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#303 ケーススタディ:アカデミー賞ウィル・スミスの平手打ち事件を再考

ウィル・スミスのアカデミー賞平手打ち事件。

日本人の多くは「暴力はいけないけど、叩いた気持ちはわかる」「両方とも悪い」

忠臣蔵が好きな国民だからね。

力道山も耐えて耐えて、最後にカラテチョップでやっつけるパターン。

「気の利いた言葉で返せば良かった」ってちょっといい子ちゃん意見。そりゃできないでしょ。

アメリカではウィル・スミスに厳しい意見が多いことに「意外」と思ったのではないでしょうか。

アメリカでは暴力やセクシャルなシーンが普通だと思っている人が多いけど、それはR指定の映画や有料テレビの話であって、実はそれ以外は非常に厳しい。日本人は前者を観過ぎていて勘違いしているのではないでしょうか。

日米の違いはそれだけではないと思います。それを書こうと思います。

まず、日本人はクリス・ロックの人となりがわかっていない。

この人はコメディアンとして超スーパースター。年収で比較しても映画スターにもいないくらい。

さんま+たけし+タモリ+ダウンタウンでも遥か及びません。

スタンダップでも毒舌で有名で、みんなそれを待っている。

イベントでたけしや爆笑が毒吐くのを待っている感じ。お約束だから、無かったらそれこそヘン。

エミー賞3回、グラミー賞を3回受賞しています。

アカデミー賞の司会も2回。

日本でいえば紅白の総合司会。国民的なので大泉洋みたいなもの。

以前のアカデミー賞でもアジア人を小バカにして顰蹙をかっている。

だから今回も「あいつまた言うぞ」って期待されていたはず。クリスもそれに応えないといけません。

クリスをウィルは長年の友人。共演もあります。

クリスは57歳で、エディ・マーフィに引っ張られてビバリーヒルズ・コップ2(1987年)でブレーク。90年「サタデーナイトライブ」の主要キャストになります。

ウィルは53歳。1987年にラッパーとしてレコードデビュー。映画は92年に進出。

クリスは4歳年上で業界としても先輩なのですが。

なんでもうまくこなすウィルに対して鈍くさくて貧乏育ちのクリスという二人。

次に、日本人は奥さんのジェイダ・ピンケット・スミスの位置づけを知らない。

1年半前(2020年7月)ミュージシャンのオーガスト・アルシナと不倫したことを認めています。

その4年半くらい前、夫ウィル・スミスと別居期間中のことでした。

2人は関係を修復するために2年間の休業しています。

相手のオーガスト・アルシナが名乗り出て「僕たちの関係はウィル公認」と言い出したかと思えば、ウィルも自分も不倫していたと匂わせ発言したり

彼女はそれで脱毛症に悩まされて始めました。

「なぜいつもターバンをかぶっているのか」というような質問が多くなって2021年にはインスタグラムで公表したわけです。

「ここまできたら笑うしかない」と言いながら、頭の前方に線状に毛のないエリアができているのを公開

つまり、アメリカ国民ならみんなこの一連の話を知っているわけです。ましてやアカデミー賞に招待される業界の人たちは。

アカデミー賞で2人が並んで座っていても「あれーこういう時だけいっしょかよ?」という風に思っていたわけです。もちろんウィル・スミスも気まずい。

それを感じたクリスがおちょくったわけです。元々優等生でイイ奴タイプなのもある。それが目標だったアカデミー賞を獲りそうだっていうことで。

クリスがジェイダの坊主ヘアを映画『G.I.ジョー』の主人公に例えたジョーク「G.I.ジェーンの続編を楽しみにしている」と発言

ジェイダとジェーンを掛けているわけ。坊主頭が共通だし。

そのときウィル・スミスは笑っていました。

「来た来た」って感じだからね。

GIジェーン主演のデミ・ムーア(ブルース・ウィリスの元妻)は美人女優として位置づけられているので「ホメられた」ような(記事もありました。)

ジェイダは呆れた表情に。

それを見たウィル・スミスが平手打ちに壇上に上がった。

クリスがそれを笑いに変えようと「ウィル・スミスにボコボコにされました」とまたジョークを飛ばす

これにジェイダも体をゆすってその言葉に笑っている姿

ウィル・スミスが「その汚い口で俺の妻の名前を言うな」と大声で言うとクリスは驚いたように「わお、今のは『G.I.ジェーン』のジョークだよ」。

もう一度「その汚い口で俺の妻の名前を言うな」と一言一言区切りながら怒鳴る。F文字も入れて(これはアメリカではいけない)

ここで初めて会場が静かに

クリスが「これは……テレビ史に残る最高の夜だ」と言いながら式を進行

会場にようやく笑いが戻る。

ジェイダもクスクス笑っている。

このジェイダの笑いは、確認されていなかったのですが、別のカメラで撮ったSNSが最近になって公開され始めたのです。

これらジェイダの笑いは「ジェイダは暴力を容認している」と今、非難されています。

それに対してジェイダは、「今は癒しの時期で、私はそのためにここにいます」というメッセージをインスタグラムに載せています。

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最後にもう一度クリス・ロックのこと

今回の件でクリスは「彼女(ジェイダ)が脱毛症だとは知らなかった」と言っています。これが本当かわかりませんが、

彼は「非言語性学習障害」(NVLDまたはNLD)と診断されていたこと

「自分は空気を読めず、周囲の人から冷たい反応をされることに悩んできた、とロックは語っていた」とのこと。

コメンテーターとして活躍するエイミー・ダッシュも29日、ツイッターに「クリス・ロックにとっては、非言語性学習障害の診断を受けていることや、それが対人関係に与える影響について、世間に関心を持ってもらういい機会だ」と投稿した。

アスペルガー症候群と多くの共通点のあるようです

アメリカとカナダの青少年の25人に1人はNVLDだという。推計すると、アメリカでは18歳以下の220万〜290万人がNVLDである可能性があるということです。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/04/post-98437_2.php

もう一つクリス・ロック

黒人はストレートパーマをやります。黒人女性はストレートパーマで脱毛症になる問題もあります。自分の娘の髪を心配し、その美しさを再認識すべきと、クリスはドキュメンタリー映画をつくっています。

「グッド・ヘアー~アフロはどこに消えた?」(2009)


いろいろな背景があるものです。

そういう事も踏まえて「いい」「悪い」「どっちが悪い」と考えて欲しいと思います。

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