マーケティング:クラウドファンディング編

はじめに

0から工房を立ち上げ、品質が販売できる水準まで達したので販売の準備に取り掛かりましたが、「やべぇ…全然販路のこと考えてなかった…。」といろいろ試行錯誤した結果、辿り着いたのがクラウドファンディングでした。

クラウドファンディングを活用することで『売上』+『初期顧客獲得』+『広報』を1度に全て行える上に、売れてから商品の制作や仕入れが出来るためリスク面がかなり低くかったことが魅力的で、

さらに、僕たちのようなブランドであればストーリー性もあるしイケるのでは?というざっくりとした仮説のもと挑戦することになりました。

実際に僕たちが何を考え、どのように数字を伸ばしたのか、その後の事業にどのように活かしたのかを詳しく解説していきます。

クラウドファンディングサイトはどこを使えばいいの?

キャンプファイヤー、マクアケ、レディーフォーなどがありますが、正直な話どこでもいいと思うが答えです。

個人的には家入一真さんが好きだったのでキャンプファイヤーを選択しましたが、マクアケで挑戦したほうがもっと売れたかもしれませんし、それはやってみないと分からないので、ここで悩むくらいなら書く内容などに時間を使いましょう。

もし決められないなら、自分と似たようなプロジェクトが無いかをリサーチして、成功している件数が多いプラットフォームで良いと思います。それくらい僕たちはプラットフォーム選びは適当でした。

クラウドファンディングを成功させる2つのポイント

①ユーザーメリットを1番に考える

当たり前ですが友人や身内を除き、第三者の方々は自分のメリットを1番に考え支援するか決めます。

クラウドファンディングは支援の場所だと思われがちで、自分のエゴや主張ばかりが目立つプロジェクトも乱立していますが、そういうプロジェクトはまず間違いなく成功しません。

お金を出す人たちのメリットを1番に考えてリターンを設計しましょう。リターンの内容が魅力的であればあるほど、お金は集めやすくなります。

逆の立場になりあなたがお金を出す側だとしたら、当然そう思うはずです。

ちなみにリターンの設計は金額の幅を広くもたせると良いです。

1000円、3000円、5000円、10,000円、20,000円、50000円

みたいな感じで本命のリターン(このケースなら10,000円と20,000円になるかな?)と支援しやすいリターンを準備することで、あなたのプロジェクトに興味がある人を幅広く取り込むことが可能です。

②文章構成は「Why→How→What」

少し専門的な話になりますが、クラウドファンディングのように何かを紹介し購入してもらうページを通称LP(ランディングページ)といいます。

LPの文章構成の基本は下記図のような構成が反応率が高くなりやすいのですが、

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クラウドファンディングに関しては、リターンという商品も当然大切ですが、それ以上に「なぜあなたがこのプロジェクトをやるのか?」という”Why”の部分がとても大切になってきます。

この”Why”に共感してくれた方々は高い確率で支援者になってくれます。ぜひ下記図を参考に「Why→How→What」の文章構成で書いてみてください。

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クラウドファンディングを通じて得られた3つの副産物

僕が意識したことは上述した内容ですが、実はクラウドファンディングは成功後にとても魅力的な副産物が生まれるので、ここからはこれらの3つの副産物を解説したいと思います。

①アナリティクスデータ

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こちらの画像は実際にどれだけアクセスが集まり、毎日どれくらいのお金が集まっていたかの記録です。

赤枠で囲ってある日にいきなり数字が跳ね上がっているのは、その日にクラウドファンディングサイトであるCAMPFIREの公式メールマガジンで僕たちのプロジェクトを紹介して頂いたからです。

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このような販売データを短期間でまとまった数取得できるため、その後のマーケティングの仮説を立てる時に非常に役立ちます。

②顧客データ

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支援者の住所などの個人情報はプロジェクト終了後に取得できますが、僕たちの支援者は上記図のような属性であることが分かりました。自分たちの顧客像がかなり明確になります。

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さらに支援者全員にアンケートを送り、なぜウチのブランドを選び、買ってくれたのか?を教えて頂き、顧客が僕たちに求めていることを把握することが出来ました。

今後の行動指針として、大変貴重なデータを取ることが出来ました。

③結果と活動の可視化

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クラウドファンディングのページは成功してもしなくても原則削除することが出来ません。そのため自分たちの活動がネット上に残り続けるため、初めて会う方や顧客に見せると信用度が高まります。

実際に僕は自分のプロジェクトページを見せることで大学での講義に繋がったり、SNSで声をかけてもらえることが増えました。

続いて集客面について解説していきます。

最初の支援者獲得は発案者のSNS+リアルの知人

新しく立ち上げたブランドは当然ですがブランドに対する信用は0で、さらに実物のサンプルを見ることが出来ない状況だと発案者の個人的な信用で売るしかありません。

そのためSNSで発信を続けてフォロワーと関係性を築いておくことが最も効果的な集客に繋がります。

そのためSNSをやっていないなら急いでアカウントを開設して情報発信を始めましょう。プロジェクト公開してからはじめても効果はほとんどありません。普段から信頼関係を築いておくことが重要です。

