2019大学祭配布冊子「図書館でSFが読みたい!」(16) 4.専門書編(2/3 科学系ノン(?)フィクション)

注意:この記事の情報は2020年4月末時点のものです。また、半分個人の備忘録的な内容であるため、あらすじや紹介を見て興味を持っただけの未読作品も含まれています。

 仕切り直して、まっとうな専門書にもFictionの力を借りて書かれたものがあります。それらの中からいくつか紹介しようと思います。

生物系三大奇書

 最初は「生物系三大奇書」です。

 生物系三大奇書とは『鼻行類』(ハラルト・シュテュンプケ)、『平行植物』(レオ・レオニ)、『アフター・マン』(ドゥーガル・ディクソン)を指し、"奇書"というだけあってどれも尖った作品です。内容を簡単に紹介すると、「主に"鼻を使って移動する"ような哺乳類」についての架空の論文『鼻行類』、「時空のあわいに棲み、われらの知覚を退ける植物群」についての解説書『平行植物』、そして『アフター・マン』は「未来の生物」についての図鑑です。

 『アフター・マン』の著者であるドゥーガル・ディクソンは恐竜が絶滅せずに進化したらどのような形態になっているかを予想した『新恐竜』や、イギリスのTV番組として制作された、現在の地球から(環境は変化せずに)人類だけが消滅した場合どのような生物の進化が起こるかを科学的に予想した『フューチャー・イズ・ワイルド』なども書いています(『フューチャー・イズ・ワイルド 漫画版』もあります)。また『鼻行類』についてはその解題書というべき『シュテュンプケ氏の鼻行類』もあります。ちなみに『平行植物』の著者レオ・レオニは、日本では絵本の『スイミー』(英語版『Swimmy』もあります)で有名でしょうか。

 さらに、この系統としては幻の生物を写真と共に紹介する『秘密の動物誌』(ジョアン・フォンクベルタ,ペレ・フォルミゲーラ)や、架空の島の民俗について述べた『ランゲルハンス島航海記』(ノイロニムス・N.フリーゼル)という作品もあります。

その他の書籍

 他にも、聖書中の神の選択をゲーム理論で解釈する『旧約聖書のゲーム理論』(スティーブン・J・ブラムス)、「ドーナツの穴」について様々な科学者たちが真剣に考察する『失われたドーナツの穴を求めて』(芝垣亮介,奥田太郎ほか)、コンピュータによる小説の自動生成を目指す『コンピュータが小説を書く日 AI作家に「賞」は取れるか』(佐藤理史)、人工知能が東大入試に挑んだプロジェクトの全容を望む『人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」 第三次AIブームの到達点と限界』(新井紀子ほか)、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』をもとにしたラジオドラマを信じた人たちがパニックにおちいった有名な事例をパニック心理学の面から考察する『火星からの侵略 パニックの心理学的研究』、来たるべき宇宙進出に際して何が必要かを解説する『人類、宇宙に住む 実現への3つのステップ』(ミチオ・カク)、こちらも来たるべき宇宙進出の際に必要となる『宇宙倫理学入門 人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか?』(稲葉振一郎)と『宇宙倫理学』(伊勢田哲治,神崎宣次,呉羽真)、さらに『宇宙旅行入門』(高野忠ほか)、『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』(スティーヴン・ウェッブ)などなどAI、VR、自動運転、ロボットなどのSF的なガジェットを社会学的、経済学的、倫理学的、……と様々な視点で論じた内容の書籍は数多くあります。

小説形式の科学解説書

 次は「小説形式の科学解説書」です。

 代表的なものは、物理学者であったジョージ・ガモフの著作です。彼は一般向けの書籍も多数書いていますが、その中でも『不思議宇宙のトムキンス』(ラッセル・スタナードと共著) 『不思議の国のトムキンス』 『原子の国のトムキンス』 『生命の国のトムキンス』は物語仕立てで読みやすいと思います。これらを含め彼の著作は『ガモフ全集』で読むことができます。

 他にも『宇宙への秘密の鍵』 『宇宙に秘められた謎』(ルーシー&スティーヴン・ホーキング)、『サイエンス・クエスト』(アイリック・ニュート)や哲学の入門書である『ソフィーの世界』(ヨースタイン・ゴルデル)も入っています。

 日本人の著作では、講談社ブルーバックスで『マックスウェルの悪魔』『不確定性原理』を書いた都筑卓司の作品(挙げた例以外にもたくさん入っています)や、科学ライターとして活躍する竹内薫の『ブレーンワールドへの大冒険 シュレ猫がいく!』や訳をつとめた『数学ミステリーX  教授を殺したのはだれだ!』、社会学の基礎をファンタジーと学生同士の対談として書いた『ダイバーシティ 生きる力を学ぶ物語』(山口一男)という作品も所蔵されています。小説の所で挙げた『異世界語入門 転生したけど日本語が通じなかった』(Fafs F.Sashimi)も言語学の入門書といえるかもしれません。

 また、科学書というより思想書ですが『宇宙・肉体・悪魔 理性的精神の敵について』(J.D.バナール)、『コズモグラフィー』(バックミンスター・フラー)、『計算機と脳』(J.フォン・ノイマン)もあります。

 学習漫画系も多くあり、ガイド役を動物や妖精など非現実的な存在がつとめるものがけっこうありますが、調べるのが大変なのでこの項では触れないでおきます。

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