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星の王子さまで描かれた様々な愛〜慶應生のレポート公開〜

こんにちは、hunaです。

今日は、慶應通信の総合科目・文学で提出したレポートを公開します。

ちょっと話変わりまして、わたし、読書感想文が大好きでした。

自分で本を選び、自分の好きなポイントについて語ることができるのです。
多少の制限はつきますが、日本の教育では珍しく

「自由」

というものが許されている課題ではないでしょうか?

しかし、苦手な方もいらっしゃると思います。

ここでは、星の王子さまが好きな方はもちろん

読書感想文の書き方がわからない。

在学生だが、合格しない。

という方にも、書き方について補足していますので、そこに注目しつつ読んでいただければと思います。レポート文だけ太字にしています。

先に説明しておきますと、こちらのレポートは1発合格ですが
「ちょっと箇条的」とコメントされていますので、実際に書かれる際はもう少し文学的な書き方が良いのかも。。

                

               

 『星の王子さま』は、1943年4月6日にニューヨークで初版されて以降、20世紀でもっとも多くの言語に翻訳された、今日でも世界中で愛されている文学作品である。作者のサン=テグジュペリは、フランス人であるが、ニューヨークで初版されたことからもわかるように当時、彼はニューヨークに亡命していた。そこでの孤独感、祖国に残る友人への想いがこの作品に込められている。

 フランスでの刊行は1946年であり、彼の死後である。彼はこの作品を通して友人へ、そして世界中に何を伝えたかったのか。本書を考察すると、様々な愛の形が表現されていることがわかる。

 孤独でありながら、愛を忘れなかった作家さんなのです。ここでは、『星の王子さま』をとりあげていますが、他にも『夜間飛行』や『人間の土地』など

「人間の生き方」

といったことが中心の作品もあります。

書き方ポイント①「作品の中から書きたいテーマを探そう」

本を読んでいくと、繰り返し登場人物たちが発する言葉などないでしょうか?
後述していきますが、『星の王子さま』では度々「愛」というフレーズが出てきます。まずは、課題図書からそういったフレーズを数個見つけるところから初めましょう。

           本論Ⅰ︙王子さまとバラ

 本書を語る上でやはりメインとなるのは、王子さまとバラの関係である。

 バラは、王子さまの住む星へ突然現れ芽を出す。最初は、星をダメにするバオバブの芽かもしれないと注意していた王子さまであるが、バラが花を咲かせる準備を始めると、奇跡のようなものが生まれるかもしれないと不安から期待へと気持ちが変化し始める。そして、何日もかけてバラは身支度をし、ついに花を咲かせる。王子さまがその瞬間から「あなたは、とても、きれいです!」(p42)と、一目惚れともとれる言葉をバラにかける。バラは、すぐに水を要求し、その猜疑心と虚栄でその後も王子さまを振り回す。最初こそ、王子さまは我慢をするが、後に限界となりバラに別れを告げ、他の星へと旅に出る。

 旅の終盤、王子さまはキツネと出会い飼いならすことで関係性を深め、バラが自分にとって大事な存在であることに気づき、自分の星へと戻る。そこには責任があるからという理由も述べられている。

 このように、この物語を読むと王子さまとバラの関係は近すぎたがゆえに互いを傷つけあってしまい、言葉ばかりにとらわれてお互いにお互いを必要としていたことに気づかなかったことが王子さまの旅のきっかけとなっている。最終的には、王子さまにとってバラは他のバラとは違うもの、自分が大事に手入れをした、世界にただ一つしか存在しないバラであり、そこには責任が伴うことを実感している。

 不仲の原因となった【言葉】とは、不完全なコミュニケーションツールである。自分の意思を簡単に瞬時に相手に伝える数少ないツールでもあるが、時として人は、想いとは違う言葉を発してしまうこともある。バラもその一人である。そして、言葉は人を癒やすことも傷つけることもできる。バラは、自らの猜疑心・虚栄から言葉を発し、王子さまを傷つけてしまう。王子さまがバラに別れを伝える際、「わたし、ばかだったわ―わたしを許してね。」(p49)と自らの過ちに気づき、謝罪していることからも、バラは意図して王子さまを傷つけてはいなかったことがわかる。そして、「そうよ、わたしはあなたを愛しているわ」(p49)と発言している。

 このように、王子さまの一目惚れともとれる発言とバラの愛しているという発言からこの両者の関係性からは異性愛がうかがえる。

書き方ポイント② 自分が感動したフレーズを探そう。

フレーズが決まると、次は、そのフレーズが出てくる状況や流れをまとめ、実際に引用することで、作品を知らない方にもわかるような文章を目指しましょう。引用方法については、各課題や研究分野によって違うのできちんと確認しておきましょう、


