パズルピース(短歌)

平日の昼に横臥する我欠けたる平日のパズルピースのひとつ

柿食えば鐘が鳴るなりオメガとアルファ

なるならば代わりがあってもなくてもどっちでもよいものがよかった千切れた雲ゆらゆら

背広の下のかきむしり痕思い出すアレルギー体質の彼

汚れるのなら、綺麗じゃなければなんでもよかった レモンの果汁 血液 タンパク質

すり減らぬスニーカー底 わたしが代わりにすり減りて本懐を遂げぬ

朝顔は夜明け前に咲くという 小さな秘密ひとつささやく

騒がしき空を仰ぎて涙ぐむなんでわたしはここにいるのか

生きているものは少しかなしい潰した蚊の腹に溜まりし黒よ

うつし世にない人のため夕時の配膳告げる看護師はしる

夕映えに全身あててみれば熱せられた血がぬるく往く

見える文字全て検閲されたあの日のこと わたし絶対忘れない

惨事をも離れてみれば思い出だったまた随分と置き去りにして

発狂に返りたくはないと言いつつパフェの中の小人をスプーンで潰す

早まるな絶対に死ぬなリフレインする「いのちだいじに」

神様って本当にいるんですか その一言をくべてしまう勇気が足りない

平成を管理する人が死ぬのを見ました本当なんです看護師笑う

目覚めた視界に紙片いちまい「令和」と書いて誰かがくれた

青年誌の袋とじ何がとじられているのだろう卵だろうか

生きるのに飽きてしまったという度に何かが運ばれてくるような場に居たかった

沈黙の皮をむいて咀嚼する石細胞をかみ砕く音だけが静か

もしかしてこっちが二次元 嘘だといってよこんなに地味なことある?

高価な水を一滴落とす青い静脈の上世界はこんなにも香しい

コーヒーをかき回してる間にラッパが鳴って現世が台無しになってしまう

孤独にはB上のタメがよく効くよとヤフー知恵袋にて秀逸な回答

インターネットにはアレをソッチで売る人ありてソレをコレで買う人あり

プラスチック製キャンディを舌で転がし世界の終りをじっと待つ

信じてるふたつかみっつこの世生きていくための裏技を 例えプログラム上のバグであっても

死んでしまいたい時は甘いものが足りない時 そう言う母も甘いものを食べ

せぐりあげたねといった人 きみも好きだろ米津玄師を

暮らしていくことは捨てていくこと諦めていくこと パン屑代わりのスパンコール光る

この地球の何処かにラインストーン工場ある事がなんだか慰めになる日もある

夜来れば 沈む魚になりにけり 寒天質の大気の中で

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