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オフィスを間借りしたら、カレーのものすごい可能性を知った|CHANCE THE CURRYインタビュー

突然ですがみなさん、カレーはお好きですか?

今や日本の国民食とも言えるカレー。都内でさまざまな種類のカレー専門店を見かける機会も増え、多くの人を虜にしています。

もちろん僕もカレーは好きで、時々家で作ることも。でも基本的には固形ルーを使ったものばかりで、スパイスでイチから作るカレーは難しそうだな〜と、どこか高いハードルを感じていました。

そんな僕ですが、実はHuuuuの「移動型編集部」を通して、自分でスパイスカレーを作るようになるほどカレーが大好きになったんです。

そのきっかけになったのは、小田急経堂駅から徒歩1分の場所にオフィスを構える「CHANCE THE CURRY」さん。

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オフィスを間借りしている時の一コマ

スパイスの香りが漂う素敵なオフィスでは、毎週美味しいカレーの「まかない」を出していただき、僕の密かな楽しみとなっていました。

でもよくよく考えてみると、まかないでカレーが出てくるオフィスって一体どういうこと?そもそもCHANCE THE CURRYってどんな事業をしている会社なの?

CHANCE THE CURRYへお邪魔する最終日。まだまだ知らないことが多い事に気づいた僕は、代表のタケナカリーこと竹中 直己(たけなか・なおき)さんにお話を聞いてみました。

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カレーを作る人を増やす

日向:というわけで2ヶ月間、大変お世話になりました。

竹中:いえいえ。こちらこそ楽しかったです。ああ、ちょうど今カレーできてるけど食べます?

日向:(今日もカレーが食べられるのか……!)はい!いただきます!

竹中:じゃあ温めるから、ちょっと待っててね。

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日向:(いい匂い…)実は初めてお会いする前から、竹中さんのインスタはフォローしてたんです。毎日投稿される美味しそうなカレーの写真を見て、ずっと「カレー屋の人」っていうイメージがあって。でも、CHANCE THE CURRYはカレー屋さんではないんですよね。

こちら高円寺の「かりい食堂」さんのカレー。副菜まで美意識の塊です!

竹中:そうですね。一応、CHANCE THE CURRYのメイン事業はweb制作です。その合間にカレー作りや、カレーにまつわるグッズやイベントの企画をしています。我々が何をしているのか、一言で言うならば「カレー活動」ですね。

日向:カレー活動?

竹中:そもそも社名の「CHANCE THE CURRY」は、アメリカのチャンス・ザ・ラッパーってヒップホップアーティストからとってるんです。最近は音源販売も始めたみたいだけど、基本的に彼はレーベルと契約せずに、音源はすべてフリーダウンロードにして、グッズの販売とかフェスの出演料を収入源にしていて。

そこから着想して、カレーでも似たような活動ができないかなって思ったんです。だから、最初はイベントや路上で「フリーカレー」と言って、無料でカレーを配っていました。

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歌舞伎町でカレーを配る竹中さん

日向:なぜそんな活動を?

竹中:僕はカレーを作る人が増えたら、きっといいことが起こるって信じているんです。そのために、カレーの魅力をもっと多くの人に広めたいなと思って。

日向:その「いいこと」とは一体……?

竹中:あ、カレーが温まったみたいだから、盛りますね。今日は、「抹茶とくず野菜で作ったポークカレー」です。

日向:え? 抹茶?

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日向:おいしそう……。いただきまーす!

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フフッ!

日向:野菜の甘味とスパイスの香りのあとに、少し抹茶の風味を感じて、とってもおいしいです!でも、竹中さんが作るカレーって、時々カレーの食材としてはあまり馴染みのないものも使ってませんか? 今回の抹茶もそうだし……。

竹中:実は、それがいま会社として一番興味を持っている「いいこと」の一つなんです。

日向:といいますと……?

竹中:飲み会とかに行くとまだ食べられるのに捨てられてしまう残り物が出ちゃうことってありますよね。それをフードロスって言うんだけど、せっかく美味しく作られたものが捨てられるのって、やっぱりすごく悲しいことじゃないですか?

日向:たしかにまだ食べられるものを捨てるのは罪悪感がありますね。

竹中:そんな経験から、残ったものも最後はカレーにすれば美味しく食べられるんじゃないかなと思って、宴会の残り物とか、規格外で商品にならない野菜とかを使ってカレーを作る活動を始めたんです。そうしたら、思っていた以上にこの活動に対して感動したり面白がってくれる人がいて。

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日向:余り物がこんなに美味しいカレーになるのを知ったら、そうなりますよね。

竹中:そこで、残り物を美味しくすることにみんな関心があるんだなぁって思ったんです。そう考えると、実はまだまだいろんなところで余っていたり、捨てられている食材があるんじゃないかなって。

日向:カレーの新しい可能性に気づいたんですね。

竹中:その考えに至るまで、色々な出会いがありました。1番大きかったのは、去年の台風19号で傷物になってしまったリンゴ農家さんを支援するチャリティーイベントに行ったときで。そこにはフードロスや、フェアトレードみたいなことに関心の強い人がたくさん集まっていたんです。例えば、サメを売ってる人とかね。

日向:サメ……!?

