海と草原が織りなす絶景シーサイドライン。大自然の中で伸びやかに道が続いていく様子には、思わず心奪われてしまいそうです。

ところが、さすがは本州の北の果て。昔からこのあたりは「難破岬」と呼ばれ、遭難船の多さから船乗りたちに恐れられていたとか。明治時代に入ると、イギリス人設計士によりここ尻屋崎で焼いたレンガを用いて灯台が建てられ、船の安全を確保できるようになりました。青い海と空に浮かぶようにくっきりとそびえる白亜の灯台は、レンガ造りの灯台としては日本一の高さと日本最大級の明るさを誇ります。

寒い季節には北国らしい清らかな景色が、夏には澄んだ海と青々とした草原のコントラストが広がる風光明媚な尻屋崎。夏~秋にかけてはイカ釣りの漁り火も美しいんですよ。

美しい非日常。「寒立馬」のいる景色

今回ご紹介するのは、最果ての地・尻屋崎の牧草地に放牧されている「寒立馬(かんだちめ)」という馬。広大な海のすぐ近くで馬が自由にのびのびと過ごす姿は、「ここ、本当に日本なの?」と疑いたくなるほど。まるで映画のワンシーンを観ているような、美しい非日常を感じられるかもしれません。

青森の厳冬にも負けることなく、たくましく生きる寒立馬。先ほどの尻屋崎道路でも、平然と横断したり立ち止まったりしている姿を見ることができるほど、自由気ままに過ごしています。海のそばで寝転ぶ無防備な様子も、よく目撃されているのだとか。

寒立馬の特徴は、寒さ厳しい冬でも乗り越えられるようなたくましい体格。足は短く胴が長い、ずんぐりとした体型が愛らしいですね。

一時は絶滅を危惧されていた寒立馬ですが、保護政策によって2020年には25頭まで頭数が増加。青森県天然記念物にも指定された、生きた歴史文化遺産でもあります。

青森の厳冬にも負けることなく、たくましく生きる寒立馬。先ほどの尻屋崎道路でも、平然と横断したり立ち止まったりしている姿を見ることができるほど、自由気ままに過ごしています。海のそばで寝転ぶ無防備な様子も、よく目撃されているのだとか。

寒立馬の特徴は、寒さ厳しい冬でも乗り越えられるようなたくましい体格。足は短く胴が長い、ずんぐりとした体型が愛らしいですね。

一時は絶滅を危惧されていた寒立馬ですが、保護政策によって2020年には25頭まで頭数が増加。青森県天然記念物にも指定された、生きた歴史文化遺産でもあります。

暮らしを共にしてきた、頼れるパートナー

寒立馬の歴史は、なんと約300年前まで遡ります。祖先は「田名部馬」。盛岡藩(南部藩)政時代から東通村の海岸地帯に放牧されていた馬であり、農耕馬として活躍した南部馬の子孫です。田名部馬は比較的小柄でありながらも寒さや粗食に耐え、持久力も抜群。明治~昭和にかけては外来種と交配し、軍用馬としても改良されてきた歴史があります。

こうした田名部馬のタフな特性は、農耕馬としてもぴったり。ここ尻屋の地域においてはさらに独自の農用馬として改良され、現在の寒立馬になりました。
寒立馬は、尻屋の過酷な環境での生活を支えてくれた、ここで暮らす人々のパートナーだったのです。

極寒の中、じっと春を待つ姿が由来

特徴的な名前は、やはり寒さと関係があります。かつてこの地方の狩人たちは、カモシカが厳しい冬をじっと耐え忍んでいる姿を「寒立」と呼んでいたとか。そんな強い姿がこの馬にも当てはまることから、昭和45年、当時の尻屋小学校長・岩佐勉氏が初めて「寒立馬」という言葉を短歌に登場させました。それ以前は、「野放馬」と呼ばれていたそうですよ。
雪の中からわずかな草を探し、強風に耐えながらも力強く立ち尽くす姿は、自然界の厳しさや生きる強さを教えてくれるようです

無防備さも魅力。愛らしい姿に癒やされよう

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厳冬や雪を思わせる寒立馬ですが、夏には穏やかな姿が見られます。夏の青森に寒立馬に会いに行くという、意外性たっぷりの爽やかでのどかな旅はいかがでしょうか。尻屋崎の豊かな自然に抱かれて、気ままな寒立馬の姿を間近に楽しめば、きっと心から癒やされることでしょう。

※寒立馬の詳しい開放時期や時間などは、青森県の観光情報サイトで事前にご確認ください。
https://www.aptinet.jp/Detail_display_00000049.html

記者:Maiko Harada  

兵庫県神戸市出身・在住。関西の出版社にて雑誌編集者として勤務後、2017年にフリーランスの編集者・ライターとして独立。企業や商業施設をメインに制作物の編集・ライティングやPRにたずさわるほか、雑誌などで人物取材や店取材なども手がける。好物は白米と佃煮。大切にしているのは、中庸な生き方、心地よさ、感謝と尊敬。

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