            本論Ⅱ︙王子さまとぼく

 本書の主人公は、【ぼく】である。ぼくは、幼少期に本で知ったボアの絵を大人たちに受け入れてもらえず、どこか孤独感を抱えたまま大人になった。そんなある日、ぼくはサハラ砂漠で飛行機が故障してしまう。砂漠で一人ぼっちという孤独のなか、ぼくは、王子さまという本当の意味で話ができる相手と出会うこととなる。最初は、自分の質問とは違う話ばかりする王子さまに対して苛立っていたが、徐々に王子さまの星のことや旅の話を聞くことで自分を受け入れてくれる大事な【友達】という存在になっていくことに気づく。

 しかし、別れは訪れる。飛行機の修理が終わり、そして、王子さまがヘビと約束して自分の星へと帰る日、出会って9日目の夜である。王子さまは、ヘビに噛まれ星へと帰った。重たいからと置いていった王子さまの殻(肉体)が、砂漠で音もなく倒れるその瞬間まで、ぼくは一緒にいた。

 ぼくは、幼少期の自己のアイデンティティ(ボアの絵)を周囲の大人に理解されず、やがて王子さまに出会うまで、彼自身もそんな大人の一人となっていく。大人たちは見えるもの、例えば数値化できるものや、一目で評価できるものにしか興味を示さない。ぼくや王子さまは、見えないものにこそ大事なものがあると主張し、互いに互いを数少ない理解者として必要としている。

 ぼくは物語の終盤、眠る王子さまを両腕に抱えて井戸を探す。その際「この眠る王子さまがぼくの心をこんなに揺すぶるのは、彼が1本の花に忠実だからだ。寝ているときでも、バラの姿が、まるでランプの炎のように、彼を照らしている―ぼくはランプを守らなければならない。」(p112)と、バラを愛する王子さまのアイデンティティを守り続ける責任を示している。ここには、友を守ろうとする友人愛がうかがえる。

書き方ポイント③ 最初から最後まで出続ける登場人物を書きたいときは、最初と変わったところを書こう        

【ぼく】は最初から最後まで出ます。読む前までは、【ぼく】が【星の王子さま】だと思っていました。

本や映画では、バッ!と一部分的に表れ、スッ。。と消えるようなキャラたちがたくさんいます。星の王子さまでは、旅の途中で出会うキャラたちですね。

彼らは重要なポイントを伝えては去っていきますが、【ぼく】といった役は私たち読者の立場、疑問や課題を話が進むとともに解決していこうとする姿勢をみせます。
もちろん、そうではない小説などもありますが。。

この【ぼく】という立ち位置のキャラを書くことで、その本の中心にあるテーマについて触れ、私たち読者の感情移入を助けるような文章を書くことが感想文においても重要ではないでしょうか。


          本論Ⅲ︙王子さまとキツネ

 キツネは、王子さまの旅の終盤に出てくる、王子さまに、あるものが普遍的な存在から特別な存在へと変わる【ひみつ】を教えてくれる存在である。

 王子さまは、キツネと出会い、友だちになろうと声をかけるが、キツネは飼いならされていないからと断る。飼いならされることで、10万のうちの互いに居なくなってもどうでもいい少年とキツネではなく、互いになくてはならない存在へとなることができると、そして、飼いならすことは、絆を作ることでもあると語る。

 そして、別れの際、泣くキツネに対して王子さまは、絆を作ることによって苦しい想いをしているのではないか、という問に対しても「おれは小麦畑の色の分だけ特をしたよ」(p102)と答え、最後に「肝心なことは目では見えない―飼いならしたものには、いつだって、きみは責任がある。きみは、きみのバラに責任がある…」(p104)と王子さまに【ひみつ】を教える。

 このキツネが王子さまに教えたことは、物語の最後まで語られる。王子さまのアイデンティティの形成にはキツネがいかに重要であるかということがわかる。そして、王子さまはキツネのアイデンティティを大事に守り続けている。この関係性は、まさに親が子に大切なことを伝え、子が旅立つのを見守るかのような、親子愛を感じる。

書き方ポイント④ 物語で出てくる課題を解決する場面を詳細に書いてみよう 

ほとんどの作品で課題やテーマでてきます。そして、その解決策を提示してくれることがほとんどです。その描き方は、作者によって違いますが。。

この作品では、バラについて星の王子さまが抱えていた課題をキツネが教えてくれます。比較的見つけやすいですね。
そして、私は自分がとりあげた「愛」と絡めて書いています。
ここでは、「愛」についてだったので深くは書いていませんが、感想文であれば、このあと王子さまがどのような行動をとったか、影響を受けたのか、細かく書いて良いかもしれません。

    

