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小説

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2021年8月の記事一覧

魔王の話 6

 怜音とアメリアとカール、三人の視線が扉に集まる。
 入ってきたのはカールと同じ軍服の様な服を着た男だった。
 「なんだ、まだ終わってなかったのか」
 男の渋い声が謁見の間に響いた後、近づいてきた。
 近づいてきた男で何よりも目を引いたのはその大きさであった。
 身長がおそらく2メートルを優に超えている。
 男はいつの間にか立ち上がっていたカールとアメリアのそばまで来て、何か二人に話そうとしたとこ

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魔王の話 5

 「はぁ……、暇すぎる」
 窓に鉄格子のある部屋のテーブルに手を付きながらだらけていた。
 中庭での一件、怜音の金色の光のあと数分の間アメリアもカールも動かなかったし、何を訊いても生返事しか返ってこなかった。

 二人が気が付いたように動き出したのは周りにいた二人と同じように動けなかったメイドたちが何やら小声で話し合い始め出した辺りだった。
 カールとアメリアは互いに何度か耳打ちした後、カールはす

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魔王の話 4

 「さて、ということは少なくともしばらく君はこの城にいるしかないということだね」
 アメリアの持ってきたパンで一通り腹ごしらえを済ませたところでカールが怜音に話しかけた。
 「いいんですか?」
 「まぁ、ここにいてもしょうがないかもしれないけどね。ただ、元の世界に戻る方法を探すにしても、町の外に出なきゃならないわけで。そうなると、君じゃ死にかねない。街の外に出れば魔物なんかがよくうろついてるからね

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魔王の話 3

 (どうにもクオン様に関係することだと頭に血が上りすぎる。いらない脅しまでしてしまった。あの少年に謝罪しなければならない。冷静に考えれば、今この城の内部に忍び込んだところで大した悪さはできないはずだ)
 メイド姿の女性、この城のメイド長を務める女性――アメリア・アストレアはお盆に乗せた紅茶の入ったティーポットとティーカップ、それとお茶請けのクッキーを運びながら先ほどの怜音に対する自分の態度を反省し

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魔王の話 2

 「それで? あなたはなぜ、あの部屋のベッドで寝ていたんですか?」
 「それがわからないってさっきから言ってるじゃないですか!」
 怜音は現在メイド姿の女性に連行され、だだっ広い廊下を歩かされていた。
 先ほどから建物の中を歩いているにしては長い時間歩かされているがいまだ目的地にはつかないようであった。
 時間がもったいないと思ったのか一切抵抗するそぶりを見せない怜音に対して女性が尋問を始めたので

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