竹中:サメって成分によってはカジキマグロを超えちゃうくらいのパワーフードなんだけど、日本の食文化のなかでは、明治時代まで一部の地域を除いてヒレ以外は捨てられるような存在だったんですって。今でこそ練り物に使われたりするけど、その慣習を引きずってるからか、せっかく水揚げされても、高値がつかないらしいんだよね。他の魚より日持ちするけど、その分臭いが出るってこともあるようで。冷凍してれば全然問題ないんですけどね。

日向:確かに、普段から気軽に食べる食材ではないですね。

竹中:それを聞いて「ああ、これはサメカレーを作ったら一発で解決するんじゃないかな」と。たまたまカレーに出会って、たまたまカレーを愛してた僕だけど、その時に「社会問題」と「カレー」がリンクした。カレーを世の中の役に立つことに変換できるんじゃないかと思ったんです。

日向:どんな食材でも最後はカレーにすれば、みんな喜ぶと。フードロスを考えたとき、これから試してみたい食材はありますか?

竹中:さっきのサメ以外でいうと、築地市場で出るアラとか、成長しすぎてもう卵を産めなくなった鶏とか。普通では食用にはあんまり向いてない食材でも、ダシをとってカレーにしたら美味しいんじゃないかなって思っています。

いいことじゃなくて、楽しいことをしたい

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日向:通常では捨ててしまうものでも美味しいカレーを作れると考えると、すごい可能性を感じますね。

竹中:だけど、その一方で「いいことがしたい」って気持ちばかりが前に出てきたらいけないなとは思っているんです。

日向:え? でも、フードロスがなくなることっていいことですよね。

竹中:それはたしかにそうなんだけど、やっぱり楽しくないとダメだと思うんですよ。責任感とか義務感ばかりで、面白くないものって多分続かない。どっかで「この人バカだなぁ」って思われるくらいがいいんじゃないかな。

日向:たしかに、「竹中連続カレー」(※竹中さんが毎日カレーを食べ続ける活動)の記録を保持するために、尿管結石で入院中なのにこっそりカレーを食べてる写真を見たときは、笑ってしまいました。

竹中:そのあとすごい怒られたけどね(笑)。あくまで自分の勝手でやっているって自覚が大事だなぁと思ってて。だからこそ「いいこと」が主語になってしまうとよくない。「自分勝手にやっていること」が「誰かのためにやっていること」になっちゃうと、多分、本質からずれるんですよね。

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日向: ……実は僕、最近スパイスカレーを作りたいなと思うようになって、スパイスとか本を買い始めたんですよ。

竹中:いいじゃないですか!!

日向:自宅のキッチンが狭いからずっと外食で済ましてたんですけど、毎週竹中さんのカレーを食べるうちに、「カレーさえ作れるようになれば飽きずに毎日食べられそうだし、もう食事の心配はないんじゃないかな」って思って。今日のお話を聞いて、さらにその気持ちが高まりました。

竹中:そうやって共感してくれた人がいるのは本当に嬉しいですね。「なんかいろいろ食材が残っちゃったけど、まぁ後でカレーにすればいいよね」って思ってくれるだけでも全然オッケーだし。なんだろう、それ以上は必要ないかもね。

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日向:それって、CHANCE THE CURRYのサイトのコンセプトにも書かれている「フードロスへの萌芽」みたいなことですか?

竹中:そう! 『萌芽』、つまりその人の中にちょっとだけ意識が芽生えたらいい。そこからはバトンのリレーなんですよ。例えば日向くんがそこでカレーを作り始めて、その先にまた違うカレーを発見するかもしれない。それを見てまた誰かが……みたいな。僕はそういう自然発生的なものがすごく好きで、その可能性は誰も否定できないじゃない。

日向:なんだかカレーを作りたくなってきました。

竹中:今は蒲田に住んでるんだっけ。蒲田だと名物料理は……餃子か。
例えば、「なんか羽つき餃子めちゃめちゃ買うんだけど、残しちゃうんだよなぁ」ってなるとしよう。そこで、「羽つき餃子はカレーになんねーかなー」みたいな思いつきから、「羽つき餃子カレー」を作ってみちゃうとか。

日向:羽つき餃子カレー、美味しそうですね……! 今度作ってみます!

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竹中:こんなおしゃべりで思いついた料理が、何十年後かに蒲田のソウルフードになってたら、もう最高だね(笑)。

終わりに

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今回で第3回目となる移動型編集部レポート。
CHANCE THE CURRYに広がっていたのは、知られざるカレーの可能性でした。

「なんかいろいろ食材が残っちゃったけど、まぁ後でカレーにすればいいよね」という考え方でフードロス問題も解決してしまうカレーの懐の広さ。

そんな可能性を秘めた料理だからこそ、日々さまざまな人がカレーの魅力にとり憑かれていくのかもしれません。

まだまだ新米カレープレイヤーの僕ですが、この体験をきっかけに、これから善きカレーライフを送っていきたいと思います。

それではまた!

【告知】

今回カレーの魅力について教えてくれた竹中さんが、来週放送の『マツコの知らない世界』(TBS系列・2月25日火曜20時57分放送)に出演します。この記事を読んで気になった方は是非チェックを!


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文章:日向コイケ(@hygkik) 編集:友光だんご(@inutekina)

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