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落語家の出囃子

落語家はそれぞれ出囃子を持っています。二つ目になる時に師匠に相談したりおはやしさんからもらったりします。前座の頃は全員「前座の上がり」という決まった曲だったのが、二つ目になると自分だけの出囃子を持てます。

僕の出囃子は狐釣りという曲で、上方落語の「親子茶屋」という噺に出て来ます。いわゆるお茶屋遊びの曲ですね。この曲は、上方の米團治師匠が池袋豊島公会堂の「円朝祭」でこの噺をやったことで知っていました。前座でこの会を手伝っていた僕はなんだか覚えていました。

しばらくして、東京ガールズ先生という音曲漫談をやる方々がこの曲を使っているのに気付いて、この曲が狐釣りだと知りました。一応お断りをして出囃子として使わせてもらうことになりました。

僕がこの曲を気に入っているのは、一杯(一周すること)が短いからです。出囃子って結構上がる人の性格が出るんですが、曲の一杯の切れ目で上がる人とかもいます。多分、20秒とか30秒が一杯だと全部聴かせたいんでしょうね。だからぴったり上がりたくなる。僕はその聴かすのが面倒だなと思っていて、じゃあ一杯は短ければ何度も聴かせられるし、いつでも上がれるじゃんって思って出囃子にしました。

とても気に入っています。真打になる時にもこの出囃子で行きたいですね。

落研の頃はこの出囃子も大好きでしたね。音源の師匠だと、圓生師匠の正札附、文楽師匠の野崎、志ん朝師匠の老松、可楽師匠の勧進帳、金馬師匠の本調子かっこ、小さん師匠の序の舞、志ん生師匠の一丁入り、キリがないくらいいっぱいあります。

出囃子をたくさん聴いて、太鼓の叩き方もなんとなく覚えていたので前座になって太鼓だけは苦労しませんでした。太鼓の稽古もまともにしたことはありません。

さて、この出囃子ですが寄席に行けば弾いてもらえるんですが、落語会となると市販のCDを使います。市販のCDはこういった往年の師匠の出囃子と現在旬の噺家の曲が入っているので、二つ目の出囃子はまずありません。なので、市販のCDの中で適当に上がるわけですね。

それでも自分の独演会だと例えば二席あって、最後は中の舞で上がるとかはします。中の舞はトリが上がる専用の曲みたいなもので、寄席でもたまに自分の出囃子があるけどトリだとこっちで上がるという場合があります。

僕らもトリの気分だけでも味わいたく使うことがあるんですね。

だけど今は結構自分の出囃子を録音させてもらって使っている人も多いですね。自分専用の出囃子CDを持ち歩くわけです。

僕も例の如く自分の出囃子は持ち歩いています。覚えてもらいたいんでね。だけど小さい小屋とかでは備え付けの市販のCDを使ったりするので、僕の出囃子が聴けるのは、寄席か独演会くらいです。

あとやっぱり最近はお客さんも好きな噺家の出囃子はわかるけど、他の人も気にしてなんの曲だとかって興味を持つ人は少ないように思います。

ウチの師匠正蔵と一朝師匠と藤兵衛師匠が同じ「あやめ浴衣」だけど、使われている箇所が違うとか結構調べると面白いんですけどね。

今日はそんな出囃子のおはなしでした。

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