踏み切りに(短歌集)

踏み切りに立ち尽くすカゲロウを吹き飛ばす ゆらり

チュールスカート走れば羽になって抜けていく

www.(ワールドワイドウェッブ)くるくる落ちて髪まとわりつく

百貨店の電飾にクリスマスツリーの影震えて伸びる何かに怯えて

ユーラシア大陸に生まれている可能性の方が高いはずだが 何かこんなとこにいます

行き着いて空き缶蹴り飛ばす世界の終わりはこんなもんかよ

私の前世は、と言いかけるとHDDが初期化される仕組みに人間はなっている

傷痛む胸を抱えてこんなとこ 手の中の貨幣 遠くに投げる

平成32年を指し示す免許証そうか君はどこかで分岐したんだね

旗、旗と叫ぶ声聞く午後5時の暗闇 燐のように命燃える

空を「から」と読む時にたしかに広がっている蒼天

私、もうペンギンは好きでないんです。トーキー映画に飽きたんです。

人生は回っていくもの。地球儀でも回転ベッドでも。

寂しいものを、ひとつ。と言って提示される夕方のラブホテル

塩素味のないものを飲みたくて口に含んで捨てるシアナマイド

人生にもしもはないとは言うけれど、我々が異星人という可能性については?

贈る言葉が見つからない。何送ってもエゴイストになる他なくて

自動ドアに気づいてもらえなくてセンサーの下で軽く踊る

命を炎と例えるよりは水の流れにしたいような波乱万丈さでした

再会をと祈るより現金が欲しい。すべて花束にかえてみせますから

月曜日は血の香り。火曜日は血の残り香。水曜には塩素でどうでしょう

消毒液なめてみて、前世はたくさんの人を不幸にしたと断ずる

息を止めて、羊水の中を想像する。わたし生まれなおらなきゃよかったわ

特別という言葉を70億の魂に。普通という特別を。

靴底に嫌な感触 今ブラジルの誰かを踏んだかもしれない。

「軽く死んだわ」と言う時のやるせなさ 命は天と地の隙間にある

アルペジオ弾いて手書きの音符が子葉に変わる

酔っている間は歌えるラブソング 罪も悪意もそこにはなくて

「モーセみたいね」と都会の十戒抱えている私に言うあなた

2020年の間に電飾で光れるようになった愛を一人で見ている 

紀元3000年頃には自力で光れるようになるでしょう電飾巻いてる愛の化身

手首から 滲み出る絵具みたいね ボールペンの赤線みたいね

薬の殻を生ゴミと一緒に捨てる 食い散らかした理性の残骸

待っていた日曜朝のヒーローは躊躇いもなくヒトを殺しました 

スカートの格子模様が鳥になって消えてく夜 森にお帰り

「聞こえた」を「消えた」と間違えて、あやうく友を失踪させるところでした

孤独に差す傘はないが恐る恐る役割終えたビニール傘差し出す

ここに魂おいていきます 舞浜、秋葉原電気街、果物のおいしい国

インターネットやる時 この指は矛にも盾にもなりて

背中さすられる感触に 祖母の優しさが沁みて余計に嘔吐

幸福という名の列車が通過する 躊躇ってまた跳び損なった

あらゆる言葉は誰かに着弾する 充填してこめかみに当てる

教会でセックスピストルズをハミングしてみる日曜朝の冒涜

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