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ショートショート:短い作品集

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1000字以内の短い作品集。 自由に頭の中のストーリーを紡いでみました。
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#超短篇小説

『雪初詣』

『雪初詣』

中学3年の冬休み。

大晦日、お正月といえば家族と過ごすもの。

そう教えられている。

父は厳しく、少し夜が遅くなっただけで心配するふりをしてるが、本当は寂しがっていると俺は思ってる。

母も同意だ。

そんな気持ちをわかってか家族は全員大晦日を自宅で過ごす。

まぁ、大晦日なんてそんなものだ。

家族みんなで紅白歌合戦をみている。
母はあーだこーだと若い歌手の歌声を批評している。
歌が聴こえな

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超短篇『強制コミュニケーション社会』

超短篇『強制コミュニケーション社会』

2030年、SNSは進化してメタバースなどのオンラインコミュニティーが加速度的に進化していた。

人々は直接誰かと会うのも嫌い、外出をせず、オンラインでの仕事やサービスで生活する事が当たり前になっていた。

結婚率や出生率の低下。
離婚率の著しい増加が起き、社会はもはや崩壊寸前だった。

日本政府は、生活保護や医療費、失業保険などの生活保障制度を大きく廃止し、年に決められた金額を全国民に支給すると

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『青い手紙』

『青い手紙』

「私は何度も転職する人が嫌い」

「もう連絡してこないでください」

その手紙にはそう書いてあった、突然連絡が取れなくなった彼女。

予兆はあった、スマホを通じて感じる違和感。

毎日「おはよう」や「おやすみ」

といった最低限のコミュニケーションを絶った事はなかった。

違和感を察して、次第に連絡が遠くなった。

仕事が終わり、画面には何の表示もない。

ヘトヘトになった体に追い打ちをかけるよう

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「今川焼きストーリー」:ショートストーリー

「今川焼きストーリー」:ショートストーリー

「あたし、魚の頭が苦手なのですけれど」

女房は俺が新たに製作した新しいあんこ菓子に不満を言う。

何種類か試したが、やはり縁起も良いのでタイにした。

「そうか、魚の頭が苦手な奴もいるのだからな」

確かに魚河岸でも、頭を落としてくれたりもする。

焼き魚を食しても、頭は残すしな。

カン、カン、カン

俺は焼き菓子の型を、玄能で叩き作る。

頭を外した型を作り、生地を流し込み、焦げ目を付け、あ

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