そして周りのリアルな友人知人も声をかけましょう。両親や兄弟も当然対象です。

少し厳しい言い方をすると、最も親しい仲の人たちに自信を持って勧めることが出来ないなら、それは世間に対して販売すべきではありませんよね。自信を持って勧められる製品になるまで磨くべきです。

上記のような事前準備を行ったらプロジェクト公開初日に可能な限り数字を伸ばす努力をしましょう。

初日で目標は達成率30%で、もし50%いけばほぼサクセスすると思います。初日でどれだけ勢いを出せるかがサクセスできるかの重要なポイントになります。

キャンプファイヤーのLINE砲とメルマガ砲

キャンプファイヤーしか経験したことがないので他のサイトは分かりませんが、キャンプファイヤーだとスタッフの目に止まれば公式LINEとメルマガで個別に取り上げてもらえます。

(※ただし2019年11月末時点では課金制になっているようで、メルマガは掲載順により約5〜1.5万円、メルマガの題名乗る場合は別途5万追加でかかるようです)

実は僕たちはこれで多くの支援者が集まり無事にサクセスすることが出来ました。(ジョーブログさんの次に来るくらい伸びた…!)

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続いてプロジェクト終了後にやるべきことについて解説していきます。

当然ですがブランドとしては継続的に売上を作る必要があるため、クラウドファンディングで購入して頂いた顧客データを有効活用し今後のマーケティングに活かすことを念頭に入れて顧客対応などを行いましょう。

支援者とのメール対応について

支援してくださった方とのメール対応について解説していきます。

下図が実際に送っていたメールです。

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このメールで着目して頂きたい3つのポイントを解説していきます。

①購入して頂いたお礼をする

これは人として、ブランドとして当たり前のことですね。

お礼のメールを支援者に一括送信する人もいるかもしれませんが、僕たちは手間がかかっても一人ひとり個別で送信しました。

時間が掛かっても相手の名前を文中に入れて一人ひとりに送ることで支援者も「自分の名前を呼びかけてくれてるってことは個別で送ってくれてるんだな」と気づいてくれ、より自分たちのブランドを好きになってくれる可能性があります。

これは個人的意見ですが、効率や利益を度返しして自分のために行動してくれると人間は喜びを感じる生き物だと思っています。

信用0である自社ブランドを購入して頂いているわけで誠意を見せた行動を取ることで信頼残高を貯めましょう。


②カラーを聞く

キャンプファイヤーの仕様で支援時にオプションでカラー選択をして頂くことは可能ですが、リターンの公平性を保つためプロジェクトが終わらないとどのカラーを選択しているか公開されません。

これだと募集期間終了後に生産を開始しないといけないため、支援者への配送が遅れると判断し、可能な限り早く届けるためにプロジェクト公開中からメールのように聞き始め生産開始時期を少しでも早める努力をしました。

ただしメールでやり取りすると誰がどのカラーを選択しているかを手動で管理しないといけないため、ミスを防ぐために誰が何色を希望したかの見直しを何度も何度もやりましょう。

ちなみに僕たちは5回見直して2件管理ミスをしました。(それくらいミスが起きやすい)

送りミスをするとブランドイメージは毀損するし、配送コストは余計に掛かるしでかなりマイナスなので相当気をつけましょう。

③アンケートに答えてもらう

今後、ブランドを展開するために必要な情報に答えてもらいました。

質問内容と意図は以下のとおりです。

・どのように知ったか?
集客経路を知りたかった。経路が分かれば、今後そこにリソースをつぎ込み拡大しようと考えた。

・購入する前に不安あったか?
実物を見ずに物を買うのはとても不安。クラファンページではその不安をなるべく消すように努力したが、それでも不安になったことを聞いて今後のECサイトの構成に活かしたかった。

・購入の決め手は?
一番大事。僕たちが思っていることと消費者が思っていることは往々にしてずれている。何に魅力を感じたか?を知ることによって最もアピールすべきHushTugのポイントを知りたかった。

・HushTugが他よりも優れてると思うことは?
上と被るが、今後の打ち出すポイントをより明確にしたかった。

・どんなシーンで使う?
今後のECの使用画像の服装を決めたかった。

・どんなレザー製品あると嬉しい?
商品企画の参考にしたかった。

上記を見れば分かりますが、結構なボリュームがあります。恐らく答えるのに数分は掛かるため答える側にメリットが一切ない、このようなアンケートは基本的には回答率は低いです。

実際に僕たちも最初にアンケートを送った支援者の方々からの回答率は約15%とかなり低かったです。

しかし、とある施策を行ったところこれが約40%にまで向上しました。その施策とは希望色を聞くのと同タイミングでアンケートも聞いたことです。

支援者の方々は希望色は答えないと購入した商品が届かないため絶対に答えてくれます。

そのメールと一緒にアンケートを送ると「アンケートだけシカトして希望色送るのは気まずいな」と大体の人は思うのかなと仮説を立てて実行したところ上述の通り希望色と一緒に多くの方がアンケートに答えてくれました。