      本論Ⅳ︙サン=テグジュペリとレオン・ウェルト

 本書冒頭、この書はレオン・ウェルトに捧げるものと明記されている。レオン・ウェルトとは、サン=テグジュペリがフランスに残していった親友である。芸術評論家で随筆家でもあり、植民地主義と軍国主義に強く反対していた人物である。ユダヤ人であったため、ヴィシー政府とドイツ当局の反ユダヤ人政策の脅威にさらされていた当時のフランスにおいて相当な孤独を感じていたことが予想される。

 サン=テグジュペリもまた亡命先であるニューヨークで、自身はアメリカの軍事的解決を支持するなか、フランス人のコミュニティ内での【ユダヤ人政策を採るヴィシー派か他国と距離を置き独自性を確立しようとするド・ゴール派か】の二者択一を迫られ孤独を感じていたことが予想できる。

 本書のぼくと王子さまは、大人からみるとマイノリティーである。サン=テグジュペリとレオン・ウェルトもそれぞれの置かれた環境は多少違うが周りからマイノリティーの特異な存在として認識され孤独を感じている。サン=テグジュペリは、本書を通じて、遠く離れた地にいる親友との絆をたしかなものにし、一人ではないと励ましたかったのではないかと考える。そして、そこには、ぼくと王子さまの関係性のように友人愛があるのではないかと考える。

書き方ポイント⑤ 作品の時代背景や作家について書いてみよう

作品が生まれる過程には、やはり当時の時代背景や作家の生まれ育った環境が大きく影響されています。あまりにも作品から話が逸れると感想文というところから離れてしまいますので、本書と絡めながら、場合によっては文字数が足りないときに埋めるぐらいが良いですね。

 

          結︙全ての愛に共通すること

 以上から、本書には異性愛や友人愛、親子愛といった様々な愛を読み取ることができる。これらには、共通していることがある。それは、責任を伴うことである。

 ここで、これら愛から責任を除くとどうなるかを考察する。

 まず、異性愛から責任を除くとどうなるか。本書を例に出せば、王子さまはバラに責任がないので、水やりもやらず、ガラスの鉢も被せない。つまり、飼いならさないことである。しかし、キツネの言葉を思い出すと、飼いならさないということは、バラは特別なものではなく、10万あるうちのよく似たバラの1つということになってしまい、ただのバラとなってしまう。つまり、責任が消えた瞬間、愛も消えるのである。

 では、友人愛はどうであろうか。友人愛の責任は、【互いのアイデンティティの承認】である。本書でも、ぼくはバラを一途に愛する王子さまを受け入れ、守ろうと責任を感じている。ここで、ぼくからこの責任を奪うとどうなるか。その瞬間、ぼくは王子さまを拒絶することもでき、ただの10万人のよく似た少年のうちの一人となる可能性もある。そして、その瞬間、友人という関係性は崩壊するのではないか。責任を無くすことは、愛を、友人を無くすことでもあると考える。

 最後に、親子愛はどうであろうか。親子愛にとって必要不可欠なのは、親は子の成長を促すために教育することである。キツネは、王子さまに、愛にとって大切なことを教えている。もし、キツネから【教育】という責任が無くなればどうなるか。王子さまは、そこまでキツネと親しくなることもなく、キツネは、ただの遊んだことのあるキツネにしかならない。そのとき、キツネと王子さまの間にあった親子愛、そして親子のような特別な関係性が無くなる。

 このように、愛はやはり責任と表裏一体である。そして、この2つは目に見えない、言葉にするにはとても難しいものである。だからこそ、サン=テグジュペリは本書を通して、大切なものは目に見えないと、我々読者に訴える。

 戦時下に親友を案じて書かれた本書が、現代においても愛されるのは、様々な愛のかたちが生まれようとも、どんな時代を生きようとも、愛は責任であり、それは不変であることを示していると考える。

書き方⑥ 自分が感じたこと、考えたことを冷静にまとめましょう

恐らく読書感想文が苦手な方は、この部分が指摘されがちではないでしょうか。自分の考えをまとめるだなんて、ものすごく、大人になっても難しいものです。

なので、あえて、本から離れるということもおすすめです。
私の場合は、愛には責任が伴うという本書でのテーマを本から離れ、本書を客観的にとらえています。

小説など作品は熱中してしまうと、自分ではなく「作品の考え」に陥ってしまいます。

どの分野においても冷静に。自分の考えを述べられるように思考の癖をつけておくことが重要ってことですねー。

私は、お酒を前にすると冷静でいられない。。。



              引用文献

「星の王子さま」

著者 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

訳者 池澤夏樹

発行 株式会社集英社 2005年8月31日初版

              参考文献

「星の王子さまの美しい物語」

編者 アルバン・スリジエ デルフィーヌ・ラクロワ

翻訳 田久保麻里 加藤かおり

発行 株式会社飛鳥新社 2015年5月9日初版


最後までお読みいただきありがとうございます。

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同じ慶應生レポートシリーズで、経済学についても書いています。

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