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障害者総合支援法の3年後見直しに関する議論の報告書まとめ

 国の障害者施策について検討し提言を行う社会保障審議会障害者部会がこのほど障害者総合支援法の3年後見直しに関する議論の報告書をまとめました。5月より関係団体ヒアリングを経て9月から月に2回ほどのペースで部会を開催し議論を重ねてきた事項をまとめたもので、今後の支援法見直しの方向性が示されています。

 報告書は、「はしめに」とする前文、大きな方向性を示した「基本的な考え方」、各論をまとめた「各論点について」の3部構成でまとめられています。各論点については、総合支援法の附則により以下10個の項目別にまとめられています。

・常時介護を要する障害者等に対する支援
・障害者等の移動の支援
・障害者の就労の支援
・その他の障害福祉サービスの在り方
・障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方
・障害者の意思決定支援の在り方
・障害福祉サービスの利用の観点からの成年後見制度の利用促進の在り方
・手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障 
 害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方
・精神障害者に対する支援の在り方
・高齢の障害者に対する支援の在り方

 報告書は40ページ近くの分量で、10項目それぞれに多くの見直しの方向性が示されています。中でも地域生活支援にかかわる注目すべき点をいくつかあげます。

 一つは重度訪問介護利用者が入院中際に病院内でも重度訪問介護を利用できるように見直しが行われます。これは自立生活センターなどが長年求めてきた制度であり、ヒアリングでも多くの障害者団体が要望していた事項で、今後制度の詳細が決まっていくと思われますが厳しい制限などがつかずに実現すれば大きな前進となります。

 次は知的・精神障害者のグループホームから一人暮らしへの移行など地域生活支援を進めるため、新たに定期巡回・随時対応型サービスがつくられます。どのようなサービス形態になっていくか、サービスを提供する人の資格など制度の詳細は今後の検討されることになりますが、「障害者の理解力、生活力等を補う観点から、適時のタイミングで適切な支援を行う」と書かれており従来の身体介護、家事援助といった類型とは違うサービスが想定されています。これにあわせてグループホームは重度障害者に対応するサービスと位置づけ利用対象者の見直しを行うことになっています。

 最後は利用者負担の見直しについてです。自立支援法が施行された当初に負担が増えたことに対して多くの批判があがり何度かの負担軽減措置とられて、現在では9割以上の人が負担額0円となっています。この点について他制度とのバランスなどから負担を引き上げてはという意見から部会でもかなり議論されてきましたが、今回は「引き続き検討すべきである」として明確な方向性は示されませんでした。一方、施設系のサービスにおける食費補助である食事提供体制加算については平成30年3月までの経過措置であるため見直しを検討すべきとされており、何らかの平成30年には何らかの見直しが行われることになりそうです。


なお報告書の全文は以下の厚生労働省ホームページに掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000107941.html


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