色を選択してもらう必要があってアンケートにも答えてもらいたいときは、生産開始日に限らず手間はかかりますが、あえてメールで聞かないといけない仕様にするのもいいかもしれません。

当然ですがアンケートに答えて頂いたら丁寧にお礼を伝えることを忘れないようにしましょう。

その他の実行した施策について

アンケート以外にも試した施策があるため、補足として解説しておきます。

支援者と直接話す

購入者のインサイトをより探るために直接話す試みもしてみました。オファーをした65人中、9人がオフィスに来社、2人が電話で話してくださいました。

プレゼント企画

二回目のクラウドファンディングでは、アンケートに答えてくれた人の中から最も参考になった3人に、Amazonギフト券1000円分をプレゼントするという企画もやりました。アマギフをつけてない第一回目・アマギフをつけた第二回目でのデータ比較が以下のとおりです。

一回目
回答率:205人中95人(46.3%)
一人あたりの文字数:146文字
一つの質問あたりの文字数:36文字

二回目
回答率:65人中24人(36.9%)
一人あたりの文字数:241文字
一つの質問あたりの文字数:40文字

[考察]

回答数は下がった→二回目では質問数を多くしたので、回答するためのハードルが上がったのでは?と推測しています。またアマギフを配ることによって、どうせやるなら丁寧に。雑ならやらないほうがまし。とも考えられます。

文字数は上がった→ アマギフの効果が出たと推測しています。

一人ひとりの回答の質は上がるが、回答数は減るといった結果になりました。より多くの人の意見を聞きたい場合はアマギフを付けず、一人からより詳しい・深い意見を聞きたい場合はアマギフを付けるのがおすすめです。


希望色の管理

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このような形でシートにまとめていました。
ID〜お届け月が事前に分かること、郵便番号〜電話番号がプロジェクト終了後に分かることです。
この並びはCAMPFIREからエクスポートしたデータをそのまま貼り付けられるように&僕らが使う物流サービス(オープンロジ)にインポートする時にやりやすくするためのシートです。

もしこのフォーマットに興味があれば、以下からコピーして使ってください。
→ https://docs.google.com/spreadsheets/
上のSKU集計部分が関数埋め込まれてるから慎重に編集してください。


アンケートの管理

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アンケートはこのようにまとめていました。ちなみに2回目以降は、新規とリピーターで分けてそれぞれで質問内容も変えています。

アンケートから分かったことまとめ

まずは基本となるPV・CV・CVRから見ていきましょう。

1回目
PV:30,952
CV:205
CVR:0.66%

2回目
PV:19,986
CV:65
CVR:0.33%

3回目
PV:8,090
CV:35
CVR:0.43%

プロジェクトのタイトル・TOP画像は大きく変えていないので、PVの伸び数はCAMPFIREに告知してもらえたか、その後のCVRがどうだったかによって決まります。

CVRは1回目が最高、2回目が最低、3回目が中間となりました。商品の割引率によって1回目がよく売れたこともありますが、プロジェクト内容も原因であると考えます。

2回目のプロジェクトからは撮影技術も上がり、生意気にPVを撮ったりしましたが、ほぼ効果は出ず。「そんな感じのこなれた感?は求められていないんだな」と実感しました。

それよりも泥臭さだったり、強い想いだったりが重要です。

結局クラファンは商品を買うのに加え、応援するという名目も強いので「自分は過去に、どんな人を応援したくなったか?」を考えれば成功するプロジェクトの特徴が見えてくるはずだと考えています。

補足として、全三回の購入者における男女比・年代比をすべて公開します。

男女比

一回目

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二回目

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三回目

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若干の誤差はありますが、ほぼ同じ構成比となっています。

年代比

一回目

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二回目

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三回目

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一回目・二回目は30代が最も多く、次いで40代・20代の順番。ここから、自分たちの商品はどの年代にどれくらい売れるのか?が理解できました。

三回目は20代が多くなっていますが、購入者が少ない&代表の事前呼び込みを20代を中心に行っていたことからの誤差だと考えています。

クラファンのリピート率は?

クラウドファンディングでどれくらいのリピート数があったのかも載せておきます。

第一回:2018/10/27~2018/11/30
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第二回:2019/03/20~2019/04/28 20人/280人
65人中20人がリピーター(30.7%)

第三回:2019/05/26~2019/06/26
35人中10人がリピーター(28.5%)

メッセージでリピーターの方に「なぜ再度買ったのか?」と質問しましたが、全員から前回の商品が質が良かったからという返信を頂きました。当たり前のことですが品質が伴っていればリピートしてくれると強く実感できた事例でした。

終わりに

以上でクラウドファンディング編は終了です。

クラウドファンディングは最初の突破口になり得る可能性はありますが、言ってしまえば一時的な『お祭り』のようなイメージで、継続的な売上には繋がらず、あくまで最初のきっかけにすぎません。

事業を継続して伸ばしていくには売れる仕組みを作っていく必要があるので、次からのnoteでは仕組みづくりの方法を1つずつ解説していきます。

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