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ベッドサイドストーリーズ

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素敵な夢が見られるように、素敵な明日が迎えられるように。寝る前3分で読める、〈短いものがたり+短歌+写真〉がひとつになった作品集です。
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記事一覧

モノポリー

どこにも行けなかったあの夏に、ぼくたちはただモノポリーをしていた。 コーラはとっくに気が…

みずき
3年前
10

宇宙警察

「やれやれ、わかってると思うがおれ、今日は非番だぞ」 モレッティ巡査は、不満を隠そうとも…

みずき
3年前
4

路上のムーンドランカー

なに、あたし?今あなた、あたしに話しかけてんの? たいがい暇なのねえ、こんな路上の酔っぱ…

みずき
3年前
20

鐘を鳴らせ

帰り道の途中に、小高いやぐら造りの鐘がある。 ずっと当たり前にそこにあるから、その鐘が鳴…

みずき
3年前
12

星売りの少女

「そこ」は、なにもない、ただのまっくろな空間でした。 いえ、ほんとうはそうではなかった。…

みずき
3年前
6

花のかたちの鍵

その扉は、生い茂る植物にうずもれるようにそこにあった。 一見すると小さな丘のような地面の…

みずき
3年前
5

しろくまのわたあめ屋さん

夏がきたから出稼ぎにいこう。 ある朝、もくもくと膨れ上がった入道雲を見て、しろくまはそう思いました。 しろくまのおうちは、氷でできた1DK。窓がなくても外の景色を見られるのがお気に入りでしたが、いかんせん夏は溶けてしまいます。 そうならないように、しろくまは夏のあいだ出稼ぎをして、いろんな人から氷を分けてもらうのです。 しろくまには、わたあめをつくる才能がありました。普通のとはちょっぴり違う、しろくま特製の。 だから入道雲が空にかかってセミの鳴き声が聞こえだす頃、大

ランドリーマシン

公園でひとりブランコに乗っていたら、真っ白なワンピースを着た見知らぬ女の子がやってきて隣…

みずき
3年前
10

ジャングルジムのてっぺんから

高台にある公園は、見晴らしがよく遊具の数も豊富で、わたしたちこの街の子どもにはとても人気…

みずき
3年前
14

海底列車

深海の底の底を、ことことと走る列車がある。 始発駅がどこで、終着駅がどこなのかは誰も知ら…

みずき
3年前
9

赤いくつと人魚

その赤い靴は、呪いや魔法をかけられたわけではなく、ただ「踊るのが好きだから」という理由で…

みずき
3年前
16

ようかいはなまる

今日はだめだめな1日だった。 帰りの電車の中で、てすり際に立って窓の外を眺めながらため息…

みずき
3年前
9

満月クッキング

カーテンの隙間から差し込む夜の空気がとても明るくて目が覚めた。妙に明るいなあと思っていた…

みずき
3年前
19

スーパーボール

もえこにとって、雨の季節はゆううつだった。 雨に濡れるのはきらいではない。でも、街全体の「どうもすみませんね」「わたしなんかどうせ」という卑屈さに、街の人々ももえこもみんな飲み込まれてしまって、みんなどこへもいけなくなってしまう感じがいやだった。 色彩も音奪われて、街まるごと閉じ込められたみたいだ。 1日中降り続く雨を部屋の窓から眺めつつ、もう何度目になるかわからないため息をもえこはついた。 「浮かない顔してるねえ」 いきたりノックもなしにもえこの姉、あさみが入って