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マザーレス・ブルックリン

「もし・・・」

もし、時間を弄んでいなかったら・・・

いや、2020の最後の月は、そうしなければ、そうしようと、

「もし・・・」

音楽・映画・読書・酒・BAR・雑幻・・・

そうだ、

「探偵」

というのもありだった。

いくつも読んできた、映画を観た、BARで酒を飲んだ。

無駄とも言われるぐらいの時間と金の浪費といくつものウィスキーのボトルと創作的で魅力的なカクテルに弄ばれていた。

「探偵」

を知らなければ・・・

しかし、そういったカッコだけのハードボイルドではなかった。

そして、何故今頃?

眠れぬ夜だった。

たまたまつけたCATVで放映していた。

観たことないな。いつの作品だ?

最近じゃないか、しかも、この主人公も監督も知らない。

俺としたことが。

「マザーレス・ブルックリン」

まるでピートの効いたウィスキーのように、深く芳醇な香りが鼻孔をくすぐる。そしてひとたび口に含めば、喉に熱い感触を残して食道を伝い、胃の底を豊かな余韻で満たしてくれる作品。

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原作は米作家ジョナサン・レセムが1999年に発表し、全米批評家協会賞に輝いた同名小説。筋書きはハードボイルドであり、痛烈であり、そして深遠なる謎を湛えている。

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主人公は、障がいを抱える私立探偵ライオネル(ノートン)。彼の人生の師と仰ぐボス、フランク・ミナ(ウィリス)が、何者かに殺害された。

ライオネルは事件の真相を追う。やがてたどり着いたのは、大都市開発にまつわる腐敗。そして、この街でもっとも危険と称される黒幕の存在だった――。

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作中、

あるトラッペッターに吐く、

そうするとそのトラッペッターは答える。

「俺たちミュージシャンは音楽をやってる時以外、俺はトランペットを吹いている以外は、時間を弄んでいる。」

原作の舞台は99年だが、映画では57年に変更されている。戦争からの脱却という機運が高まり、古きニューヨークが発展し始めた時代だ。

クラシックカーが優雅に走る街並みは、確かにレトロさを感じさせる。一方でネオンサインで象られたERの看板、色彩豊かなハットが陳列されたショーウィンドウなどには、どこか近未来感が漂っている。まったくの矛盾した要素が相互に影響を及ぼす不思議なルックが、見ていて心地よい。影と閉塞感が支配するフィルム・ノワールを踏襲しつつも、現代アメリカの社会問題にも繋がる“アメリカン・ノワール”。本作にはそんな形容がふさわしい。


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99年、原作を手に取ったノートンは、すぐに映画化の権利を取得した。ほれ込んだ最大の理由は、物語の背景にある“都市開発”というテーマだった。

彼の祖父であるジェームズ・ラウスは、都市開発に心血を注ぐ慈善家であった。ノートンは祖父が構想し実現させた街(ワシントンDC郊外の都市コロンビア)で育ち、自身も一時は不動産開発会社に勤めていた。いわば人生の重要なウェイトを占める要素が、物語とシンクロしていったのだ。

監督、初脚本、製作、主演と“1人4役”をこなす八面六臂の奮闘ぶりからも、思い入れの強さがうかがえる。史実と物語が調和した脚本執筆に10数年を費やすなど、苦労もあったが、完成後にはトロント国際映画祭などでの上映にこぎつけた。およそ20年の時を経て、ノートンの大願が成就した瞬間だった。

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我々は、これからも多くの時間を弄ぶだろう。

世界には、

命の選択も、

自由の選択も出来ない人々がいるというのに・・・

「問題解決」

探偵の最大のテーマであり、

仕事であり、命題であり、使命だからだ。

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日本で数々の「探偵」ものを撮ってきた、とある大学教授・映画監督に聞いたことがある。

「探偵とは」

”探偵とは明日を創る仕事”



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