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小説

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#文化祭

『学園祭』6

6/
 学校祭2日目の今日も耕輔たちの通う高校は大盛況であった。
 「はぁ……なんで俺、今日もウェイターやってんだ……」
 耕輔が小さく呟いた。
 耕輔は自分のクラスの喫茶店で昨日に引き続きウェイターをやっていた。
 本来であれば耕輔の出番は1日目と3日目で、2日目は丸々遊べたはずだったのだが――
 「アンタが昨日サボったからでしょ」
 耕輔の目の前にいた坂本が乱暴に耕輔の持つお盆の上にコーヒーと

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『学園祭』5

 「ッ……!?」
 魔法陣が容易く切り裂かれた男が後ろへ飛び退き、一瞬で詰められた間合いが一瞬のうちに元に戻った。
 夕夏も追撃を加える事もなく、男の魔法陣を切り裂いたFPの刃を振り払い、再びその刃を構えた。
 夕夏が追撃に出なかったのは、相手にまだ未知の部分が多いためだろう。
 
 夕夏は刃を、男は自信の腕を構えたまま牽制しあう。
 それだけの時間があれば耕輔が構えるのにも十二分だった。
 1対

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『学園祭』4

5/
 「宇野君」
 先行している夕夏が口を開いたのは、ちょうど階段を上っている時だった。
 赤崎達と別れてから、二人の間には会話が無かった。
 耕輔は喋らないまま進む夕夏の後を付いていくのが精一杯であった。
 しかし、なんとなく夕夏のその歩みに迷いが無いような気はしていた。
 「さっき、赤崎が言っていた言葉を覚えているかしら」
 「……『FPの流れがおかしい』、でしたっけ?」
 足を止めることも

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『学園祭』3

4/
 「あ、有村会長!! どうでしたか?」
 お化け屋敷を出るとすぐに受付をしていた女子生徒に声を掛けられた。
 どうやら夕夏と耕輔が出てくるのを待っていたらしい。
 「随分作り込んであって見事だったわ」
 女子生徒の言葉に耕輔は引き攣った笑顔を返すのが精一杯であったが、夕夏はいつもと変わらぬ笑顔と調子で応えた。
 応えてから、夕夏はポケットから手帳のようなものとペンを取り出して、何かをメモした

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